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第247話 マスターも頭を踏みつけられてはどうでしょうか

 女王の玉座に腰かけ、集められた女性たちを物色しているのは玉座に座った男。


 年齢は三十前後か。

 ぼさぼさの髪と無精ひげはいかにも砂賊という感じだが、正直、砂賊をまとめ上げたというには、あまり有能そうにも強そうにも見えない。


「あれが元凶の男?」

「明らかに違う。しかし代々の女王が利用してきた玉座にあのような不潔な身体で座り、あまつさえ我が民たちを虐げるとは……万死に値する!」


 激怒したエレオーネが広間を疾走し、男に躍りかかった。


「へ? うおおおおおおっ!?」


 エレオーネに気づいた男は、悲鳴を上げて玉座から転げ落ちそうになるが、ぎりぎり踏み止まったのが結果的には命を長らえることになった。

 玉座に男の血が付着するのを嫌ったエレオーネが、寸前で剣を止めたのである。


「お、お、お前は、女王!? なんでここにいるんだ!?」

「黙れ。そしてその椅子から離れろ。さもなくば斬る」

「は、はひっ」


 玉座のお陰で命拾いしていたとは思わないようで、男は両手を上げながら慌てて玉座から離れた。


「その場にうつ伏せになれ」

「わ、分かったから殺さないでくれっ……」


 エレオーネも少しは冷静になったのか、この場で斬り捨てようとはせず、ただ思い切り男の頭を踏みつけた。


「ぶべっ……」

「私の問いに答えろ。嘘を言ったりはぐらかしたりしたら殺す」


 ちなみにこの女王の間にいた他の砂賊は、すでに女性兵士たちによって制圧されている。


「兵士さんたちが助けてくださったんだ……っ!」

「ありがとうございます!」


 集められていた女性たちが安堵の息を吐く。

 美女ぞろいだが、よく見ると全員が豊かな胸の持ち主だった。


「ほほう、砂賊もなかなかセンスが良いじゃないか」

『マスターも頭を踏みつけられてはどうでしょうか』


 愛杖とそんなやり取りをする俺を余所に、エレオーネは男を問い詰めていた。


「貴様らのリーダーはどこにいる? カイムという名の男だ」

「お、お頭なら今この王宮にはいねぇ!」


 エレオーネは男の右肩に剣先を突き刺した。


「ぎゃああああっ!?」

「どこにいるかと聞いているんだ。端的に答えろ」

「お頭なら遺跡だ! ここを制圧してすぐに、幹部たちを率いて行っちまった! 俺は代わりにこの場を任されたんだよ!」

「なんだと!?」


 男の返答にエレオーネの顔色が変わる。


「遺跡って?」

「……先ほど話した初代女王の墳墓だ。湖の向こう側に巨大な建造物が見えただろう?」

「そういえば」


 四角錐の形状をした建造物で、地上から見ると恐らく奇麗な三角形をしているだろう。

 この王宮よりも大きな建物のようだったが、どうやらこの国の開祖が眠る古墳らしい。


「何が目的だ!?」

「いででででっ!? おおお俺は知らねぇよ!? お頭の考えることなんて、俺にはまったく分からねぇっ!」


 怒りを露わに詰問するエレオーネに対し、男は涙目で叫ぶ。


「単純にお宝目当てじゃないの?」

「……あの遺跡にお宝らしいものなどない。なにせ初代女王はそういうものを好まなかったからな」


 砂賊たちがまったく統率されておらず、こうしてあっさり王宮の中枢を取り戻すことができたのは、その頭目とやらが幹部たちを連れて遺跡に潜ったためだろう。

 油断していたのもあるだろうが、せっかくこの国を制圧しておきながら、そんなリスクを冒してまで遺跡に侵入するなんて、相応の理由があるはずだ。


「だとすると何のために……?」

「まさかとは思うが、あの男っ……禁具を狙っているのではないだろうなっ?」

「禁具?」

「初代女王だけが使うことができたという呪いの武具のことだ。あまりにも危険な代物のため、あの遺跡のどこかに封印されていると言われているが……カイムめっ!」


 激高したエレオーネの足に力が入る。

 するといまだ彼女の足に踏みつけられていた男が絶叫した。


「あああ頭が潰れるっ! ぎいやあああああああっ!」


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