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第246話 こんなときに冗談は

「お、王宮に直で乗り込む……? レウス殿、こんなときに冗談は……」

「お姉ちゃん、今どこにいるか理解してる? 空だよ、空。この魔導飛空艇があれば、城壁を乗り越える必要なんてないよ」

「っ、そういえば」


 ついでにこの飛空艇には便利な機能も付いているのだ。


「ほら、街のすぐ上まで来たよ」

「こんなに近づいているというのに、誰も気づく様子がないのだが……?」

「ステルスモードにしてるからね。外からはこの飛空艇が見えないんだ」

「そんなことまでできるのか!? 街の警備を完全に骨抜きにできるではないか……」


 飛空艇の高度を下げてみても、まったくこちらに注目する者はいない。

 まぁそもそも街中には人気自体がなく、たまに歩いているのは砂賊と思われる連中くらいだが。


 そのまま王宮へ向かう。


「念のため外で騒ぎを起こしておこう。お姉ちゃんたち、頼まれてくれる?」

「ん、任せて」

「とにかく暴れまくればいいわけね」

「了解した」


 敵の戦力を分散させるため、ファナたちには先んじて王宮の周辺に降ろした。

 すぐに悲鳴や怒声が響いてくる。


「ついでに城壁の方も攻撃しておこう」

「どういうことだ?」

「炎球×100」

「……は?」


 俺が放った百個もの炎の塊が四方八方へと散ばり、二つ目の城壁へと向かっていく。

 そのまま城壁の上部、兵士が配置され、移動できるようになっている歩道に次々と着弾した。


 いきなりの不意打ちに、警備についていた砂賊たちが慌てる様子が見て取れた。


「な、何だ、今の凄まじい魔法は……?」

「ただの炎球をたくさん撃っただけだよ。今はファイアボールって呼ばれてるみたいだけど」

「どう考えてもファイアボールの大きさではなかったぞ!?」


 これで王宮内は手薄になるはずだ。

 飛空艇を王宮で最も背の高い尖塔に横付けする。


「この窓から中に侵入しよう」

「王宮の中心部に直結する塔だ……。こんなところから敵が攻め込んでくるなど、想像したくもないな……」


 苦笑するエレオーネ。


「砂賊どもをまとめ上げた元凶が、恐らくこの中心部にいるはずだ。その男を倒すことができれば、所詮、奴らは烏合の衆。一気に瓦解するに違いない」


 彼女は後ろを振り返ると、仲間たちに力強く頷きながら告げた。


「行くぞ!」


 エレオーネは自ら先陣を切って窓から塔内に突入。

 俺はその横についていき、兵士たちがすぐに後を追いかけてくる。


 遠くから見ると白亜の非常に美しい宮殿だったが、作られてからかなりの年月が経っているのか、そこそこ老朽化しているようだった。

 塔の螺旋階段を駆け下りていく。


「いたぞ、砂賊だ」

「え? ぎゃっ!?」


 途中の踊り場にいた男を、エレオーネが一息で斬り捨てる。

 恐らく王宮全体を見渡せるこの塔で見張りをしていたのだろうが、まさか上から敵が現れるとは思ってもいなかったはずだ。


 そのまま一気に螺旋階段を降り切ると、そこには床に座り込んで馬鹿笑いしている砂賊たちがいた。

 エレオーネが突っ込んでいく。


「邪魔だ」

「へ? がっ!?」

「てめぇっ、一体どこからぶぎゃ」

「敵襲――」

「おじさんは眠っててね」


 笛を鳴らそうとした男は、俺の魔法で昏倒した。


 それからエレオーネたちは、王宮内にいた砂賊たちを次々と撃破していった。

 まさかいきなり王宮の中に攻め込まれるとは思ってもいなかったのだろう、慌てた様子でばらばらとやってくるばかりで、何の統率も取れていない。


「そもそも数が少ないね?」

「大部分は街中にいるのかもしれない。だが好都合だ」


 てっきり王宮内は砂賊だらけかと思っていたが、どうやらむしろ手薄のようだ。

 やがて辿り着いたのは、女王が謁見などに使う大きな広間だった。


「いいねぇ、いいねぇ! なかなかの上玉が集まったじぇねぇか! さぁて、どの娘から可愛がってやろうかねぇ?」


 そこにいたのは十五人ほどの砂賊たちと、ほぼ同数の若くて奇麗な女性たち。

 その女性たちを鼻息荒く物色しているのは、女王の玉座で偉そうに踏ん反り返る男だった。



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