第24話 これから幾らでも挑戦できるわ
「合格おめでとう、レウス君。一人だけ合格しちゃうなんて、びっくりしちゃったけど。でも当然だよね。色々と凄かったもん」
マリシアから合格を伝えられた後、コレットから声を掛けられた。
「お姉ちゃんが抱っこして運んでくれたお陰だよ」
「うん、ちょっと意味が分からないかな……というか、抱っこする必要あった?」
ありまくりである。
大きな胸をたっぷり堪能させてもらったからな。
「お姉ちゃんも再試験、頑張ってね」
「うーん……もしかしたら辞退するかも」
「そうなの?」
「あたしは今回のことで、やっぱりちょっと無理かなって思っちゃって……」
「そうなんだ」
「冒険者になっていっぱい稼いだら、実家の借金をすぐに返せると思ってたんだけど……」
なかなか重たい事情があるらしかった。
まぁ決して珍しい話ではない。
「治癒魔法が使えたら、新米でも優秀なパーティに入りやすいって知って、それで実家を出て冒険者になることにしたの」
確かに治癒魔法の使い手は、冒険者パーティにとって喉から手が出るほど欲しい人材だ。
そのため経験が浅くても、熟練のパーティに加えてもらえる可能性は高かった。
「幸い治癒魔法は色んなところで需要があるみたいだから、コツコツ働いて実家に仕送りしていくことにする」
「うん、それが良いと思うよ。それじゃ、元気でね、お姉ちゃん」
「レウスくんも、元気で」
「また会う機会があったら抱っこしてくれる?」
「あはは、レウスくん、そういうところは年相応なんだね」
『違います』
「? なんか今、どこかから声が聞こえたような……?」
「気のせいだよ、お姉ちゃん」
そしてコレットと別れた俺は、冒険者ギルドの窓口へ。
ギルド証を発行してもらえるはずだった。
「イリアお姉ちゃん」
「あ、レウスくん? そういえば今日、合否の発表だったのよね?」
「そうだよ」
「大丈夫よ、レウスくん。まだ赤ちゃんなんだもの。これから幾らでも挑戦できるわ」
「? お姉ちゃん、どういうこと?」
「どういうことって……試験に……え? もしかして、合格したの……?」
どうやら俺が落ちたとばかり思っていたらしい。
「合格したけど」
「えええええっ!? って、いやいやいや、冒険者試験は合格者の平均年齢が十六歳、最年少記録でも十歳なのよ? さすがに君みたいな赤ちゃんが受かるわけないでしょ? お姉さん、そんなに簡単には騙されな――」
「イリア、これを……」
とそこへ、彼女の元へ何やら書類らしきものを持ってくる職員がいた。
それに目を落としたイリアは身を大きく仰け反らせた。
「ほほほ、ほんとに合格してるっ!?」
たった今、合格者を知らされたらしい。
「す、凄いじゃない! どれだけ最年少記録を更新してるの!? しかもこれ、合格者が一名しかいないんだけど……っ!?」
まだ彼女のところまで情報が来ていなかったようなので、俺は実技試験でイレギュラーが発生したことを簡単に話した。
「ゴブリンロード!? それよく無事だったわね!?」
「うん。マリシアお姉ちゃんが死にかけたりして大変だったけど」
「あのBランク冒険者のマリシアさんが!? でも、相手がゴブリンロードじゃ、Bランク冒険者でも無事じゃすまないわよね……って、あれ? でもさっき、ギルド長室に向かうの見たけど、ピンピンしてたような……」
「治ったから」
「もしかして優秀な治癒魔法の使い手がいたのかしら?」
ひとしきり驚いた後、イリアはようやく手続きを進めて、ギルド証を発行してくれた。
「えーと、知ってるかもだけど、冒険者には駆け出しのEランクから始まって、D、C、B、A、Sまで全部で六段階のランクが存在しているわ。そして依頼の難易度によっては、ランク制限があるの。高難度の依頼を駆け出しのEランクやDランクじゃ受けられないってことね」
ランクに応じて制限があるというのも、筆記試験の勉強の際に知ったことだ。
前世の頃は低ランクの冒険者が高難度の依頼を受け、それで死亡してしまうような例が結構あったからな。
そういうのを無くすために作られた制度なのだろう。
「で、Bランクにもなれば、だいたいの街のギルドで主力級として扱われて、ほとんどの依頼を受けることが可能なんだけれど……」
俺は受け取ったギルド証に印字されたランクを見る。
「僕はBランクだね」
「異例中の異例よ! 普通はEランクから。元々実績があったり、試験でよっぽど実力が認められればDランクとかCランクからっていう場合もあるけど、いきなりBランクなんて見たことないわ! レウスくん、今回の試験で一体何をしたの!?」
「ゴブリンロード倒したりとか、死にかけのマリシアお姉ちゃんを治したりとか?」
「どっちも君がやったんか~~~~いっ!?」
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