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第232話 むにゃむにゃ

 塔内が俄かに騒がしさを増す中、俺たちは上へ上へと駆け上っていった。

 一応、各階層を貫く自動昇降機が設置されているのだが、さすがにそれを利用するわけにもいかず、階段を使っている。


『マスター、集団が下りてきます』


 リントヴルムが告げた直後、複数の足音が聞こえてきた。


「地下居住区で住民どもが一斉蜂起しただと!?」

「ああ! しかも檻に閉じ込めていた魔人も脱走したらしい!」

「それだけじゃない! 塔の中層にフェンリルが現れたとの情報もある!」

「フェンリルだと!? 伝説級の魔物が何でそんなところに!?」


 武装した集団だ。

 俺たちは天井に張り付いてやり過ごした。


「あれが魔法騎士たちか。なかなか良い装備を身に着けてるな」

「はい。いちいちやり合っていたら大変でしょう」


 そうして階段を上り続け、やがて最上段へと辿り着く。


「階段が終わっているが、まだ最上階ではないよな?」

「はい。この先の階に行くには、別のルートを進むしかないようでございますね」


 俺たちはフロア内へ。

 するといかにもそれらしい扉を見つけたが、そこは数人の魔法騎士たちが警備についていた。


「一気に制圧するぞ」

「了解でございます」


 姿を隠蔽したまま躍りかかる。


「むっ?」


 気配に気づいたのか、魔法騎士の一人がこちらに視線を向けて身構えたが、もう遅い。


 俺が振り回したリントヴルムが、その鎧に護られた胴部に直撃する。


 ドオオオオオオオオオオオオンッ!!


「がああああああああああっ!?」


 衝撃で吹き飛んだその魔法騎士は、そのまま壁まで飛んでいって激突し、壁へとめり込んだ。


「っ! な、何かいるぞ!?」

「無駄でございます」


 メルテラが得意の氷魔法を発動。

 残りの魔法騎士たちの身体が一瞬にして凍り付き、氷像と化した。


「よし、先に進むぞ」


 無人になった扉を開けようとしたときだった。


「汝、ここを通りたくば呪文を唱えよ」


 扉の方からそんな声が聞こえてきた。


「俺が作った大賢者の塔そのままだな。よく見たら、ここまでの構造もよく似ていたかもしれない」


 違いと言えば、下層がダンジョンではなく工場になっていたことくらいだろう。

 そうすると、この扉の先はトップの専用フロアだと予想できる。


「汝、ここを通りたくば呪文を唱えよ」

「開けゴマ」

「……」


 どうやらこの文言ではないらしい。

 それはそうか。


「汝、ここを通りたくば呪文を唱えよ」

「知るか。ぶっ壊してやる」


 ズドオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオンッ!!


 凝縮された魔力の砲弾をぶっ放してやると、扉が凄まじい勢いで吹き飛んだ。


 そうして進んだ先にあったのは、空中に浮かぶ五つの座席。

 そこに座っていたのは、五人の老人たちだった。


「馬鹿な、こんなところに侵入者じゃと?」

「しかも赤子だと!?」

「魔法騎士団は何をしておるのだ。使えぬ奴らだのう」

「下層でも騒ぎがあったようだからの~」

「むにゃむにゃ」


 皺くちゃの老人たちがこちらを見下ろしながら驚いている。

 どうやらこいつらがこの都市を支配しているという五賢老だろう。


 そして彼らの背後には、厳かに立つ巨大な像。

 まだ若い青年の像であるが、礼拝堂にある女神像のように、崇敬の目的をもってそこに置かれているようだった。


「ただの赤子ではなさそうじゃが、この神聖な場所に土足で踏み入って、ただで済むと思うなよ!」


 老人の一人が杖を掲げると、そこから強力なレーザー砲が放たれた。

 俺はそれを結界で防ぐ。


「何!? 儂の魔法を容易く防いだじゃと!?」

「こやつら只者ではないようだの~」

「そんなこと、ここまで辿り着いた時点で自明であろう!」

「はっ! この魔法都市に君臨する我ら五賢老に喧嘩を売ったこと、後悔するがよいわ!」

「むにゃむにゃ」


 老人たちの全身から殺気と魔力が噴き出す。


 五賢老などという大層な名を冠しているだけあって、それなりの実力があるようだな。

 俺とメルテラも魔力を解放し、戦闘態勢に入った。


 そのときだった。

 老人たちの頭上、そこから一人の男がゆっくりと降りてきたのは。


 五賢老たちがそれに気づいて一斉に叫んだ。


「「「大賢者様!?」」」


 ……大賢者様?


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