表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

229/323

第229話 犯人をぶっ飛ばしてやる

「黒い魔石だと……?」


 前世の俺が魔石研究の果てに開発に成功した黒い魔石は、通常の魔石とは異なる性質を幾つも持つ。


 たとえば魔物に喰わせると、魔物が急激に成長する。

 あのエンシェントトレントがそうだったように、短期間で一気に上位種にまで進化することもある代物だ。


 だがそれを人間に使ったことはなかった。

 なにせ、あまりにも非人道的すぎる。


「これが、その結果だっていうのか……」


 身体の一部が変化し、まるで獣のように雄叫びや悲鳴を上げ続ける檻の中の人間たち。


「魔人は膨大な魔力を有しています。その魔力を吸収して、都市の運営に利用しているのでございます」

「……俺が作った黒い魔石を、こんなことに利用しているなんて」

「これだけではございません。様々な禁忌指定物を、この都市は危険を承知で研究、活用しているのです」

「あのとき、ちゃんと禁忌指定物を処分しておくべきだったな」


 俺の弟子たちであれば、きっと適切に扱ってくれると思って、そのままにしておいたのだが……いや、弟子のせいにするのは、ただの責任逃れだ。


 危険と分かっていながらも、俺は自分の手で処理することができなかったのだ。

 だからそれを弟子に丸投げして、死んでいった。


 結局は俺の責任だ。

 俺自身が落とし前を付けなければならない。


 ちょうどこの時代に俺が転生したことにも、意味があるのかもしれないな。


「とっととあの塔に乗り込んで、犯人をぶっ飛ばしてやる」

「そこで一つ、提案があるのでございますが」

「?」


 いったん隔離区画を出た俺たちは、無人の家に身を潜め、そこで作戦会議を行うことにした。

 そこでメルテラがある提案を口にする。


「ファナ様とアンジェ様には、この居住区に残っていただきたいのでございます」

「なぜ?」

「ちょっと、あたしたちも一緒に戦うわよ!?」


 二人の実力では、警備の分厚いあの中央塔に挑むには心許ないからかと思いきや、メルテラにはどうやら他の意図もあるようだった。


「この都市で最も厄介なのが、魔法戦闘に特化した強力な治安維持部隊、魔法騎士団の存在でございます。レウス様が幾ら強くとも、一騎当千級の実力を有する魔法騎士たちを一掃しているだけで、かなり消耗してしまうでしょう。また、犯人に逃げられる可能性もございます」


 つまりできるだけ、その魔法騎士団とやらの戦力を削いでおきたい、というのがメルテラの作戦らしい。


「お二人には、タイミングを見計らって、この居住区で暴れていただきたいのです。あの隔離区画の魔人たちを解放させるのがよいでしょう。そうすれば、魔法騎士団もこちらに多くの戦力を割くしかございません。……彼らを利用するのは心苦しいですが、この都市を放置していれば、いずれもっと多くの被害者が出ることになるでしょう」


 ファナとアンジェもこの作戦に同意し、二人はこの場に残ることに。

 しっかりと隠蔽魔法を施し、こちらの合図があるまでは、大人しくしているようにと念を押した。


 そうして俺とメルテラはこの地下居住区を後にすると、B区へと戻り、それからA区へと向かう。


『リルの方はどうなってるかな? ……リル、そっちはどうだ?』

『精密検査を受けさせられているところだ。今のところフェンリルであることはバレていないが、時間の問題かもしれぬ』


 中央の塔に連れていかれた彼女から、念話でそんな返事が返ってくる。


『そうか。こちらから合図するか、もしくはバレてしまったら、元の姿に戻って徹底的に暴れ回ってくれ。できる範囲で構わないが、なるべく人は殺さないように頼む』

『了解した』


 ファナやアンジェには地下居住区で、そしてフェンリルには塔の下層で暴れてもらう。

 そうすれば敵の戦力が完全に分散されるはずだ。


「ここだな」

「はい。居住区とは比較にならないほど、セキュリティが厳しいです。気を付けてまいりましょう」


 大きな一軒家が建ち並ぶA区を横断した俺たちは、やがて塔の入り口へと辿り着いたのだった。



少しでも面白いと思っていただけたら、↓の☆で評価してもらえると嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

外れ勇者1巻
4月24日発売!!!
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ