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第216話 服なら貸してあげるけど

 八つ首のレッドドラゴンを無視して、先に進むことにした。


「「「オアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!」」」

「なんか、無視するんじゃないって感じで、めちゃくちゃ怒ってるけど……」

「放っておけばいいよ」


 すぐに下層へと繋がる階段を発見し、それを下りていく。

 レッドドラゴンの巨体では階段を通ることができず、ただ怒りの咆哮を轟かせているだけだ。


 だがそこからもずっと溶岩地帯が続いた。

 まぁそういうダンジョンなのだから当然だが。


 さすがにあのレッドドラゴンのいる階層を抜けられるとは思っていなかったのか、下層に降りてきても、黒い魔石を喰らったと思われる魔物には遭遇していない。


 無論、ダンジョンそのものが超高難度ということもあって、俺たちの行く手を阻むのは凶悪な魔物ばかりだったが、ファナやアンジェたちでも十分対処できる程度ではあった。


「はぁ、はぁ、はぁ……」


 そんな中、オリオンだけが息を荒らげている。


「あんた大丈夫? 随分としんどそうだけど?」

「し、心配は要らない……」

「動きも鈍い。リングで戦ったときと、別人」


 ファナの言う通り、オリオンは明らかに動きも悪かった。

 試合でファナと互角の戦いを見せていたとは思えない。


「なるほどね。お兄ちゃん、まだその勇者装備の力を長くは使えないってことか」

「っ……なぜそれをっ……」


 俺が指摘すると、オリオンは驚いたように息を飲んだ。


「どういうことよ?」

「この装備、単にオリハルコン製で凄い攻撃力と防御力があるってだけじゃない、ってことだよ。装備していると、ステータスそのものを大幅に引き上げてくれるはず」

「私たちのも付与がある。師匠が作ってくれた」

「そうだね。ただ、お姉ちゃんたちのはミスリル製だし、正直気休め程度だよ。この勇者装備はそんなレベルじゃない」


 下手したら本来の実力の倍、いや、それ以上の能力を引き出してくれるかもしれない。


「ただ、さすがに無条件ってわけにもいかないよね。それだけの装備となると、使い手にも相応の能力を要求するし、制限がかかったりもする」

「……」

「本来ならこんなに長く装備し続ける予定はなかったはずでしょ。無理せず地上に残っていればよかったのに」

「っ……」


 悔しそうに顔を歪めるオリオン。


「本当にすごいな、君は……こんなに簡単に、見抜かれてしまうなんて……」


 オリオンは観念したように白状する。


「君の言う通りだ。ぼくの今の実力じゃ、この装備を長くは使えない。それにこの装備がなかったら、ぼくの本来の力は君たちの足元にも及ばないだろう」


 彼がファナと互角に戦えていたのも、過去に四連覇できたのも、この鎧による大幅なステータスアップがあったからだろう。


「そっか。まぁもう知られちゃったわけだし、脱いじゃいなよ。着ているだけで体力も奪われちゃうでしょ?」

「い、いや、それはやめておくっ! これ以外に着るものを持っていないからね……っ!」

「そう? 服なら貸してあげるけど?」

「大丈夫だから! それにステータス上昇効果がなくても、十分に強い装備だし! 体力もまだ心配ない!」


 なかなか頑なである。


『マスター? なぜそこまで脱がそうとされるのですか?』


 仕方ないのでそのまま先へと進むことに。


「まぁもうちょっとで最下層だからね」







 やがて俺たちはボス部屋へと辿り着いた。

 目の前に巨大な両開きの扉があり、この先にボスモンスターが待ち構えているはずだ。


 勇者リオンが苦戦したと聞いたが、そこまで難しいダンジョンではなかったな。

 勇者の故郷から近いところにあるダンジョンだし、初期の頃に挑戦したのかもしれない。


「ぜえぜえ……」


 オリオンは疲労困憊といった感じだが。

 勇者装備の恩恵を失った彼にとっては、なかなか厳しいダンジョンだったようだ。


「ウオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!」


 ボス部屋で待ち構えていたのは、全身が炎に包まれた一つ目の巨人だった。


 マグマサイクロプスという魔物だな。

 しかもよく見ると、固まった溶岩で全身が覆われていて、鎧のようになっている。


「普通のマグマサイクロプスではなさそうだ」


 こいつも黒の魔石を喰わされたのだろう。

 どうやら簡単には攻略させてくれそうにないな。



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外れ勇者1巻
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― 新着の感想 ―
あ、やっぱみんなもそう思うよな 脱ぐのを嫌がるキャラがいたらほとんどそれだよね なんか主人公の態度が男に対するそれと違うなと思ってたらそういうことか 親友の血を引いてるからってわけじゃなかったのね
違和感の原因てそれですか
本当に【彼】なのだろうか?
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