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第202話 まだ鐘が鳴っていないのに

『いよいよ本日から武闘大会の決勝トーナメントが始まります! 果たして勇者オリオンに勝ち、新たに勇者の称号を得る者は現れるのでしょうか!? あるいは今年もやはり勇者オリオンが優勝し、勇者の子孫としての力を示すのでしょうか!?』


 決勝トーナメントの一回戦第一試合は、東方の剣士だという男と、予選を勝ち抜いた唯一の魔法使いである青年だった。


『おおっと!? まるで横殴りの雨のように放たれるマローナ氏の魔法に、タケゾウ氏、まったく近づくことができません! これでは攻撃することも不可能です!』


 結果は、魔法の連射に長けた魔法使いの青年が、東方剣士を圧倒。

 二回戦へと駒を進めた。


 そうして第二試合で、早速アンジェの登場となった。

 相手はあのゴリティーアだ。


『さあ、やはり大注目のこの対戦カード! 共に予選で他を圧倒する力を見せた二人です!』


 互いにリングの逆側から跳躍。

 回転しながら数メートルほど宙を舞い、リング上へと着地した。


「「「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!」」」


 戦う前から魅せる二人に、会場のボルテージが一気に上がる。


『二人ともアクロバティックな登場です……っ! しかしアンジェ氏はともかく、ゴリティーア氏、この巨体でこれほどの身軽さも兼ね備えているとは驚きですっ!』


 両者がリングの中央で向かい合う。

 アンジェの方はすでに戦闘モードに入っているようで、傍から見て分かるほど闘志を燃やしている。


 一方のゴリティーアも、笑みを浮かべてはいるものの、予選とは打って変わって真剣な眼差しをアンジェに注いでいた。


『不敵に微笑むゴリティーア氏! 果たして予選とは違い、今度こそその戦いを見ることができるのでしょうか!? どうかお願いします!』


 予選のような真似はやめてほしそうに叫ぶ実況。


「うふふ、さすがにアナタが相手なら、弱い者イジメにはならなさそうねぇ?」

「手を抜いたりなんかしたら、ぶっ飛ばしてやるわよ!」

「あらあら、そう急かさなくたっていいじゃないの? アタシの本気は……そう簡単には見られないわよん?」

「ふんっ、いつまでそんなこと言ってられるかしらね!」


 アンジェが地面を蹴り、ゴリティーアに躍りかかった。


『ちょっ!? アンジェ氏、まだ鐘が鳴っていないのにもう戦いを始めてしまいました!?』


 ゴオオオオオオオオオオンッ!!


 一瞬遅れてようやく鐘が鳴らされた。

 そのときにはもう、アンジェは勢いそのままに蹴りを繰り出している。


 ドオオオオンッ!!


「ああああんっ! すごい衝撃ねぇっ!」


 それをゴリティーアは右腕でガード。

 激突の際に大きな音が響き渡った。


「はっ!」


 さらにそこからアンジェは間髪入れずに逆足の蹴りを放つ。

 それがゴリティーアの下顎を打ち抜いた。


『こ、これは強烈な一撃いいいいいっ! さすがのゴリティーア氏も、筋肉の鎧のない顎へはダメージが大きいはずです……っ!』


 だがゴリティーアは顎を蹴られながらも、アンジェの足首を掴んでいた。


「うふん、今のはちょぉっとだけ、痛かったわよぉん?」

「~~っ!?」


 直後、ゴリティーアはアンジェを片腕で持ち上げると、そのまま豪快に振り回した。

 そのまま猛烈な勢いで放り投げると、アンジェの身体はリング外へ。


『あああっと!? アンジェ氏の身体が軽々と放り投げられてしまいました! しかもこの勢いではリングの外に落ちてしまいます! こんな形で決着がついてしまうとか、さすがにやめてくださいよ!?』


 実況が思わず本音で訴える中、空中にいるアンジェは。


「はぁぁぁっ!」


 観客席の方に向かって、思い切り拳を突き出す。

 どんっ、という大きな音と共に発生したのは衝撃波だ。


『ななな、なんと!? アンジェ氏、拳で作り出した衝撃波で、落下の方向を変えてしまいました!』


 リングの外に向かって飛んでいたアンジェの身体が、空中で方向転換。

 無事にリングの上へと着地した。


「ちょっと! まさか場外なんて形で決着つけるつもりじゃないでしょうね!?」


 憤るアンジェに、ゴリティーアが楽しそうに笑う。


「うふふ、大丈夫よ。アナタがこの程度で終わるとは思ってないもの。それより、今度はこっちからいくわよぉん?」



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DB天下一武闘会でも思ってたけど、場外即失格は効率的なルールじゃないよな 相撲じゃなくて格闘大会だからね 格上が実力発揮できないまま破れる可能性が高まるし やはりこのルールを改良したと思われる、 幽遊…
[気になる点] ちとゴリの件長く感じるのは村づくりの方もあるせいかな? 作者さんの性癖が反映されてるのか愛が伝わってくる
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