表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

101/325

第101話 あんまりジロジロみないでよ

「……ここが三十階層ね」

「ん。なかなか大変だった」

「Aランク以上の冒険者にしか、推奨されていない階層なだけはあるわ」


 俺たちはダンジョンの三十階層へと辿り着いていた。


 レッドドラゴンと戦ったニ十階層より、十階層分も深い場所だ。

 階層を潜るほど出現する魔物が強力になってくることもあって、ファナとアンジェでも道中それなりに苦戦していた。


 さらに、ここまで潜ってくるだけでも丸一日がかりだ。

 この階層からミスリル鉱石が手に入るというが、今日のところはここで野営し、探すのは明日になるだろう。


「よいしょ」


 亜空間に保存しておいた()()を取り出す。


「……これ、丸ごとその亜空間とやらに入れてたの?」

「そうだよ。テントとかよりいいでしょ? トレント素材で作ってあるから、寝てる間に魔物が来ても、簡単には壊されないし」


 人面樹の魔物であるトレントは、硬質な木材になる。

 こんなときもあろうかと、それを加工してあらかじめ小屋を作っておいたのだ。


「そんなに広くはないけど、ちゃんとトイレとシャワールームも付いてるよ」

「ん、嬉しい」

「え! トイレ!? つ、使ってもいいかしら!?」


 どうやらアンジェはここまで我慢していたらしい。

 冒険者がそこら辺で用を足すのは珍しいことではないのだが、まだ若いので恥じらいがあるのだろう。


 ちなみにこのトイレはスライム浄化式だ。

 便器の下に何でも吸収してしまうスライムを住まわせ、便を処理してもらうという仕組みである。


 これがもっとも簡単に作れるトイレだ。

 なのにあまり一般的ではないのは、放っておくとスライムが逃げ出したり、成長し続けて危険な大きさになったりするからである。


 定期的にスライムを入れ替えるのも大変なので、普通の家庭のトイレとしては使えない。


「シャワー浴びたい」


 ここまで来るのに随分と汗を掻いたのだろう、ファナが服を脱いでシャワールームへと入っていく。

 しかし中に入っても、そこにはシャワー器具そのものが付いていない。


「……どこからお湯が出る?」

「大丈夫。ほら」


 俺は魔法でお湯の雨を降らせた。


 そう、このシャワーは人力なのだ。

 つまり俺がいなければ、シャワーを浴びることができないのである。


「どうかな、ファナお姉ちゃん、お湯の加減は?」

「ん、ちょうどいい」


 そのときこちらのやり取りが聞こえたのか、隣のトイレからアンジェの声が響く。


「ちょっと! それじゃ、あんたと一緒に入らないとダメってことじゃないの!」

「そうだよ?」

「そうだよって!」

「んー、別に嫌なら浴びなくていいけどねー?」

「ぐっ……」


 その後、シャワーですっきりした様子のファナを見て、やはりシャワーを浴びたくなったのだろう、アンジェも渋々ながら俺提供のシャワールームを利用したのだった。


「あんまりジロジロみないでよ!」

「ばぶー?」

「都合の悪いときだけ年相応の赤子に戻るんじゃない……っ!」






 翌朝、俺たちは三十階層の探索を開始した。


 三十階層は洞穴のような道が立体的に入り組む、非常に複雑な構造をしていた。

 闇雲に進んでいては確実に遭難してしまうだろう。


 幸い俺は探索魔法が使えるため、ルートに迷うことはない。

 目の前の道が七又に分かれていても、正しい道を選択することができた。


「あの右から二番目の道だね」

「ん」

「……もしこんなところを普通に探索しないといけなかったとしたら、ゾッとするわね。元の場所に戻ってくる自信は皆無だわ」


 もちろん出現する魔物も、これまでの階層よりずっと凶悪だ。

 今のファナやアンジェの実力だと、二人きりの探索はお勧めできないだろう。


 実際、ブラックオーガの群れに囲まれてピンチになりかけていた。


「まぁでも、僕がいるから心配しなくていいよ。だいたいの怪我は、治癒魔法ですぐに治せるしね」


 そんな感じでミスリルを探すことしばらく。

 ついにダンジョン壁に輝く、白銀色のそれを見つけたのだった。


少しでも面白いと思っていただけたら、↓の☆で評価していただけると嬉しいです!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

外れ勇者1巻
4月24日発売!!!
― 新着の感想 ―
[一言] 師匠、都合良く赤子の振りをするのには、無理があります…あんだけ活躍の場面を見せていてでは…(笑)師匠の探索魔法は凄いですね…どんだけのミスリルが取れるか楽しみです。続き楽しみに待ってます。頑…
[良い点] お巡りさん、アイツです(定期 巡査「毎度毎度呼ばないでくれる?」
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ