表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/67

美妖女と元社畜

「いつも処女」

 ラミアの言う、いつも処女とはどういう意味なんだろうかと考えていた。


 当のラミアはラクちゃんと遊んでいた、


「ラクちゃんこっちにおいで!!、ほら野菜だよ」

 ラミアがラクちゃんと遊んでいる、小動物と戯れる妖女、見ているとなんか微笑ましいものだ。


 本当に妖女なのだろうか?人間では無いのかと疑ったことも多い。


「いつも処女」

 実は簡単なことかもしれない、彼女の本当の姿と言うのがあると言うことだろう。

 人とひと時を過ごす姿は仮初の姿、つまり人としての処女もその場限りということだと推測する。


 妖女、人で無い者。


 俺はラミアを愛している。


 彼女無しではすでに生きていなかっただろう。

 そして、今の生活も失いたくない。


 そう言えばそんなアニメ映画があったな、だがあれは逆だ最初から人では無い姿をしていた。

 それでも少女は彼を愛せたので魔法が解けるのだ。

 その結果、彼は王子様に戻った。


 ラミア、もし君も同じように魔法に掛かっているなら、どんなに良いだろうか?


 でも、もしラミアの本当の姿を見た時、俺はどういう反応をするのだろう。

 今の気持ちのままで居られるのだろうか?


 本当のラミアの姿か・・・


 いきなりラミアが覆いかぶさって来た。

「ジェイ、どうしたの、真剣な顔をして」


「ラミアを喜ばせる方法を考えて居るのさ」


「なんかエッチね」

 

 ラミアはエッチねという言葉を覚えた。

 考えて見れば「エッチ」というのは英語の文字だけど、日本で出来た言葉で純粋な日本語だよ。

 ラミアが日本語覚えたのか?

 それともこの世界ではやっぱり「エッチ」ていうのか?


 いやいや、とりあえず話題を変えよう。


「ラミア、やっと出来たので一度飲んでみて欲しんだ」


 そう言うと黒い液体をコップに注いだ。


「これは何?」


「コーヒーだよ、ただし”たんぽぽコーヒー”だけどね、本当のコーヒーはもっとコクがある。でもこれはこれで体には良いんだよ」


 簡単に言えば、この間収集した種の中でたんぽぽに似た種類の草を育て、その根っこを乾かして、その後粉にしたものを準備した。

 これをローストしドリップすることで出来たコーヒーだ。


「ふぅ~ん」

 そう言うとラミアはひと口、口に含んだ。


「苦い…」


「苦いだろ、そこで、これの出番」

 そう言うとラクちゃんのミルクと蟻蜜を固形化したものを準備した。


 これを注ぐとマイルドになって、甘さも追加されて飲みやすくなる。


「本当、飲みやすくなったわ、本当に苦い飲み物ね、でも薬とは違うわね、匂いも薬とは違うわ」


「慣れれば、最初のブラック、つまりミルクも甘味も入れなくても飲めるよ」


「そうなんだ、でも苦い、歌にあるけど、こんな気持ちになるってどういうこと?ジェイはそんな気持ちになったことある?」


「何度かあるかな、失恋は何度かしたことがあるからね、ラミアは失恋したこと無いんだね」


「失恋、分からないわ。私は唯一種族らしいの歌にあるような恋なんて出来ない。そう他に仲間を見たことが無いから。突然発生した種族だとラーサババが言っていた」


「ラーサババ?」


「なんでも知っている、空の上に居るおばばのこと」


「何でも知っているなら、一度会いたいものだ・・・会ってテクを教えて・・・いやいや、帰る方法を教えて欲しいものだ」


 少し慌てた風になった俺を見てラミアが不思議そうに、そして楽しそうに笑っていた。


 そうか、唯一種族であるなら、相手が居ないから「永遠の処女」であることも頷ける。

 だがそれは、一生相手と巡り合えないと言うことを意味していた。


 俺はますます頑張って”テク磨くぞ”と思った。


 ラクちゃんが何故か寄って来て「ビィープ、ビィープ」と泣き出した。

 それを見たラミアが野菜を格納魔法から取り出して適当な大きさにして口の前に出した。


「お腹が空いているのよ、もう直ぐ子供が出来るから沢山食べないとね」


「そうだな、沢山生まれると良いのにな、沢山ミルクが取れるよ」


「ダメよミルクは赤ちゃんのものだからね」


 ラクちゃんをまるで家族のように労わるラミア。

 ラクちゃんも妖女であるラミアに懐いていた。

 普通動物は危険な妖女には近づきもしないだろう。


 ラミアは本当に妖女なんだろうか、俺は彼女が本当は人間であるに違いないと思い込もうとしていた。


 あの物語のように。


 出来るものであれば彼女に掛った魔法もしくは呪いから彼女を解き放ってやれないだろうか?


 本当にラミアとの生活は楽しかった、そしてすっかり忘れていたのかもしれない。

 だから生活に関わる魔法ばかりを修練したり工夫し創作した。


 だが、俺は後悔することになる。


 俺を砂漠に置き去りにした者達に生きていると分かれば追われることになるはずだ。

 今は逃げているから大丈夫だと思っていたのだろうか?

 そんなはずは無い。


 なぜ戦闘魔法を修練しなかったのだろうか?

 その日の襲撃してきたのは俺を砂漠に置き去りにした者達では無かった。


 だがそれ以上に強力な戦闘集団だった。


 俺は自分の大事なものを守ることが出来ない自分をいやというほど知るのだった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ