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挿話:サンクスの独り言・・・

 サンクスは窓の外の砂漠を見みつめながら考えていた。


 (僕はアクアのエレメントヒーローの子)


 それだけで人には特別と思われる。

 どっこい、できることは普通の人と何も違わない。

 アクアのヒーローの子、それは重い十字架でしかない。

 水だけでなく、火も土も魔法を使うことはできる。

 でもそれは普通のことだ・・・

 多分、人より少しだけ強力かもしれないが、そんな人は多く存在する。


 でも僕は『俺の思う俺になる』という目標ができた。


 グレスさん達に魔法を教えることで僕も魔法を再認識し深く知ることができる。

 それにジェイのいう世界のことわりが分かれば魔法を超える力が得られるだろう。

 無茶かもしれないが究極の戦いという状況の中でその力を研ぎ澄ますことが出来るかもしれない。

 そんな機会が与えられたと思った。


 それ以上に思うところがある・・・

 確かにグレスさん達は今は味方だ。

 でも少し前はどうだ、僕は敵だと思っていたし、彼らも僕らをそう思っていただろう、


 その状況はロザリア王女が変えた。


 それも、いとも簡単に変えた。

 そうか王女だかfらできるのだ。

 王女という立場がなければ国同士の関係の修復なんて成立しないだろう・・・

 やっぱりロザリア王女は凄い、やっぱり王家の血の力なのだろう。


 でも僕なんて、王女を熱中症にさせてしまった。

 そうだ、王女の護衛すらできなかった・・・そうさ何もできなんだ。

 父さんの力なんて何も受け継いでいない自分が無力に感じていた。


 ジェイ達に会うまでは、そう思っていた。


 でも今は違うジェイ達に会ってから色々なことが変わった。

 そして今思い出した言葉があった。


 『平和』


 エレメントヒーロである父さんは「平和」という言葉を僕に教えてくれた。

 いや違うな、教えようとしていた。

 でも僕はガキだったから異世界の言葉だけではその意味すらわからなかった。


 「平和」という言葉・・・・

 その言葉が意味することがわかれば

 もしかすると僕の力でも何かができるのではないか?


 今思えばエレメントヒーロ達も実際には各国の思惑から戦うだけの道具になっていた。

 結局、他のヒーローたちがそれぞれの召喚された国での立場を有利にするために戦っていた。

 でも父さんは、父さんのいう「平和」にしたいという理想のために戦っていたんだろう。

 だから僕に平和のことを教えようとしたのかもしれない。


 僕は平和の意味も分からなかった。

 ただ、戦っている父さんを応援していた。

 父さんが強くて、敵を殲滅して、勝てば「平和になる」と思っていた。

 そのことが、王女を助けて、国を裕福にすることだと思っていた。


 そんな考えは、ある日終わる・・・


 父さんは罠にはまり、僕の前からいなくなった。

 そしてその時、僕は弱く、力はなく、悲しみと敵に対する怒りだけが残った。


 父さんの仇が憎かった・・・

 あの頃の僕には、世界を平和にする意味もわからなかった。

 ましてや、平和にすることなどできるはずがなかった。


 今の僕はロザリア王女やジェイ、ラミアがいる。

 それだけじゃない、今まで敵だと思っていたグレス、ミザリをはじめ沢山の違う国で育って人たちと一緒にいる。

 それは人だけじゃない・・・魔物であるフェイスリーも同じ仲間だと思える。


 自分の持っていないものを持っている人たち・・・

 今までは他の国の人の暮らしなんて知ったことではなかったし敵対することも多かった。

 そして魔物はみんな人の敵だと思っていた。


 でも不思議なことに、心が打ち解けた時、彼らと一緒にいる生活は満たされたものを感じられる。

 もしかすると、これが平和の一端なのかもしれない。

 父さんの言っていた「本当の平和」ってどんなものだろう。


 たぶん僕が「なりたい俺」になるには、こんな平和な時を過ごすことが必要な気がする。

 つまり平和な状況に自分を置かなければ、きっと父さんのいう平和の重要さはわからないのだろう。

 

 ははははは。

 僕は欲張りなのだろうか・・・

 僕にはまた新しい目標ができた。


 僕は父さんの子、エレメントヒーローの子だ。

 だから平和な世界を作るものになるんだ。


 今回の旅・・・

 僕の力がどこまでこの世界で通用するのか知りたい。

 仲間を増やす・・・まだ味方になっていない人たち、そして僕が守ると決めた人たち。

 魔法やことわり、それと体術とか試したいことも多い。


 僕にもできるはずだ。

 大丈夫だ、ひとりじゃない、僕には仲間がたくさんできたのだから。


 お父さんやジェイのような人に・・・『なりたい俺』になる。


 この旅で、僕は今の僕より「ましな僕になれる」ような気がする。

 それまで、ロザリア王女様待っていてください。

 僕は必ず貴方の元に戻ります。

 

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