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サン その2

 フリアであることは間違いはない、だが元セグリアの者たちは少し驚いていた。


 その理由はフリアと一緒にいるのは全滅したはずのザカール兵である。

 そして可能性として考えられることがあった・・・

(まさかフリア様にも蟲が、これは罠?)

 そう疑いが想い浮かんだ。


 そして、カマをかけるつもりで質問した。

「フリア様、ザフグルート基地で大きな戦闘がありザカール兵は全滅したと聞いていたのですが、この方々は?」

「安心してくれ。彼らは協力者だ」


「協力者?」


「我々も驚いているんだ。

 ロザリア王女様だよ、我々は本当に王女の器の大きさを思い知らされた。

 そうさ、我々は王女様に比べれば、器が小さいかったのさ・・・・

 王女は王国の民だけでなく、ザカールの民すら愛することができるのだ」


「ザカールの民すら?それは、どういうことですか?」


「王女たちはザフグルート基地のザカールの民を全滅させたのではない。

 その逆で解放したのだ。

 敵だと思っていた我々には到底考え着くことではなかったこと。

 それを王女はいつも簡単に当たり前のことのように実現してしまったんだ。

 だから安心してくれ、この方々は解放されて我々に協力してくれている方々だ」


 その言葉は驚き以外の何者でもなかった。

 もちろんすぐには信じることなどできるものではない。

 そう、仇である敵兵としか思っていなかったザカール兵。

 その敵としか考えられなくなっている自分たちには思いもよらないことを、王女はやってのけたというのだ。

 ただ、そうだ、ロザリア王女なら、そうあのアイラ王女の再来と言われる王女であれば・・・

 疑う気持ちは薄れ、きっと本当のことに違いない、皆はそう考えた。


「王女が・・・。

 そうか・・・アイラ王女の生まれ変わりと皆が噂するロザリア王女様です。

 アイラ王女のように奇跡を起こしているのですね」


「奇跡か、そうだな、奇跡以外の何者でもない。

 我々にとってロザリア王女が未来への希望であることは間違い無いだろう。

 そう、今のうちに計画を話しておきたい」


 フリアは彼らに自分たちが身につけている蟲への対抗装備を見せながら計画を話始めた。


ーーーーーーーーーーー

 動き出した「バーサーカー」がおとなしくなると丸い塊となった。

 静かになった砂漠には何も残っていない。

 もちろん元有った構造物など何も残っていないし、人の姿は欠片すらなかった。


 ゼンガルと技術官はその丸まった塊を見上げていた。

「恐ろしいものだな。

 ここまでとは、破壊神という言葉がピッタリだ」


「これにてテストは成功ということでよろしいですね。

 ここから運び出す準備をします」


「そうだな、そうしておけ。

 今回は時間制限を設定したが、本来あれが動き出せば誰も止めることはできまい。

 腹が減ればそのあたりにあるものを食べ尽くし、眠ることもない。

 そして疲れを知ることもなく破壊を尽くしていく。

 もしこの装置による時間制限ができなくなるようなら、一旦動き出せば世界が終わるだろうな」


「この装置は現在一台しかありませんからね。

 すぐに複製したいのですが特殊な魔石が必要なためなかなかできないのです。

 実戦投入までには制御装置の複製を作成できますのでご安心のほどを」


「ああ、出来るだけ早く作るのだ。

 これがなければあの黒い塊は、敵だけではなく我が国を含めて世界を破壊尽くすだろう」


 数時間後黒い塊は技術官が主導しどこかに運び出されて行った。


 やがて騒ぎが収まり、あたりは静寂に包まれた。

 そして闇がその場所を覆う頃、いつものように砂の中から虫が這い出してくる。


 それに紛れて隠れ通したザカール兵がたった2名だが、砂の中から出てきた。

「おい、大丈夫か?」

「ああ、死ぬかと思ったが大丈夫だ。

 石床が割れて砂が露出した時は本当に助かったと思ったよ」


「お前が砂に潜るのを見て急いで潜ったが、結局俺たち二人だけが助かったようだな」


 二人は虫が湧き出す砂の上を虫除けを塗りながら闇に紛れて走って逃げていった。


「しかし恐ろしいものを作り出したもんだな」

「たぶん、アンガージャイアントに魔法を教え込んだものだ、ただ心というものを感じなかった。

 どちらかというとゴーレムのように無機質な惨殺マシーンだな」


「そうだな、ただ、あの額の紋章を見たか?」


「ああ、あれは、王家の紋章だ。

 そう間違いなく王家の血筋のものを素体とし作り上げたものだろう」


「もしかしてサン様・・・」


「滅多なことをいうものではない。

 サン様であるはずがない・・・

 優しかったサン様であるはずが・・・

 俺はサン様とご一緒に遊んだこともあるが、本当に民を思うお優しい子供だった。

 そうだ、将来はきっと良い王となるお方であると思ったもんだ

 だから絶対に違う」


 だが口では否定しながらも、その額の紋章は紛れもなく自分の知っている王家の紋章であった。

 そのことを否定しきれないことが悔しかった。


 あそこまでの変身が可能な力は王家の者に間違いがないだろう。


「ともかく急いでここを離れよう」


 闇が深くなるに連れどんどん虫が湧いてくる、その中を二人は走って行く。


 先ほど見せられた映像で映しだされたザフグルート基地が全滅した映像。


「なあ、俺たちどこへ向かえばいいんだ?ザフグルート基地は全滅したんだろ」

 そう帰るところはすでに無い、彼らには当てがあるわけではないが、ただ走った。


「俺たちが生きている限りザカールは全滅したことにはならないんだ。

 そうだ俺たちは、みんなのためにも生き残るんだ!!」

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