砂漠の民 12
空はだんだん東の方向から明るくなってくる。
「ゴーレムを操る3人の魔導士に大勢で移動中に襲われると守りながら戦うことになる今叩いておかなければならない」
ロザリアは黙って座っていた。
「どうした、ロザリア緊張しているのか?」
「いいえ、大丈夫です。さっきザガールの人たちと歌を歌い踊りを踊り、そして思い出しました私の使命を・・私はそれから逃げることはできません」
◆ ◆
イグルを送り出した後ラミアはゆっくりとロザリア達に合流すべく別れていた。
そして残ったグレス、サムリ、ミザカ、サンクスは基地内の南の端にあるテントの横に潜んでいた。
先ほどゲラバが見たグランズはグレスが変装したものだった。
ミザカが少し落ち着きがなかった。
「ラミア様は一人で大丈夫でしょうか、それと私たちもゴーレム相手で少々不安ですグレス様うまくいくのでしょうか?」
「大丈夫だ、我々は我々にできる最善のことをするそれだけだ」
「分かりました、余計なことを言いましたね、我々は勇敢な戦士ですからね大丈夫でしたね!!」
だが、グレスには迷いがあった。
-- 怒りという負のエネルギーを重視した戦士で本当に良いのだろうか?
私が子供のころ『激怒の戦士』に変身出来なかった|理由≪わけ≫・・・
母は私からは叔父にあたるガリアという母の弟の死から、私には戦士になって欲しく無かったようだった。
「怒りはやがてエスカレートし自分を抑制できなくなります。全てに怒りを持ち何もかもを破壊することになるのです、ガリアは敵も味方も滅ぼして、最後に自分をも滅ぼした」
そんな話をして泣き出す母を見ていた、俺は戦士化に対する恐れから変身ができなくなった。
怒りは大きな力になることは分かる、だがその反面全体や周りのことが御座なりになるのではないか?
戦うための力の根源、それが怒り以外にあると証明できれば我々は変われるかもしれない。
そうさ、ロザリア王女は少なくともその答えになることを俺たちに示してくれているではないか。
◆ ◆
イグルはクルーラを起こし、ゲラバ魔道参謀と一緒に、南に向かっていくのを見てクレスト参謀の部屋に向けて進む。
「クレスト様、大変でございます」
布団の中で寝たまま話をするクレスト。
「どうしたのだ、まだ早いのではないか?もう少し眠らせろ」
「どうやらロザリア王女を奪還しようとセグリアからの抵抗軍の戦士らしき者がこちらに向かっております」
「戦士?我々の膝元に来るだと、そんな阿呆がいるのか?どの程度の規模なのだ中隊規模か?」
「それが一人です、ただし防御もなしに、この虫の居る夜の砂漠を渡ってきたようで、虫の死骸で道を作りながら進んでいます、どう考えても普通ではありません」
「バカなことを、そんなことができる人間がおるはずがない」
「窓の外を気を付けてご覧ください」
クレストが窓の外を見ると女戦士が今は日が昇り少なくなってはいるが大量の虫をもろともせず駆除しながら進んでいた、そして歩いた後には見事に虫が全くいない道ができていた。
溢れる虫は駆除されても、またその空いた砂地を埋め尽くすはずだ、だがくっきりと道ができていた。
「なんだあれは?そんなことができるはずがない・・・、そうか新規の魔法だなそれならその秘法を知れば我々にも有利だな。良いだろうあの女をつ捕まえるぞ、ベルトガを起こして参れ、すぐに出発する」
「分かりましたすぐに準備させます」
イグルはベルトガを起こし、クレストと一緒に、東の門から戦車で出ていくのを見てバグラの部屋に向かった。
(なるほど虫が完全にいなくなるまでは戦車で戦うおつもりですか、さてラミア様に通じますかな?まあ頑張ってください)
イグルに課せられた分断作戦は最終段階に入った。
「バグラ様、ロザリア王女が見えて参りました。起床ください」
早く起こされて機嫌が悪いバグラ。
「まだ良いだろう、クレスト達に先に向かわせろ」
「それが不審な者たちが現れクレスト様もゲバラ様もそちらに向かいました」
「なんだと・・・、奴らは、どうして報告もなしに勝手なことをするのだ」
「お二人はバグラ様に報告するまでもない相手なのでお休みいただけとの話でした。しかし思ったよりロザリア王女が早く着きましたのでお知らせに参りました」
「しょうがないな、では準備するとするか、ギアナを起こしておけ」
バグラは管理楼から見える位置にロザリア王女を乗せた戦車が見えるのを確認すると準備し始めた。
イグルはギアナを起こすと彼らが管理楼の階段を降り始めたのを確認すると窓から合図を送った。
その後イグルはグレス達と合流すべく南に向かった。
合図はバグラが管理楼を降り、門を出るまでは外は確認できないという合図だった。
その合図を確認するとロザリア王女はフェスリーに乗り、フェスリーはラミアの方向に走り出した。
「ロザリアとラミアを頼んだぞフェスリー」
俺は一人でバグラというものと対峙することにしたのだ。
管理楼をまじかに見る場所にまでついた俺の乗った戦車が止まる。
そして門が開くとバグラがにやけた顔でこちらを見ていた。




