砂漠の民 9
グレスから今までの経緯を聞くイグラ、しかしその顔は話の内容に驚くと共に段々暗くなっていった。
「我々は命令されていたと言っても、ロザリア王女に対して許されないことをした。にも関わらずロザリア様は我々を導く者となると言うのか」
イグラはそのまま意味深いことを呟いた。
「そうかそれであれば私の役割は終わるということだ。私にはやらなければならないことが出来たようだ」
サンクスの指示でイグラとグレス達はそのまま管理楼の外で待機する。
そこへミザカが来た。
「ミザカ、もう治ったのか、あの酷い火傷が奇麗に無くなっている」
イグラが信じられないような顔押していた。
ミザカも火傷を負った顔の辺りを摩りながら。
「イグラ様ご無事でで何よりです、本当に奇麗に治っているんですよ。ラミア様は本当に凄い魔導士だと思います」
微笑むような顔でミザカを見ていたイグラだったが、振り向くとグレスの顔を見た。
「グレス、これからはお前達の時代だ全ての権限をお前に渡す」
「急に何を言っているんだ父さん・・」
「私はあの管理楼の上層に居る6人を許せない、このまま奴らと刺し違えてでも一矢報いたいんだ。それとロザリア王女が我々を助けるという話・・・許されないかもしれないが私はこの命で全ザガールの罪を償うつもりだ」
その言葉にサムリが反応した。
「イグラ様、奴らを倒すことは賛同いたします。御一緒したく思います、ただ・・・」
「ただ?」
「差し出がましいことを言いますが、ロザリア様への贖罪の件は、お考えは直しください」
「我が命を以てザガールの犯した罪を償うことは出来ないことは分かっている」
グレスが話に加わる。
「父上違うのです、命を捨てることをロザリア様は望まないのです、そうです何のためにロザリア様が今戦ってくれているのかをお考え下さい」
話にラミアが声を荒げた。
「勝手な言い分ね、偉そうに言うのはお止めなさい贖罪は貴方に選択する権利などない。ロザリアがどう思っているかだ」
「だが我々は今ロザリア様に返せないほどの恩義を受けておる、せめて私の命での贖罪を願いたい」
ラミアが怒ったようにイグラに言い放った。
「本当に馬鹿だな、今は未だロザリアはお前たち全員を助けようとしている段階だ、それなのに死ぬなどと良く言えたものだ」
サムリが割って入った。
「イグラ様、贖罪と言うのであれば私も同じです。ですが私は生きながらえることを選択しました。生き恥を晒しても生きてさえいれば私にもロザリア王女に返せることがあるかもしれないと考えております。それと私はロザリア王女の恩義を我が国へ伝承しなければならない責任があると考えております」
「何よりもザガールの誇りを生きがいとしていたお前が生き恥を晒しても生きると言うのか、死をも恐れぬ勇者サムリがそのようなことを言うとは世も変わったな」
「はい、私も子供が出来ます。親になるのです自分だけのことなど考えるのは卑怯なことです『無責任』では生きてはいけないことをラミア様に教えて頂きました」
「父上、勇気と蛮勇を間違えてはいけません、私も本当に勇気のある選択とは例えみっともなくても恥ずかしいことであっても恩義に報いるこために今を生きることだと思います」
「この老いぼれが私が生き残って何が出来るのだ?」
「私ごときが言って良いのか分かりませんが、イグラ様だから出来ることが有ります。それは間違いございません」
ラミアが少し落ち着いていた。
「イグラ、贖罪も謝罪も今はロザリアに言っても意味が無いと覚えておくことだ」
「何故でございますか?」
「お前達ザガールは未来に何か光が見えた様だが、ロザリアには未だ将来の光は何も見えていない。失った国や民の暮らしのこと、そのようなことが解決した後に自分のことがある、まだまだ光も見えないロザリアだが今は全く関係の無いザガールのことに自分のことでもあるかのように首を突っ込んいる。そう言う子だロザリアは・・・そんな彼女に今謝って謝罪も贖罪も受け取ることは出来ないだろう、そうだな彼女に光が見えた時お前には出来ることがあるだろう」
イグラは何も言い返せなかった。
彼の記憶が正しければ、ロザリア王女はまだ成人もしていない少女のはずだ。
だがその少女がザガールという王女の仇ともいえる国と民を救おうとしている。
やがてイグラは上を向いて何かを決意したような顔になった。
「私も生きることにしよう、そうすることでロザリア様へお返しすることが何か出来るだろう、そして何時か贖罪が可能になった時、私はロザリア様に命を預けることにしよう」
「父上皆で生きてダガダへ向かいましょう、そして新たな国を創るのです、奴らに一矢報いる方法はジェイ様が考えております、それに従いたいと思います」
皆で作戦会議を始めた。




