砂漠の民 7
魔導士たちは俺達に気づく前にゴーレムを顕現させた。
だが俺には暗視スコープでゴーレムは見えた。
「おお巨大ロボットだ!!」
肩に乗ったサンクスは反応した。
「ロボット?」
「ああ、そうかこの世界ではゴーレムみたいなもんだな」
「知っ・・・」
サンクスは何か言いたそうだったが言葉を収めた。
(知っているよ、お父さんも言っていたよ「ロボット」それは機械仕掛けの人形なんだろう、人が操縦するんだろ・・・やっぱり同じだ)
俺達に気づいていないとは言え、相手はゴーレム二体。
少し予定変更だ。俺はサンクスを下ろした。
「俺はゴーレムを押さえに掛る。ラミアは魔導士を倒してくれ。サンクスはザガールの戦士たちの相手だ、無理をするなよ、それと出来るだけ奴らを殺すなよ」
サンクスは確かに強かったが子供だ、ラミアにも聞こえるように言うことでラミアは自分の仕事をしながらもサンクスもサポートするだろう。
小僧の武器は剣や槍ではなく棒やヌンチャクだった、つまりザガールの戦士を相手にするには最適だと思う。
「分かっているさ、任せておけ!!」
サンクスは張り切っていた。
フェスリーに乗ったロザリアが声をかけて来た。
「私はどうすれば」
「離れて見ていてくれ、どうもザガールの人にはフェスリーは神獣様のようだからね、魔導士が居る内にザガールの戦士たちが戦わないと彼らの家族が危ないんだ」
ロザリアは少し安心したように首を縦に振る。
「分かりました待機します」
「魔導士を片付けるまでは隠れていてくれ。ただしサンクスが危なくなったらフェスリーの姿を見せてザガールの戦士たちを大人しくさせてくれ」
そう言えばラミアは槍を投げていたはずなのに今は持っていた。
「あれ?槍?いつ取りに行ったの?」
ラミアは少し笑っていた。
「えっ?呼べば戻るのよ、知らなかった?」
「「そんな便利な機能があるのか?」」
俺の声にサンクスの声が重なった。
そう言った後直ぐにサンクスは棒を回転させながら投げた。
「戻れ!!」
サンクスが命令すると棒は戻ってきた。
「凄い、形が変わるだけじゃなくて、こんなことができるなんて、国宝でもこんな武器は見たことがないよ」
なるほどブーメランだな、小僧の武器の攻撃方法に幅が出来る。
そして全員再度前進を開始した。
サンクスはラミアのサンダーボードに乗せてもらっていた。
ラミアにしがみ付くサンクス・・・なんか照れているようだった。
俺達に気づいた魔導士はザガールの戦士たちを俺達に向けた。
だが俺はザガールの戦士を気にせず一気にゴーレムに向かった。
俺が近づくと2体のゴーレムは揃って俺を襲ってきた。
これは都合が良い、同時に息の根を止めてやる。
まずは羽マクロの展開、俺の周りに多数の羽が作り出された。
そして何も考えず一気に羽をゴーレムに向けて発射した。
ドドドッ、ドドドッ、ドドド・・・
絶え間なく爆発が続く。
その光景と爆音にザガールの戦士たちは動きを止め、魔導士たちは驚いていた。
その間にラミアとサンクスが敵を倒していく。
何も見えなくなった時点で羽を止める。
そこには石があるだけだったが、その石にまた砂がまとわりついてゴーレムになって行く。
「再生力が相当強いわけだな」
どうやら石は精霊石で結界に守られているらしい。
ならばもっと温度を上げれば良いのだろう、燃えそうな元素を集め酸素の量を調整すれば高温になる。
新たな術式を作り始めマクロ化する。
その間もゴーレムは俺を捕まえようと襲ってくる。
もちろん避けるのだがゴーレムは二体居るのだ。
一体のゴーレムが魔法を使ってきた。
俺の周りに炎の壁が出来る・・・
俺の結界の鎧はそんな温度では問題なかったのだが、温度が高くなると危ないかな?
(そうか、火炎魔法に関しても耐性が必要だな、みんなの結界鎧の耐性温度も上げておくか)
皆の腕輪の術式を少し変える。
並列意思で動作させているから簡単なものだ。
なぜかOSのインターネットでのバージョンアップの機能に似ているな?とか思った。
やっぱ職業病だな、それも前職だが。
俺が遊んでいる間にラミアが十名の魔導士を全員倒したと報告してきた。
怯んでいたとはいえ十名だぞ、本当にラミアは強いな。
だが俺の相手のゴーレムは動き続けている。
「ラミアすまない、今手が離せないんだ。フェスリーを連れてきてザガールの戦士達を大人しくさせて全員を安全な所に集めてくれ」
俺はゴーレムと戦わなくてはいけないのでラミアにお願いして、再度戦いに没頭していく。
出来上がった術式で羽マクロの展開、俺の周りに多数の羽が作り出された。
そして再度一気に羽をゴーレムに向けて発射した。
ドドドッ、ドドドッ、ドドド・・・
絶え間なく爆発が続くが今回は温度が上がっていた、その光景は先程よりも明るく白色に光り輝いていた。
今度はゴーレムも別々に行動している、別のゴーレムが俺を襲って来るので次のマクロを走らせることが出来ない。
とりあえず避けながらマクロを走らせる準備をする。
少しするとフェスリーがは走って来た。
あれ、みんなの所じゃなくてこっちに来た?
フェスリーは俺を見ると嘶き始めた。
ゴ~~~オォン
それは前回聞いた声とは違って太い声だった。
そしてその後一気にフェスリーの体が燃え始めた。
その光は温度が高くなることを現すように赤、橙色、黄色、そして白色への変化していった。
ロザリア達の鎧結界の耐性温度を上げておいて良かった。
ロザリアは温度が上がって行く間、フェスリーに必死にしがみ付いていた。
「フェスリー行くわよ!!」
ロザリアがそう言うとフェスリーはもう一体のゴーレムに向けて走り出した。
ゴ~~~オォン
フェスリーはそう嘶くと、口から炎を吐き出した、その炎は体と同じく白色の高温の炎だった。
高速で走るフェスリー、そのままゴーレムに突進していった。
ズバ~~~~~~~ン。
ゴーレムの体に穴が開き、そのままフェスリーはゴーレムを通り抜けた形で反対方向に立っていた。
その口には精霊石を持っていた。
フェスリーはその精霊石をかみ砕くと飲み込んだ。
ゴーレム化魔法はフェスリーが咬み砕いて無効化したらしい。
俺の羽の爆発攻撃も収まっていた。
爆発の後、そこには何も残っていなかった。
俺はラミアに合流すると弱音を吐いた。
「俺もまだまだだな。ゴーレムを二体倒せなかったよ」
「大丈夫よ、あなたは十分強いわ」
ラミアはそう言ってくれたが納得は出来なかった。
ゴ~~~オォン
フェスリーは嘶くとやがて炎を収めた。
ただ不思議だったのはフェスリーが少し大きくなったように思えた。
そこでラミアに聞いてみたが「精霊石の力じゃない?」という話だった。
「俺の倒したゴーレムも精霊石を残しておけば、フェスリーにあげれば良かったな?」
そう俺が言うとラミアは否定した。
理由は簡単で、フェスリーは妊娠中だから今は刺激の強いことはさせてはいけないと言うことだった。
そうだったフェスリーは妊娠中だったんだ。
一件落着となってザガールの戦士達を集めた。
フェスリーを見た者達は膝まづきロザリアを聖なる巫女様と呼んでいた。
その後ラミアはグレスを呼びに行き、全てのザガールの戦士が集まった。
俺たちが居た結界を大きくし全員を集めて作戦を話始めた。
ただし、俺が話をしても説得できないだろうからグレスに話してもらうことにした。
「伝承が本当になるとは思いもしなかった、だが今それは現実のものとなった」
グレスは今はロザリアの肩に乗っているフェスリーを両手で包み込むような仕草をしながら敬意を払うような声で言葉を続ける。
「神獣フォグリスとその巫女の登場とともにジェイ殿によりダガダへの道が開かれたのだ。そして驚くことに我がクラバト王の遺言が私の手に有る今は多くを説明できないがクラバト王もダガダへの帰還準備をしてくれている。我々はダガダへ行くことが運命付けられたのだ」
ザガールの戦士達の中からどよめきが聞こえて来た。
グレスは声を大きくし全員を鼓舞するように続けた。
「我々を強く束縛していたものは命の水だった。だがその命の水の心配はジェイ殿により無くなるのだ。これにより我々を束縛している相手はたったの二十人だ。この人数であれば我らザガールの戦士であれば制圧は可能である。そして村に残る2千人を解放し全員でダガダに向かうことにする」
「「「おおっ!!」」」
ザガールの戦士達は大きな声で応答し総攻撃の雄叫びを上げた。
さて俺の出番だ。
「では作戦を伝える」
だが雄叫びをあげる者達は興奮していた。
「そんなものは要らない、力で攻めれば良いのだ」
という声が聞こえて来たので反論しておく。
「作戦無くして何が勇気だ。無策で挑むのか?それは無謀と言う。お前達にとって家族の命は大事だろ、だが家族から見ればお前達は大事な家族なんだ。そうだお前達の命も大事な命なんだと心に刻んでおかなければならないんだ。命が無謀なことで失われることは許されないことだ!!」
あほの俺が偉そうに言える立場では無いが、言いたいことを言っておいて作戦を伝えた。
暗闇の中2千人の救出作戦は開始された。




