銀賞『忘却の楽園1 アルセノン覚醒』
銀賞だけど帯はゴールド。
そこで推薦文を飾ったのは3年前に『錆喰いビスコ』で同じく電撃大賞銀賞を受賞した瘤久保慎司先生。
「ある高潔な獣が、この本を書いたらしい。愛おしく、狂暴で、ひどく透き通ったこの感覚はなんだ?人が言葉に表せぬものが、この本には描いてある。」とのことです。
ラノベの推薦文、どの作品に貼り付けてもそれなりに見える説。
本作品の舞台は近未来。大きな戦争を何度かした結果、地表の大部分が海になってしまった世界です。
主人公はその世界の士官学校のような施設で三年間の訓練を積んで、そこを卒業するところから物語が始まります。
視点は3つ。主人公、同期生(男)、同期生(女)。
くるくると変わっていく視点。これが実に読みづらかったです。
せめて一人削ってしまおう。そうなった場合、主人公が第一候補になってしまうという残念な作りでした。
かなり出番のあった同期生(男)なんですが、彼が良くなかった。
おおよそ士官学校の課程を過ごしたとは思えないキャラクター。
いや、いいんですよ、自室や酒場で粗野な態度を見せたって。
いいんですよ、上官の前でうっかり自分の心の声が出てしまっても。リカバリすれば。
「あ、すんません」「俺はこれでいいんで」「ところで、飯はまだ?」
なんだコイツ・・・。しかも周囲は無反応。ってことは許容しているってこと?
これはない。愛される馬鹿を目指したのかもしれないですが、ただの馬鹿です。
でもって彼は士官学校あがりの設定。どんだけヌルいのこの世界?
いくら完成された世界観を作っても、いくら凝ったディティールを書かれても無理。シラケっぱなしで終わりました。
ライトノベルにしては厚い一冊(400P)だったけれども、物語はほんの序章といったところで終わります。まあ、初めからナンバリングされているタイトルだったので文句はないです。ただ投稿段階ではどんなものだったか気になります。まとめようがないですから。次の巻よりもそっちを読みたくなる一冊でした。
さて、『忘却の楽園』を読み終えた私は、消化不良とでもいうのでしょうか、妙な心持ちに陥りました。
しかし、そこからの脱却。次の手は既に考えてありました。そう、『忘却の楽園』を読みながら、もう頭をよぎっていたのです。
はい、大賞作品です。電撃文庫小説大賞の一等賞であり、毎年輩出するとは限らない、明らかにグレードが違う賞。実際去年受賞した『声優ラジオのウラオモテ』はおもしろかったですし、この一年で4冊出るほどですから人気もあるのでしょう。
そーいうことで私は試し読みの際に一度切ったことを無かったことにして『ユア・フォルマ 電索官エチカと機械仕掛けの相棒』を買うのです。