ヴィシュタイン・コピーライト
二つの曲が交差する時、物語は鮮烈に動き出す
投稿日:2020年10月11日 21時32分
時は20世紀初頭。
イングレス連合王国の首都ロンドンにあるピアノバーで専属ピアニストをしていた十七歳の少女、アンジェラは、ある日ピアノバーにやってきたイケメン調律師アドニスと出会う。
彼のレッスンを受けて超絶技巧のピアノ演奏曲『右手のためのピアノ独奏曲』をマスターし、ロンドンピアノコンペティションで優勝しなければならなくなったアンジェラだったが──?
この作品の魅力は、冒頭から登場してくる馬車や蒸気自動車など、時代背景を色濃く伝えてくる描写の巧みさ。
アンジェラなど魅力的なヒロインが見せる細やかな仕草。
アンジェラがアドニスからピアノのレッスンを受けるさいに描かれる、ピアノに対する作者の知識量。
等々といったところでしょうが、一番の魅力は、理詰めされた物語の設定、構成と、巧みに張り巡らされた伏線でしょうか。
ここで、私が特に大好きなエピソードをふたつ紹介します。
※1─4 ピアノステージ
アドニスとアンジェラがピアノ連弾で対決するシーンなのですが、とにかく疾走感と躍動感が凄い! 私が自作の中で戦闘シーンの参考にさせて頂いた回です。
ピアノなのに戦闘シーンの参考になるの? と疑問に思うかもしれませんが、百聞は一見に如かず。まあ、見てみなさいって。
※5─3 期待以上の演奏を
アンジェラが得意としている『鎮魂歌』
マスターしなければならない『右手のためのピアノ独奏曲』に隠された秘密。
そしてタイトルに隠されているヒント。
何故、ヴィシュタインなのか?
何故、コピーライトなのか?
所々に配置されたこれらの情報がひとつに繋がったとき、鳥肌もののタイトル回収劇がやってきます。それがこの「期待以上の演奏を」の回なのです。ここから先はもうノンストップ。ページを捲る手が止まらなくなるでしょう。
さあ、今こそあなたも、音楽×冒険×スチームパンクの世界へ!
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ここまで全て小説家になろうさんに投稿したレビュー本文を抜粋して載せてきましたが、今回はノベルアッププラスさんに投稿したレビューを載せます。
というのも、四百文字というなろうさんの文字数制限のせいで、上記レビューを削って投稿した経緯があるからです。ならばいっそ、削る前の完全版を読んでもらった方が、魅力が伝わるだろうと思うんす。
四百文字、少なすぎなんよなあ……。
本作の売りは構成と伏線と書きましたが、後は〝見せ方〟でしょうか?
特に一章の中盤、および二章の前半に入ってくるピアノの演奏シーン。情景が目に飛び込んくるような躍動感は一見の価値あり。他にも静のシーンであっても、登場人物の人となりが伝わって工夫が随所に見られ、メリハリのある展開に惹き込まれること請け合いです。
一話の疾走感に魅せられたなら、そのまま読んじゃってどうぞです。
※こんな人にオススメ
・ピアノ、音楽が好きな方
・スチームパンクが好きな方
・文章力、構成が巧みな物語が読みたいという方
作品名:ヴィシュタイン・コピーライト
作者名:トモユキ様
ジャンル:空想科学〔SF〕
作品URL:https://ncode.syosetu.com/n3267gk/