さよなら、メモリーズ。
「それは、不思議な出会いと別れの物語。」
主人公、榎田蒼がある日出会った記憶喪失の少女、秋月華耶。彼女には、他人の記憶を盗み見て操作するという不思議な能力があり、そうして記憶を集めることで、自身の過去と、失われた記憶を取り戻そうとしているのだという。
蒼は彼女に協力することを申し出るが、二人には意外な接点と秘密があり、やがて彼は不可思議な体験をしていくことになる──
恋愛寄りの純文学です。
丁寧に描かれるキャラクターの動きと心情描写。とは言え決してくどくはなく、必要な情報だけを伝えてくる文章はとても読み易いです。
物語の展開も時系列順に並べるだけではなく、必要な時に必要な情報を自然に提示してくる。プロットの段階でしっかりと作りこめてるのでしょう。構成力の高さが光ります。最初に思ったことなのですが、地の文と会話文のバランスが良いので、すんなりと頭に情報が入ってくる……のかもしれませんね。
とにかく文字の選択と並びが心地よい。
見どころは、中盤に明かされる二人の秘密と、そこから後半に流れる切ないストーリー。「きっとこうなんだろう」と思っていた予測は、半分当たりつつも良い意味で裏切られました。
二人の出会いは決して偶然ではなく必然。主人公が過去を清算して前を向くために、必要なものだったのです。
さて、それでも気になった点を敢えてひとつだけ。
ヒロイン秋月華耶の能力が、定められた結末に辿り着くための舞台装置に留まっている点。面白い設定だけに、作中で活躍するシーンがもっとあれば必然性が増して良かったと思うのです。少々もったいなく感じてしまいました。
それってどういう事? と気になったあなた。是非、本書を手に取ってみてください。切ないラストでありながら、きっと爽やかな読後感が得られると思いますよ?
読んで後悔しない、隠れた名作です。
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更新サボってましたが、感想を頂きましたので久々に更新です。
ちょっとしたことで、モチベーションが上がってしまうのは作家の悲しい性みたいなものなのですよ笑。
さて、今回紹介するのは、私がノベルアッププラスで活動を始めた当初、私の作品に足跡を残してくれた方がレビューを書いていたこの作品です。
「ほう?」と気になって見にいったところ、丁寧な筆致と切ない描写&展開に魅せられて、あっという間に読了したのを覚えています。
上記のレビュー本文は、ノベルアッププラス様に投稿したもの。
作品の概要はレビュー通りなのであまり追記する部分もないのですが、92000文字と文庫本一冊弱の分量であり、また読みやすい作品なので、読んで損なしとは言い切れます。
文字通りの、埋もれている名作だと思います。
※こんな人にオススメ
・切ない作品が好きな方
・ちょっと不思議な、ミステリータッチの作品が好きな方
・恋愛作品が好きな方
作品名:さよなら、メモリーズ。
作者名:葦原 聖 様
ジャンル:現実世界〔恋愛〕
作品URL:https://ncode.syosetu.com/n8735fu/