長い夜
「それはホラーか、それとも純文学か。強い引きと謎によって彩られた夜の記憶。」
神域である山や森で、また街や里からなんの前触れも無く人が失踪してしまう事件「神隠し」が多発するなか、主人公優の身に不思議な出来事が巻き起こる──
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この作品は、ジャンルがホラーになってこそいますが、様々なジャンルの融合体ではないかな、と感じました。
確かに根幹の部分はホラーなのかもしれません。ですがそれでいてミステリーでもあり、またヒューマンドラマでもあり、はたまた、純文学的でもある。
そんな本作の魅力を端的に表現すると、謎や仕掛けの多さであり、エピソードごとの引きの強さでしょうか。
度々挟まれてくる惨劇や、不可思議なイベントの数々に、「どうして彼女はこんな行動をしたのだろう?」「この先、どうなってしまうのだろう?」と気になり、自然とページを捲る手が止まらなくなる、そんな魔力に満ちた作品です。
三人称で綴られる物語なのですが、そこを上手く利用して、主人公である優の人格が、時々「ヨル」と入れ替わるところも本作の見どころ。
いまの発言ははたしてどっちのものなのか? 巧みな表現に翻弄され、思わず首を捻ってしまうことでしょう。
主人公──優と意識を共有している「ヨル」とは何者なのか?
感動の結末を、是非、見届けてください。
◆
真夜中にかかってきた一本の電話。電話口の男が語った不可思議な内容。枕元に立つ、不気味な人物。
今のは現実かそれともまやかしか? 衝撃的なシーンから始まる本作ですが、以降も引きの強い文言でエピソードの最後が締めくくられていきます。
文芸作品を中心で書いている私の話をすると、もちろん全体で面白い物語にするのは大前提ですし、その中に「穴」となるエピソードはただの一つもあってはならない、と考えています。(まあ、そうですよね)
ですが一方で、ひとつひとつのエピソードについて、そこまで引きにこだわっていなかったのも事実でした。
そんな、これまで持っていた概念をも破壊してしまうほど引きが強かったのが本作です。なるほど、これは……! と慄きながらページをめくっているうちに、読了させてしまう牽引力がありました。
読みやすい文体ももちろんですが、しっかりプロットを練っているんだろうな、とわかる構成力も、本作の魅力なのではないかなと。
精神を乗っ取られたり、流血したり、時として人が亡くなったり。様々な衝撃展開が巻き起こる本作。
気になったらぜひ、お手に取ってみてくださいね。
※こんな人にオススメ
・ホラーやミステリーが好きな方
・エピソードごとの引きの強い作品が好きな方
・読み心地のよい文章を求めている方
作品名:長い夜
作者名:文月梨加様
ジャンル:ホラー
作品URL:https://novelup.plus/story/820854538
※掲載サイトは、ノベルアッププラスです
あと表紙怖いっすねΣ(・□・;)