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初めての恋敵

晴れ、絶好の戦闘日和。

敵はこの国のお姫様らしいが竜の私には関係無いのだ!

いくつかいたずらを仕掛けて、二度とヴィル様に近づけなくしてやるんだから。

そして、ヴィル様には悪いが明日の護衛の仕事も中止にしてやる!

「リュ。」

フンスと鼻息を荒くしながら気合いをいれていると、いつものように仕度をすませたヴィル様に抱っこされて下の食道に向かう。

あれ?

私も一緒に食べて良いの?

いつもは私の食事はメイドさんが部屋まで届けてくれるため、最近は一人寂しく食事をしていたのだ。

階段を降りて食道につくと、今日はギルドがお休みのためほとんど人がいなかった。

これならあまり目立たずに食事出来る!

固めていた手をゆっくり動かそうとしていると、後ろから唐突に抱きしめられた。

「きゃあー!

やっぱりかわいい!!」

あまりにも強く抱きしめられたため、漏れそうになる鳴き声をこらえていると、背後から走って来た少年に脇からつまみ上げられた。

助かった。

少年は私をヴィル様に返すと、お姉さんを睨み付けた。

「姉さん、もう出発するって時にどこに行くんだよ。」

「だってー、この子がかわいいから我慢出来なくて。」

少しも悪びれることなく放った言葉は、ヴィル様の持っている私に向けられていた。

動くことが出来ないまま心で泣いていると、あっという間に少年がお姉さんを引きずって行ってしまった。

やっと食べられると食事に目を向けるが、先ほどの騒ぎで皆が注目してしまった。

結局、その視線はヴィル様の食事が終わっても最後までついてきた。

「リュー。」

外に出て、またも鞄に詰め込まれると、ヴィル様は扉を開けた。

一瞬歓声が沸き上がり、すぐにおさまった。

え、どうして?

少し開いている口からヴィル様を見ると、髪は白く染まり黒かった瞳は赤く変わっていた。

何で?どうして?

心なしか背が縮んだような気がするし、胸も膨らんでるような。

鞄の中で考えていると、ギルドの前に集まっていた群衆からヒソヒソと話し声が聞こえてきた。

「ねぇ、見てあの髪と目の色。」

「本当に、酷い色。」

「あの子がいたからモンスターがこの町を襲ったのよ。」

「怖いわねー。」

え、何これ。

どういう事か分からないけど陰口なんて、しかもあれわざと聞こえるように言ってるみたいだし、止めなくちゃ!

「リュ!」

今すぐに止めさせたくて鞄から飛び出すと、群衆はいきなり鞄から出た私を見て息を飲んだ。

「は、白竜...。」

誰かが口に出すと、触発されたように泣き出した。

え、今度は何?

「まさかまだ血を繋いでいたなんて。」

涙を流す町の人に驚いていると、突然後ろから見知らぬ青年が私を抱き上げ連れ去ろうとした。

「リュ!?」

突然の事で動けずにいると、さらに横からヴィル様らしき女性が私を奪い走り出した。

「リュー!?」

後ろから町の人が追ってくるのを眺めながら裏路地に入ると一気に加速して町の人を撒いた。

「リュ?リュ?」

わたわたとパニックになりながら降りようとすると、女性は鞄から砂糖づけのアプの実を取りだし落ち着くように言った。

「リュ。」

アプの実を受け取り一口かじると、甘酸っぱい酸味が頭を落ち着かせてくれた。

「落ち着いたか?」

「リュ。」

その場に座り、目の前の女性を見ると女性は溜め息をついて説明を始めた。

「私は、正真正銘ヴィルヘルム・フォン・クライストだ。

女になっているのは町の人に囲まれないようにしているだけだ。」

なるほど、確かにあれなら囲まれないね。

理解したことを示すように返事をすると、ヴィル様は私を肩に乗せて路地裏をたどりあっという間に王宮の裏までたどり着いてしまった。

恐らく従業員の入り口であろう場所から入ると、目の前に恭しく礼をした老人がいた。

「お待ちしてました。」

「リュ?」

肩に乗ったまま首を傾げると老人は目を見開いた。

ヴィル様が私を下ろすと、老人に私の説明をしてくれた。

て言うかヴィル様いつ男性に戻ったの?

「それはそれは、ようございました。

もしも、保護なされなければ白竜様は死んでしまっていたかも知れませんからな。」

確かにあのときヴィル様が助けてくれなきゃ死んでたと思うな。

でも、あのとき聞こえた声って何だったんだろう。

まあいいか。

いくら考えても無駄だと判断し直ちに思考を放棄すると、目の前の老人はしゃがんで挨拶をしてきた。

「お初にお目にかかります。

私は国王の執事をしておりますアルグと申します。以後お見知りおき下さい。」

丁寧に挨拶をされたが私は話せないのでお辞儀で返すと、何故か微笑ましげに見られた。

「リュ?」

「それではこちらへ国王がお待ちです。」

アルグさんが先行し長い廊下を歩いて行くと、目の前に巨大な扉と二人の騎士が槍を持って立っていた。

「ヴィルヘルム. フォン・クライスト並びに使い魔フィーリル・フォン・クライスト様がお見えになりました。」

うるさ!

アルグさんがお年に合わないような大声を出すと、扉が開き中に誘うように道が出来ていた。

アルグさんは扉の隅に移動し、ヴィル様と私は床に引かれたレッドカーペッドに足を踏み入れた。

出来るだけ格好よく歩かなきゃヴィル様の顔に泥を塗っちゃうからね。

胸を張り兵隊のように歩いていると、頭上から豪快に笑う声が聞こえた。

何事!?

「リュ!?」

笑い声が聞こえた方を向くと、白い頭に無精髭を生やした筋骨粒々のおじさんが玉座に座り腹を抱えて笑っていた。

「陛下、そのように笑われては失礼に当たります。」

隣に待機していた宰相らしき人物がとがめると、おじさんは涙目になりながらこちらに向き直った。

「いやー、すまんすまん。

ただ、白竜が見つかったと聞いていたのでなどんなやつかと思ったら...。」

何だもっと恐い人かと思ったら明るくて気さくな人見たいね。

「さて、久しいなヴィルいつぶりだ?」

まるで親友のように話す国王に戸惑いながら、ヴィル様を見ると、馴れたように返答をしていた。

「それじゃあヴィル、そいつが今回見つかった白竜の子供か?」

「あぁ、今は契約して私の使い魔としてフィーリル・フォン・クライストと名乗らせている。」

ヴィル様が私を紹介し、前に出すと見定めるように上から下まで睨まれた。

何よ、そんなに睨んでも怖がったりしてやらないわよ。

逆に睨み返すと、国王は楽しそうに微笑み自己紹介をはじめた。

「はじめましてだな。

私はこのシャンダルで国王をしているバルド・アークスだ。

よろしくたのむ。」

「リュ。」

とりあえずお辞儀すると、バルドは満足そうに頷きヴィル様に目を向けた。

「それで、今後の事だが町ではもう噂になってしまった事だし白竜はお前の使い魔としてお披露目する。」

「了解した。」

「言っておくが、今回の護衛の依頼もそいつが使い魔になったからって取り下げないからな!

あの子はお前意外護衛を許してくれんのだ。」

「かまわないが一つ訂正しておく、こいつはフィーリルだそいつじゃない。」

ヴィル様はバルドに訂正するように言うと、立ち上がり私を抱き抱えた。

「それはすまない今度からはフィーリル嬢と呼ばせて貰おう。」

バルドは楽しそうに笑った。

「それから、どうもギルドでは使い魔登録が出来ないらしいこちらで頼めるか?」

「あぁ、そうだな。

分かった、じゃあこのあと事務室の方に寄っていけ。」

「分かった。」

人通り話が終わるとヴィル様は一礼して私を抱えたまま部屋を出た。

部屋を出た後、先程の話にも出ていた事務室に登録を済ませ、明日の護衛対象でもあるお姫さまの元へ向かった。

またしても長い廊下を行くと白いきれいな扉の前で止まりヴィル様は少しだけ面倒くさそうな顔になり扉をノックした。

いよいよね、どんな敵でもどんとこいよ!

「リュ!」

気合を入れてヴィル様に掴まると、頭を撫でられた。

「リュ~。」

思わず気が抜けそうになるのを我慢しキッとまえを睨む、すると中から入室の許可が降りたためゆっくり入室した。

「失礼する。

今年もまた護衛を勤めるヴィルヘルム・フォン・クライストだ。」

ヴィル様が中に入ると、待ち構えていたように少女が飛び付いてきた。

「ヴィルヘルム様!」

「カトレア様!

いけません、そのように軽々しく男性に飛び付くなんて!」

「良いじゃない、ヴィルヘルム様はお忙しくてお会いするのは久しぶりなんだから。」

「ヴィルヘルム様も、いくら久しぶりだからといってカトレア様を惑わせるのはお止め下さい!」

「...。」

あまりの出来事に固まっていると、カトレアの侍女であろう人のヴィル様への注意に目を覚まし、あわてて同じように固まっているヴィル様の肩に乗り、抱きついている少女をひっぺがすと、ようやく私に気づいたのかカトレアとメイドが目を丸くした。

「リュ!」

「...。」

「...は、白竜..。」

威嚇しながらヴィル様に体を刷り寄せると、気がついたのか背中を撫でてくれた。

「リュ~。」

「失礼した。この白竜は今日私の使い魔になったパートナーのフィーリルだ。」

ヴィル様が背中を撫でながら紹介すると、目の前の少女は口元をひくつかせながら私を見下ろし挨拶してきた。

「初めまして、フィーリル様私はカトレア・アークス。

ヴィルヘルム様の婚約者ですわ。」

ヴィル様と腕組みをしながら言うと、ヴィル様は光の早さで否定した。

「そんな約束は交わしていない、勝手に作るな。」

「問題ありませんわ、いずれそうなりますもの。」

「そんな予定も無い。」

二人のやり取りにおいていかれていると、カトレアがヴィル様につめより始めた。

「リュ!」

すぐさまヴィル様の前に出ると、カトレアは驚いた後睨み付けてきた。

私がヴィル様を守るんだから、そうやすやすとキス出来ると思わないでよね!

威嚇しながらヴィル様の肩に乗るとようやく戻ってきたのか、カトレアの侍女が止めに入った。

「カトレア様、お止め下さい。

失礼いたしました。

この方は私の主、罰は私がなんでもお受け致しますのでどうかそのお怒りをお沈め下さい。」

今回も読んでいただきありがとうございます。

次回も読んでいただけたら嬉しいです。

よろしくお願いします。

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