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憧れのフレンチ

フロントで受付をして部屋に行くと、そこはなんとも豪華な客室が広がっていた。

「リュー!」

鞄から飛び出して走り回ると、柔らかいカーペットに爪を引っかけ転び、顔面から倒れた。

いくら下が柔らかいカーペットだと言っても顔面から倒れれば痛かった。

「リュー。」

涙目でヴィル様にすり寄ればヴィル様は私を抱き上げ頭を撫でてくれる。

「そういえば、契約してから一度も手入れをしていなかったな。」

竜の爪を見ながら言うと、腰のベルトから小型のナイフを取り出し、引っかけていた爪を切って走りやすくしてくれた。

「リュー!」

爪が短くなり走りやすくなると、先程と同じようにパタパタと走り回った。

走るのに飽きると今度はコロコロと転がり、それも飽きるとヴィル様の膝に登り昼寝をする。

その間、ヴィル様は読書をしながら紅茶を飲み背を撫でてくれた。

気持ちいい。

時間を気にせずのんびり過ごしていると、呼鈴が鳴った。

「誰だ?」

ヴィル様が声を掛けるが返事か無いため、私はベッドの下に隠れ、ヴィル様は警戒しながらドアを開けた。

そこには、さっきまで逃げ回っていたフィンの姿があった。

「ヴィルさん、さっきはすみませんでした。

俺、人前だとどうにも性格が変わってしまって。」

深々と頭を下げるフィンに安心しつつ、見守り続け正座したまま事の経緯を聞くと、どうやら近所の子供に馬鹿にされたため頭に血が上ってしまったらしい。

「そうか、だが術式を解くのはやりすぎだ。

あの術式を再構成して解かれないように変更するためには早くて丸一日かかる。

しかも、術式を編むには高度な技術を必要とする。」

ヴィル様は諭すように叱りつけると改めて自分のしたことを理解したフィンはショックから頭を垂れた。

「自分のしたことを理解したなら先に謝るべき相手がいるんじゃないのか?」

「... はい。

俺、ガットじぃの所行ってきます。」

立ち上がったフィンは力強く部屋を飛び出して行ってしまった。

大丈夫かなぁ。

心配しながらベッドから出ると、ヴィル様は抱き上げ一言「大丈夫だ。」と言った。

それから、本を読む片手間に遊んでもらいながら時間を潰していると、フロントで受付をしていた女性が呼びに来た。

「ヴィルヘルム様、ガット様からお食事をご一緒にと言伝を預かっております。

もちろん、フィーリル様もご一緒にだそうです。」

「分かった。」

一言返事をすると、女性が一礼して部屋を出た。

ヴィル様は私を抱き上げ、リボンの端に小さなバッチをつけた。

「リュ?」

シャラシャラと音を立てながら体を回すが見えない。

まるで自分の尻尾を追いかけてぐるぐる回る犬のようになりながら見ようと頑張っていると、黙って見ていたヴィル様が吹き出した。

「プッ!」

後ろを向いたまま肩を揺らすヴィル様を見ると、バッチを見る気力が失せたため、ヴィル様が落ち着くまでその場で座りやっと落ち着いたのか、私を抱き上げて部屋をでた。

階段を上がり大きな扉の前でバッチを見せると、兵隊さんが扉を開けてくれた。

「失礼する。」

一言声を掛けると、待っていたと言うようにガットおじさんが立ち上がる。

中では同じパーティーの仲間が座り、その他にメイドのお姉さんが4人程待機していた。

「おぉ、まぁ座れ。

本来ならここは貴族のお客が来たときに使う部屋だが、久しぶりに帰って来たんだ。

今日は特別に解放した。」

ガットおじさんがベルを鳴らして座ると、私はテーブルの上に座らされた。

「リュ?」

「そういえば、フィーリル嬢は何を食べるんだ?」

「普通に何でも食べるが、基本的にはアプの実が好きだな。」

「アプの実か、それなら果物はアプの実を入れて貰えるか。」

隣にいたメイドさんに言うと、メイドさんは一礼し部屋から出て厨房に向かって行った。

「それにしても、こんなに部屋が豪華やとなんや期待してまうなぁ。」

「おう、味も見た目も期待して良いぞ。

今日は特別だからな。」

「リュー!」

ばんざいをしながら喜びを表すと、オリビアは笑いながら頭を撫でてくれた。

そうして、世間話をしていると次々と料理が運ばれ私の前にも美味しそうな生魚のオードブルが運ばれて来た。

「リュー!」

フレンチ料理だー!

一度食べたかったんだよね。

マナーは竜だから多目に見てもらう事にして、いただきます!

さっそく切り分けようと、脇に置いてあるナイフとフォークを持つが、竜の手は鱗と子供特有のプニプニした手のため、持とうとすると、手から滑り落ちて床に落ちてしまう。

「リュ...。」

余りのショックに固まり、どうにかして食べようと頑張るが両手で持っても爪が引っ掛かり上手く持てなかった。

当然目の前の主であるヴィル様やオリビア、アルジークくんアリシアは話をしながらどんどん食べていき、スープへと移りつつあった。

何てこった、目の前に美味しそうな料理が並んでいるのに食べられないなんて...。

ショックに呆然と座っていると、脇で落ち込んでいるのに気付いたのかヴィル様が無言で切り分け、口の前に運んでくれた。

「リュー。」

感動の余りにフォークにかぷつくと、ヴィル様は真顔で運び続けた。

デザートのアプの実を食べ終えてミルクが出されると、ヴィル様達は紅茶を飲みながら今後の予定を立てていた。

「とりあえず、明日国王様に報告後フィーリル嬢の申請をしてこい。

それと、明後日から祭りで顔を出す姫様の護衛依頼が来ているからな。」

「えぇー、あの姫さんの護衛ー。」

「何だ、文句でもあるのか?」

「せやかて、あの姫さんヴィル目当てのわがままお姫さんやで。

こっちの忠告一切聞かへんし、嫌やー。」

ん?

「まぁそう言うな、お姫様もあれで結構お忙しい方だからな、遊ぶ時間がなくてストレスが貯まってるんだろうよ。」

待て待て、今何て言った?

ヴィル様目当てとか言ったか?

「そないなこと言われてもなー。

どないする、ヴィル。」

オリビアがふると、ヴィル様はため息を付いてから仕方ないと言うように頷いた。

「それは、引き受けてくれるのか?」

「あぁ。」

引き受けるんですか!?

あんなに嫌そうなのに。

私、ヴィル様があんなに嫌そうにしてるの初めて見ましたよ!

「ほんまか!?」

「仕方ないだろ、あの方の護衛は並のやつらじゃ出来ないからな。」

「せやけどー。」

「諦めなさい、オリビア。

これは仕方の無いことよ。」

アリシアさんがオリビアの肩に手を置いて言うと、オリビアも諦めたようにため息を付いた。

これは大変だ、そのお姫様からヴィル様をお守りしなければ。

密かに気合いを入れ、ヴィル様を守る誓いを立てながら、その後一人で計画を立てるのだった。

最後まで読んでいただきありがとうございます。

この話は実は前に上げたものを上げ直しているもので、どんどん色んな人に見てもらいたいと思っています。

これからもよろしくお願いします。

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