私がパーティーに入った理由
私の名前は水澤 風香ごく普通の家庭に産まれるはずだった。
そのはずだったのに...何じゃこりゃー!
白い鱗にコウモリのような羽、小さな牙に立派な尻尾これ、どう見てもドラゴンじゃね。
やりやがったな神様め私は地球に産まれる予定だったろうがー!
「リュー!」
怒りに任せて暴れていると、何かの鳴き声が聞こえたので、暴れるのを中止して、耳を澄ます。
だが、いつまでたっても先ほどの鳴き声は聞こえず、首を傾げた。
「リュー?」
すると、自分の場所から鳴き声が響くと、やっと自分の鳴き声だと分かった。
「リュー?」
これが私の鳴き声かよ。
変な鳴き声だなぁ。
そんなことを考えていると、ふいに、自分のお腹がなった。
キュルルルル。
「リューン。」
お腹すいたなー。
ドラゴンの子供?ってことは親がいるはずだよね。
呼べば来るかな。
「リューン、リューン。」
何度も呼ぶと、近くの茂みがガサガサと音がたった。
もしかしてお母さんかな。
「リューン。」
もう一度鳴くと、茂みから黒く太い大蛇が現れた。
え、私ドラゴンだよね、どうしようこれ、まさかヤバイ感じ。
恐怖に固まっていると、大蛇は舌をチョロチョロさせながら私の周りを囲み、逃げられないようにだんだん間隔を狭くしていく。
本当にヤバそう。
どうしよう、逃げ道が無い。
わたわたしている間に大蛇はどんどん絞めようと迫ってくる。
逃げ道を探していると、背中で何かが動いた。
あ、そうだ!!
子供でもドラゴンだし、羽根があるってことは飛べるんじゃない!?
必死に羽根を動かし懸命に飛ぼうとしていると、耳元で子供の様な声がした。
「手伝ってあげる。」
「リュ?」
すると、何故か下から強風が吹き上げドラゴンの体を持ち上げ、あっという間に森を上から見下ろせる高さに到達した。
「リュー!」
直後、風は止み一気に下まで落ちていく。
後少しで地面に激突するところで、固くてしっかりした何かにキャッチされた。
「リュ?」
「大丈夫か?」
みあげると、全身黒い服を着た整った顔の男性が助けてくれていた。
かっこいい...って、そうじゃなかった。
無事でーす、ありがとうございました。
「リュー。」
無事を伝えるように鳴くと、男性は良かったとでも言うように微笑んだ。
「リュ!」
まるで、恋人に向ける様な笑顔を見たとたん心臓がドキリと跳ね、一瞬で顔が熱くなる。
「リュ。」
我に帰って、頭を振ると男性は不思議な者を見るように首を傾げた。
改めて、地面に下ろしてもらい男性を足元から見上げると黒い髪は光が反射して艶々と輝き、黒にも見える紺色の瞳は中で白い光が浮遊していて時折光り、着ている服は全て黒で統一されていた。
「リュー...。」
綺麗な目だなぁ。
男性をガン見しながら固まっていると、背後の森からうさぎの様な小動物が逃げるように走り去ると、途端に周囲の温度が下がった。
再び体が硬直し呼吸が浅くなると、知らぬ間にか細い鳴き声が零れた。
「リュー。」
すると、男性は再びドラゴンの体を抱き上げ、指笛を吹くと全力で走り出した。
次々と景色が変わって行き、まるで、ジェットコースターに乗っているようだった。
しばらくして、気が付くと広い草原に飛び出していた。
「リュ。」
そこには狩人の女性が立っており、その隣には鎧を着た少年とおっとりとした表現が似合う金髪の女性が杖を持って待機していた。
三人がこちらに気づき、駆け寄ろうとしていたが止まる。
全員の視線が森に注がれ、異様な殺気が放たれると武器を抜き、素早く陣形をとった。
ものすごい集中力で森を睨み、とうとう森から先ほどの蛇が姿を表し、同時に威嚇をしてきた。
「シャー!」
「な、ただのポイズンスネークじゃねぇ!!」
「体が黒い上に大きい!」
「おそらく、魔獣の一種だろうな。」
「リュー...。」
張りつめた空気の中でか細い鳴き声が聞こえると、黒一色の男性が背中を撫でて、「大丈夫だ。」と言ってくれた。
「どうしたの、その子。」
「拾った、こいつから逃げているようだったから。」
「成る程ね。」
全身黒一色の男性と狩人の女性が警戒しながら会話を交わし、口から紫色の毒らしき液体を出す大蛇に飛び込んだ。
「リュ!」
黒の男性は腰の剣を抜き、大蛇の顎から貫くと狩人の女性に目を向けた。
すると、女性はいつの間にか構えていた弓に光る粒子を乗せて放つと、飛び出した矢は大蛇の頭を撃ち抜いた。
「キシャー。」
大蛇は苦しそうにのたうち回ると、そのうちピクリとも動かなくなった。
「リ..リュー。」
何..これ...。
今何が起きたの?
「無事か?」
大蛇から剣を引き抜きながら茫然とする私に声をかける。
「...。」
何も言えずただその光景を眺めていると、ふいに男性はドラゴンの体を持ち上げ撫でまわし始めた。
「リュ?」
あわててもがくが男性は一向に止めようとしない。
はーなーしーてー!
バタバタと暴れる私に男性は呆れたように溜め息をついた。
「無事なら無事と言え。」
無事です無事ですからはーなーしーてー!
「リュー。」
しばらく暴れた後、私を地面に下ろして立ち上がり歩き出した。
どこ行くんですか?
「リュー?」
私も着いていくと、男性は振り返り方膝をついて向き合う形になった。
「お前は巣に帰れ、きっと両親が心配してお前を探し回っているぞ。」
両親?そんなのこっちに来てから見てないですよ?
「...リュ?」
小さく首を傾げると、男性は驚いた様に目を見開き悲しげに笑った。
「そうか、お前両親から捨てられたんだなきっと...。」
捨てられた?
どうして?
またも首を傾げる私を男性は抱き上げると、私の目を見た。
「紹介が遅れたな、俺はヴィルヘルム・フォン・クライストだ、良ければ俺達と来るか?」
何だか分からないけど自己紹介してるし、この人に付いていけば安心だし良いか。
「リュ!」
笑顔で手を上げると、ヴィル様は優しく笑い、私の頭を撫でた。
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