レガシィ リュウの伝承49大いなる好奇心 へクマ
竜の巣の最深部 心臓部にそれは在った
長大な横洞を抜けた先に
隔壁がしっかりと閉じている。
やはり此処へ辿り着く間の戦闘は
容易なものであった。
竜側に此方を殲滅する意思が無いかのように
平凡で在り来たりな攻撃。
これは突入部隊全体の戦闘能力が
向上しているせいも有るのだが
それにしても歯応えが無いのだ。
彼程こちらの進化に
対応して来た敵とは考えられない。
これは敵、竜側の此方へ対しての意識が
変化したものと考えて間違い無いだろう。
その意図は完全には読み切れては
いないのだが…。
『見ろ慧人、隔壁が開いて行くぞ。』
サレヒュトが巨大な隔壁シャッターを
見上げながら声を上げる。
ゆっくりと開く隔壁シャッターは
そのサイズ感が狂ってしまう程大きい。
ゆっくり感じるのは
大きいが故で実際には秒間30cmは
開口している。
天井までの高さは50mは有りそうだ。
『自分が先行します。
サレフは後へ続いて下さい。
レイラとエルセル隊は予定通り
隔壁手前で待機。』
『了解、此処からが本番だぞ
気を緩めるなよ。』
『慧人気を付けて。
退路はこちらに任せて
後始末を早く。』
隔壁が開ききる前に最終ルームへと
進入して行く。
巨大な隔壁を潜った先は
壁面全体が青白く光るサイケな空間。
そこは未来と言い表わすべきか
或いは悪魔の巣と言うべきか。
美しくもあり また
不気味にも感じる異界。
広大なルームの中央には
大きく盛り上がる巨大な山?!。
いくつものパイプラインが
天井の中央に穿つ穴へと伸びている。
これは生き物の心臓にも見てとれる。
そんな機械と生物が融合した風な
ユニット。
よくみるとユニット表面には
人の顔が無数に浮かんでいる。
慧人がその顔を観察する為
ネイ シーティス スプレマシーの
複合センサーの感度倍率を上げる。
『人の顔の形を模したオブジェでは無い。
あれは胴体を埋め込まれ頭だけ
表面に出しているのか。
創り物では無く生きた人間を
そのまま埋め込んでいる?!。』
『ソノトウリ。
ヨウコソ、リュウジンノ オウ
リュウノ ケイトウヲ ウケツギシ モノ。』
慧人の脳の聴覚野へ直接語りかける声。
『俺の事を知っているようだな。
声の主人、貴方の名は?。』
『ワレノ ナハ へクマ。
ヒトツノ コウキシンヨリ チシキヲ
サグリダシタモノ。』
竜の巣 最深部に据えられた…
いや、待ち構えていたモノ
それはへクマと名乗る合成物。
生物なのか機械なのか
見た目では判断に難しい。
しかし、彼は自身の
好奇心から知識を獲得したと
慧人へ告げた。
へクマ それは何を望む




