レガシィ リュウの伝承44 AAイジャーバタン ウフラと言う集団
アトラクション?いや何やらおかしい
『まだディナーまでは時間があるな。』
慧人がエルニにディナーまで
如何過ごすか尋ねる。
『ねぇあそこでアクションヒーローの
ショーをやってるみたい。
見物の人だかりも出来てるし
面白そうだよ。行ってみない?。』
エルニが慧人の腕を引き
人だかりの中を潜って行く。
人垣から抜け出し見物の先頭へ出ると
怪人が観客へ向け悪の口上を
まくし立てている最中だった。
『貴様等 良く集まったな。
歴史的瞬間に立ち会える幸福を満喫せよ。
我々AAイジャーバタン ウフラの初仕事
そして新しく書き換えられる世界の
第一歩になるのだ。
心して今この時を噛み締めるがいい。
これから世界は確変する。必ずな。
いいか、貴様ら良く聞け…………。』
首領と思しき者の口上は
政治家の演説並、もしくは校長の朝礼並の長さで
続けられている。
『ねぇ私化粧室行って来たい。
ゴメンね少し待ってて。』
『演説が長くなりそうだし丁度良い。
此処で待ってるから。』
『うん、直ぐ戻るからね。』
『ああ大丈夫だ問題無い。』
エルニが人山を掻き分け
会場から抜け出して行く。
その行動を目に止めていた悪の首領が
何やら首の動きと目配せで
配下の戦闘員に指示を出した。
『しかしあのコスチューム良く出来てるな。』
『随分金かけてるな。戦闘員の制服も
軍服でリアルな仕上がりだ。
こりゃ怪人も期待出来そうだ。』
『ああ、それとアクションが派手なら
言う事無しだな。
俺ファンになっちまうかも。』
『それと何か鬼気迫るものがあるな。
小さい子は泣いてる子もいるぞ。
ビビってる奴らも結構いるな。
ショーなんだから楽しまないと損だぞ全く。』
首領のセリフ回しと統制の取れた戦闘員の
動きに関心する観客が口々に感想をもらす。
どうやらコスチュームもマニアからしても
良い出来栄えらしい。
子供がリアル過ぎて泣き出してしまった家族は
人垣の手前から避けるように奥へ引っ込んで
しまった。
『貴様らに良い物を見せてやろう。
その娘を此処へ連れて来い。』
戦闘員に連れて来られた娘とは
エルニの事だった。
『いやーん、捕まっちゃった〜〜。』
『亜挫主刃
見せしめだ、やれ。』
首領が怪人を呼び寄せ指令を出した。
頭に三本の貧弱なツノを持つ
顔面の形相のみ恐ろしい怪物。
色合いも赤茶色?クロゴキっぽくて
なんだか気持ち悪い。
しかし背丈だけは2mと無駄に高かったのだ。
『グガガガ…
おぉ前らわぁこの小娘の価値を分かって
ねぇ〜なぁグガガ。
コイツを洗脳して我等の
一員にしてやるぅのだぁ。
手始めにこうだぁグガガッ。』
怪人 亜挫主刃がエルニの服を引き裂いた。
『いやぁぁぁぁぁっ!。
やめてぇーーーっ!。
慧人助けてぇーーーっ!。
小箱を使って早くっ!。』
慧人はエルニの叫びのままに
先程、副賞として貰った小箱を取り出し
包装を引き千切ると中から紙切れを
引っ張り出し開いてみた。
そこには、"龍真装を使って
コイツらを懲らしめて"と記されていた。
慧人はシータユニットを取り出し叫んだ。
『龍真変!!』
慧人の服が一瞬にして分解され
龍神を模した姿へと変身した。
深い緋色の流麗なフォルム
ヒーローいや何方かと言えば
ダークヒーローっぽいその出で立ち。
変身と共に跳躍しエルニをかばう位置へと
滑り込む。
どこからともなく取り出したジャケットを
エルニの艶やかな下着姿が目立たぬように
羽織らせた刹那
周りの戦闘員を片腕を振るう
水平薙にて
無力化した。
『き、き、き、貴様が噂に聞く
時空干渉監査官の龍神慧人なのかーっ!。』
亜挫主刃が大げさなモーションで
慄いて《おののいて》みせる。
『時空干渉監査官?!どう言う事だ。』
慧人が腕に抱くエルニに小声で呟く。
『とりあえず今はそう言う事にしといて。
気に入らなかったら
また新しい肩書き考えるから。
結構カッコ良い響きでしょ?。』
肩書きの響きと言うより
そんな肩書きが有ったのかと思った
慧人だったが呼び方については
肯定する事はやぶさかでもなかった。
『了解した。
此奴等を黙らせる。
しばらく大人しくしていてくれ。』
『分かった。
フフ、慧人カッコ良いところ見せてね。』
エルニが慧人の首に腕を回し
頬にキスをする。
慧人はそのままエルニを
横抱き《お姫様抱っこ》にし
瞬間跳躍サマーソルトキックを
亜挫主刃のアゴの先端へヒットさせた。
亜挫主刃は5m後方へ吹き飛び
暫し昏倒する。
『使えん奴めっ!。
こうなったら奥の手だ
HATE《憎悪起動型外骨格》を召喚しろーっ!。』
AAイジャーバタン ウフラの首領が
亜挫主刃の頭を足先で小突きながら
大声を上げて何やら恐ろし気な物を
召喚しようとしたのであった。
AAイジャーバタン ウフラと名乗る集団はいったい…




