レガシィ リュウの伝承38 エルと言う存在
エルニが淡々語り出す
『先ずは何からお話ししましょうか。』
エルニは柔らかい笑みの表情を
崩す事無く全員へ目配せするように
一瞥する。
『エルニさん、
自分の良く知る人物にそっくりなんですが
この事は明かして貰えますか?。』
慧人が一番気になっている事を
率先して質問する。
『エルニと呼び捨ててくれて
構いませんよ。
そうですね、それでは
エルと名を冠する者について
お話ししましょう。』
エルニは一口紅茶に口を付け
香りを楽しむと
続けて話し出した。
『貴方の元存在時空のエルは
タンエルントですね。
それとミゥエルラも居ましたか。
タンエルントは時空管理者に
なります。
現世の方も彼の担当です。
ミゥエルラの方はサポートに
なります。
管理者といっても特別な権限を
持つ訳では有りません。
私に情報提供する事が主な役割。
タンエルントの目の届かない
細かな所を重要人物そば付けとして
のミゥエルラが監視、サポートを
行います。
つまり、身近にエルの名を冠する者が
多く存在する人物はその時空間では
重要人物と言う位置付けに
なるのです。
エルと名を冠する者の見た目が
そっくりな点ですが
同じ情報により成り立つ存在だからです。
そして役割もほぼ同じ。
同じ器に個性を新たに生成して
存在させています。
このエル達が主に仕える人物
種族は龍人の一族に当たります。
つまり、慧人
貴方は龍人族のエルが仕える中でも
最重要かつ最高位に相当します。』
ここまでを聞き慧人は
ふと思う。
今身近にも一人エルがいた事に。
『そう言えば
レイラもエルの一員では
ないですか?。
姿もかなり似ていますし。
雰囲気も何処と無く…。』
『私か?!。
自分では自覚は無いのだが。
それに大層な役割を与えられてる
訳でも無い。
しかし、見た目に関しては
納得せざるを得ないな。
だが私はこれでも
淑女なのだぞ
そちらの御仁のような
男らしさは持ち合わせていない
と、思う。』
レイラが少し恥ずかしそうに
自己分析を言い終えると
エルニも表情を崩し
それに答えはじめた。
『エルは特別こちらから仕事を
指定されたり束縛を受けるような事は
ありません。
いわばモニターのような存在なので
そこに居るだけで役割は果たしているのです。
重要人物が近くに現れると
自然と側へ入り込む
スキルは持ち合わせています。
恋愛的感情に至ってしまうのは
遺伝子を重要人物と結ぶ事を
最初のエル設立の時点で
要項目として組み込まれている
せいでもあります。
それと
私は男ではありませんよ。
決まった性別を持っておりません。
近くに素晴らしい男性がいれば
女性にその逆なら男性に
切り替えが可能です。
今は慧人が近くに存在するので
女性になっていますね。
自分の感情も左右する訳ですが。』
エルニが慧人に
今迄とは違う熱い視線を送る!?。
最重要人物が目の前に現れては
エルの本懐とも言うべき
本能が発現されても
然るべきだろう。
するとネイは先程までの
出来るメイドから一変
守護者の雰囲気を滲ませて
牽制する。
『エルニ様、
慧人様には私が仕えておりますので
どうかご自重下さいませ。
それに夏様とレイラ様も
黙ってはいらっしゃらないと思います。』
ネイはそこまで言い終えると
引き締まった表情を崩し
瞼を閉じると席に着いた。
夏は珍しく確保出来た慧人の隣で
慧人の腕を取りエルニに無言の
抵抗の視線をおくった。
『つまり、
私が慧人に恋心を抱いても
何の不思議も無い。
そうそれは必然だったからで
慧人の容姿に舞い上がった訳ではない。
そうだ、これは仕方のない事だったのだ。
そしてこれからは公然と
慧人の側にいても構わないと言う事
でもある訳だな。
なら仕方ないな。
うん仕方ない。』
レイラはそこまで言い終えると
大きく頷き納得の表情を作り
慧人にぴったりと寄り添ったのだった。
この時周辺にレヴィアが居ない事に
慧人以外は気が付いていなかった。
これからもエルシステム搭載者は
登場するのだろう な




