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リュウのケイトウ レガシィ  作者: きでひら弓
32/53

レガシィ リュウの伝承32コーヒーの芳香

キャンプサイトに広がる子供達の楽しげな声

ひとしきり水遊びに興じ

はしゃぎ疲れて

木陰で微睡み

ひんやりとした心地よい風に

木漏れ日を仰ぎ見

子供達の笑い声を

BGMに少しまた瞼を閉じ

今このひと時を満喫する。


人は何処へ行こうとも

こんな時間を愛し

幸福を実感するものなのかもしれない。


それを感じている時は

漫然と受け止めていて

この一瞬が一度きりだという事を

考えたりはしない。


そこから切り離された時

ああ、あの時は最高だった

などと振り返るものだろう。


無限に続く事などあり得ないし

かと言って訪れる時々を

100%最高に昇華出来るはずも無い。


しかし、密度の濃い時間も

何気なく過ぎてしまった時間も

全ては有意義な事だったのかもしれないと

後々思える人はやはり結果的に

時間を無駄にしなかったと

言えるのかもしれない。


それは、その事に

気付いた者のみが

得られる無形の財産。


昼食が済み

子供達はまた水遊びに行く

慧人はネイに頼んで

煎りたて挽きたての

コーヒーを淹れてもらう。


ネイが慧人の為に

こだわって選んだ豆を

最高のローストへ仕上げて行く。


香ばしいコーヒーの

芳香が辺りに漂った頃

サレヒュトがその香りに

誘われて慧人へ

尋ねた。


『なんか物凄く良い匂いがするな。

なんだ?新しい酒でも作ってるのか?。』


『コーヒーと言う飲み物を

ネイに作ってもらっています。

お酒ではありませんが

とても美味しいですよ。

エールが好きなサレフなら

きっと気に入ります。

どうです?。飲んでみませんか?。』


『良いね。

俺も貰うよ。大人の飲み物なんだろ?。

この香ばしさは。』


『そうですね。

深い香りとしっかりした苦味

覚えたら病み付きになりますよ。』


慧人が簡単にコーヒーの

講釈を終えると

ネイが二人分の淹れたて

を持って来てくれる。


『どうぞ、お二人とも。』


ネイは一流メイドの所作で

柔らかく二人の前に

カップを据えた。


サレヒュトがカップへ

口を付ける。


『ほうぅ。

素晴らしい香りだな。

深い苦味が嫌味でない。』


慧人も一口。


『美味い。ネイありがとう。』


ネイはニッコリ微笑むと

深くお辞儀をする。


『サレフ、砂糖やミルクを入れても

楽しめますよ。』


慧人が砂糖とミルクのポットを

サレヒュトへ勧める。


『いや、俺はそのままがいいな。

この味を崩さない方が良い。』


『そうですか。

自分も何時もブラックで

飲んでいます。

酸味を抑えた豆なので

このままが一番美味いと思います。』


(慧人のヤツ俺の雰囲気から

抱える話の重要性を察知したのか。

こんな席を用意するとはな。

そしてこのコーヒーの香りと味…。

話し出すにはうってつけって訳か。)


『なるほどな。ブラックか…。


慧人、皆に話す前に

先に聞いて貰いたい事が有るんだ。』


サレヒュトの表情が真剣なものに変わる。

本当は夜、皆に話すつもりだったのだが

折角のこの席、

慧人には先に知らせて置こうと

コーヒーの香りと味が

促させたのかもしれない。


慧人がもう一口カップに口を付けて

サレヒュトへ向き直る。


『お聞きしましょう。』


重要な話しが

サレヒュトの口からされるのは

真剣さでハッキリ分かる。

慧人も気持ちを据え

体の向きを変えて

聞く体制に入った。


サレヒュトは慧人の目を見据えると

前置き無しに本題へ入った。


『王都からの命令で

竜の巣を此方から攻撃する。』


コーヒーの味と香りは

サレヒュトの口から重要な案件を紡ぎ出させた。

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