レガシィ リュウの伝承21
瓦礫と化した城下街の周りにはさらなる敵が
レイラがイサレガのカメラアイを
最大望遠にズームアップし
王都中心部の王城の状態を
確認する。
王城も城下街同様無残な姿の
瓦礫の山と化していた。
不意に慧人機
ネイ シーティス スプレマシーが
レイラの機体へ
マニュピレーターにより
接触 回線を開く。
『レイラ、無線を使わないでくれ。
怪しい機影を幾つか捉えている。』
レイラは驚いてモニターを凝視する。
が、確認出来る機影は無い。
だがここで慌てず対処する。
『了解です。
でしたら私に考えがあります。
追て来てもらえますか。』
『了解。
接触状態を維持したまま
続きます。』
(ネイ、フォーメーションを固定。
ステルス フィールド展開。
レイラ機も範囲内へ。)
(イエス、マスター。)
ステルス フィールドは
ゲル化フィールドを大きく展開し
そこへプロジェクションマッピングを
投影する事により
ステルス化する物。
これはステルス機能を持たぬ
レイラ機をも包み
外部より視認出来なくする為だ。
レイラは王都から離れ
北側に連なる山脈へ向かう。
『慧人、この方向 周辺に
怪し機影は存在しますか?。』
『この周辺には存在しません。』
『了解です。
第六非常門より帰投します。』
山の裾野 原生林の中に
少しだけ切り拓いた部分があり
そこへ着陸する。
第六非常門は有事の際に
王城より脱出する為作られた物で
いわゆる秘密の抜け穴に
なっている。
開口の大きさは
甲冑が立ったまま行動可能な
高さと幅を有している。
門の認証システムは
王家の者と従者のみ登録されており
それ以外の者に開閉する事は出来ない。
門をくぐると横洞になっており
路面にはリニアレールが敷かれ
これにより洞内を高速で移動する事が
可能となっている。
リニア台車のパレットへ
ATEを寝かせた状態で固定し
王城地下軍事秘密基地へと向かう。
リニア台車が基地へ到着すると
直ぐに一人の関係者が
駆け寄って来た。
『レイラ様っ!。
よくご無事でお戻り下さいました。』
『ヒルデっ!。無事でしたかっ!。』
二人はしっかりハグをして
お互いの無事を確かめ合う。
ヒルデはレイラのおそば役の他
武道の師範で有り
また甲冑関係の教官と技術者も
努めていた。
『レイラ様、そちらの殿方は?。』
『ニュオル バサートより
護衛して下さった慧人殿です。』
『慧人と申します。』
慧人が一言だけ挨拶したところで
直ぐにヒルデは慧人の手を取り
深く礼を述べる。
『ありがとうございます。
姫様をお守り頂き、誠に
感謝致します。
そしてどうかこれからも
お守り下さい。
姫様っ!。
直ぐにここから逃れて下さいませっ!。』
慧人への感謝の言葉も束の間の
ヒルデはレイラへ切迫詰まった表情で
訴える。
『どうしたと言うのです?。
状況をまず説明なさい。』
『申し訳ございません。
手短かに説明致します。
よくお聞き下さいませ。』
ヒルデは慌てた姿勢を正し
改めて畏る(かしこまる)様に
話し出した。
『ニュオル バサートからの
救援通信より一刻程して
城下街へ地下より竜が出現
同時、王城上空よりも竜が
降下して参りました。
この多数の竜の襲撃により
数刻も保たずに王都は
壊滅したのでございます。
緊急事態にアルマ様ニーナ様
(第一、第二王女)を
脱出させる為の時間稼ぎに
国王陛下も大型竜の討伐へ
出撃されたのですが
生態エネルギー砲を受け
瀕死の状態で只今
集中治療管の中で養生中で
ございます。
その上この期を伺って
王城を攻め落とそうと
所属不明の甲冑が数多く
城下街周辺の原生林に
潜伏しているのを先程発見。
今にも襲って来ようと
しているのです。
ですから一刻も早く
ここから脱出なさって下さい。
お願い致します。』
ヒルデがレイラへ
状況説明と脱出を促している間に
慧人はこっそりとイサレガの
改修を始める。
(ネイ、イサレガの改修を
ルームにて行なう。
ダミーを台車に投影後
ルームにイサレガ収容。
メインシステムと
サブシステムを交換。
マニューバ スラスター交換。)
ルームとは
ネイ シーティス スプレマシー後方外殻へ
接続された異次元空間(亜空間)である。
お馴染みの もんドラい の異次元ポケットに
似ている。
(イエス マスター。
ルーム内時間を100倍に加速
作業を外時間で3分で終了します。)
(了解。頼んだぞ。)
その頃レイラは
『分かりました。
一目、お父様へ面会させて下さい。』
『レイラ様、こちらへ。
慧人様もいらして下さい。』
『はい。
レイラ、これを。』
慧人はヒルデに頷き
レイラには錠剤を手渡す。
『口へ含んでみてくれ。
パイロット用の栄養補給食だ。
結構美味しいぞ。』
慧人はパイロット用栄養補給食などと言い
ネイAI型コントロールATEシステム
パイロット素養効果発動検出試薬を
飲ませる。(通称、試薬。)
まあ、栄養価が高いのは本当の事なのだが。
これを服用する事により
ネイAI型システムのコクピットでも
素養が発現すれば操縦が可能になる。
旧システムでは適性値3以上必要であったが
今では1.5以上で操縦可能。
しかし、適性値は高い程システムの
親和性が高く、その為どの程度
使いこなせるかにも関わって来るのである。
『お菓子の様な物ですか?。
失礼して 頂きます。
あら、美味しい!。
焼き菓子の様な木苺の様な。
慧人とても美味しいです。
宜しければもう一つ頂けます?。』
レイラが恥ずかしそうに
そーっと慧人へ手を出す。
『どうぞ。
ヒルデさんも如何です?。』
ヒルデに服用させる意味は
全くないのだが
疎外感を持たせない為に
止む終えず与える慧人。
『ならば失礼して。頂きます。
あら、本当に美味しいわね。』
そんな事をしているうちに
救護室の扉の前。
『失礼いたします。』
ノックと共にヒルデが
扉を開ける。
室内には2m長のシリンダー状機器が
一台、横たわっている。
その覗き窓へ近づくと
一人の初老の男性の顔が確認出来た。
『お父様っ!。』
レイラが話し掛ける。
中の男性、ガセア国王と思われる人物は
身じろぎひとつしない。
しかし、シリンダー脇のモニターへ
文字が映し出された。
『レイラか。
無事でなにより。
直ぐにここから脱出しなさい。
事態は切迫している。
早く。
私はこの有り様だ
そう長くは持つまい。
そちらの武人
レイラを頼む。』
国王はそれだけ告げると
息を引き取る様に
目を閉じた。
『お父様…。
最後のお言い付け守ります。』
レイラは瞼を閉じ
暫し哀悼の意を捧げる。
静かに瞼を開くと
慧人へと振り返った。
『慧人、出発しましょう。』
『ああ!。
ヒルデさんは行かないのですか?。』
『私は陛下を見守る者として
ここを離れる訳には参りません。
私には構わず行って下さい。
そしてレイラ様を
どうかよろしくお願い致します。』
『分かりました。
行こうレイラ。』
二人は格納庫へ
歩き出した。
二人は無事、脱出出来るのか?!。




