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真面目ホラー

ひき逃げ犯は

作者: 七宝

勢いで書いたので誤字脱字適当な設定その他もろもろ変なところがあるかもしれません。

 寒い冬の夜だった。俺は飲み会を終えて家に帰る途中に、腹が減ったのでコンビニでおにぎりを買った。最近毎日飲みまくってるから頭痛い⋯⋯


 そして家の車庫に車を停めて、車を出ようとしたが、寒かったので車で食べてから出ることにした。


 以前はエンジン音がものすごくて、近所迷惑になると思いこんなことはしなかったが、今はエンジン音のしない車になっているので、安心だ。


 パクパク、ムシャムシャ


 ん?


 あれは裏の家の祥平君じゃないか。小学生がこんな夜中に出歩くなんて物騒だな。


 パクパク、ムシャムシャ


 うん、たらこバター醤油は最強だな


 ドンッ


 え?


 ふと顔を上げた。


 「ぎゃ!!」


 なんと、ボンネットに祥平君が乗っていたのだ。そして、まじまじと俺の顔を見て、そのまま上に登っていった。


 えっ。


 トントントン


 屋根から音が聞こえる。


 なんで俺の車に乗るんだよ、しかも屋根に。人の家の子でも、叱ってあげねば!

 俺は車から降りて屋根を見上げた。


 しかし、そこに祥平君はいなかった。


 え⋯⋯もしかして


 ちょっと怖くなったので、そのまま車の中から祥平君の家に電話してみた。


「もしもし、祥平君なんですけど」


「⋯⋯今は誰とも話したくありません」ブチッ


 切られた。


 なんなの一体。腹立つな。自分の息子が迷惑掛けてるの知らんのか、まったく。


 俺は食事を再開した。


 パクパク、ムシャムシャ


 うん、新発売の卵かけご飯おにぎりも美味い! 卵かけご飯と味付け海苔の相性は最強だね!


 おっと、米を3粒ほど落としてしまった。


 取ろうと足元に手を伸ばす⋯⋯




 ⋯⋯え!?




 こんな柄あったんだ!全然気づかなかった。


 実はこの車、先週買ったばかりなのだ。クラクションもノーマルだし、まだ何もしてないのだ。


 そうだ、このバックミラー小さいんだよな。前の車から外しておいた市販のミラーを付けようと、俺はバックミラーに手を伸ばした。


 え⋯⋯


 祥平君いるし⋯⋯鍵開けてないのに。


 これってミラー越しに見えるだけで、振り返るといないパターン??


 どうしよう、振り返れない。




 パクッ


 モグモグ


 鳥五目も安定のおいしさ


 クルッ( ゜д゜)彡



 あれ、普通に祥平君いる⋯⋯


 あ、サンルーフ空いてる。


 なるほど、サンルーフから入ってきたのか。


「祥平君、どうしたの?」


「⋯⋯⋯⋯」


 ちっ、無視か。これだからガキは嫌いなんだ。


「昆布おにぎり食べる?」


「⋯⋯⋯⋯」


 え⋯⋯


 もしかして、幽霊?


「ツナマヨもあるけど」


「⋯⋯食べる」


 え! 食うの!?



 それから20分くらい祥平君と話し込んだ。


 実は祥平君は幽霊ではないらしく、おにぎりを4個も食べる元気っぷりを見せてくれた。


 そしてなぜこの時間にこんなことをやっているかというと、親子喧嘩が原因だとか。


 テストの点が悪いのが続いたらしく、ずいぶんひどく怒られたそうだ。小学生なんだから0点でも良いじゃんって俺は思うけど。


 あまりにこっぴどく怒られた祥平君は、家を飛び出してしまったらしく、その勢いで⋯⋯うん。そうなんだ。


 だから電話での祥平君のお父さんの対応が怒ってた感じだったのか。納得納得。


 いや、納得出来ないから。


 なんで夜中の11時に説教してるんだよ。

それに他人に八つ当たりって。おかしいだろ。


 プルルルルルル


 あ、電話だ。誰だこんな時間に。


「もしもし、先程は申し訳ありませんでした。あんなことを言ってしまって。」


「いえいえ、事情も聞きましたし。」


「そうですか⋯⋯では、明日は宜しくお願いします」


 ツー、ツー、


 え? 何を宜しく? なんで説明も無しに切るの?


「祥平君、明日何かあるの?」


 あれ? いない。


 おにぎり4個食べてお礼も言わずに帰りやがった⋯⋯!


 はぁ、おにぎり10個とも終わったし、家に入るか。


 あ、回覧板来てる。どれどれ。


 嘘だろ?


 回覧板にはこう書いてあった。

訃報

昨日12月29日、東5組の 川谷祥平君が逝去されました。

享年8(満6歳)

告別式は――



 最初の1文以外は目に入らなかった。


 嘘だろ⋯⋯


 ちょっと待てよ? なんで俺に会いに来たんだ? たまに喋るくらいの知り合いだぞ? 祥平君は俺の名字しか知らないくらいだし。


 話逸れるけど、おにぎり10個買った俺が言うのもなんだけど、6歳でおにぎり4個食べるのって何気にすごいな。しかも11時だし。

 幽霊だったら関係無いのかな。


 いや、そもそも幽霊なのか?


 幽霊だよな。


 でもさっき本人は幽霊じゃないって言ってたしなぁ。


 いや、幽霊だな。



 そうか、祥平君昨日亡くなってたんだな⋯⋯てことは、今日がお通夜だったのか。

行けなかったな⋯⋯それどころか、俺は酒飲んで騒いで遊んでたな。祥平君が亡くなった昨日も同じだ。まだ6歳なのに、やっと小学生になれたって喜んでたのに。


 明日の告別式は絶対に行かないと⋯⋯!





 翌日、喪服を着て葬儀場へ向かおうとする俺を、嫁が呼び止めた。


「あなた、先週から乗り始めたのに、もうぶつけたの?」


 えっ


 本当だ、ボンネットが少し凹んでいる。


 ぶつけた覚えなんて無いんだけどな⋯⋯というか、最近の記憶が曖昧だ。飲みすぎかな。


「もう、なにやってるんだか。今日は私の車で行きましょ。美紀はお留守番。いいわね!」


「おう、行ってこい。留守はちゃんと守っとく。」


 美紀とは俺の娘の名前だ。祥平君と同じ1年生だ。美紀は7歳だが。もし祥平君じゃなくて、美紀だったら⋯⋯考えるだけで恐ろしかった。


 葬儀場に着くと、近所の人がたくさんいた。


「まだ6歳だったんだって」


「酷いことするわ⋯⋯」


「殺してやりたいくらいだ」


 なんだろう? 物騒な話してるな。

と思って聞いてみた。


 祥平君は轢き逃げされたというのだ。

犯人はまだ捕まっていないとか。


「私があんなに強く叱らなければ、祥平が飛び出すことも無かったんだ⋯⋯」


 祥平君のお父さんだ。相当落ち込んで、自分を責めている。

 なんでも、叱られて家を飛び出したところにちょうど車が来て轢かれたのだとか。


「川谷さんは犯人は見てないんですか?」


「犯人の顔は分かりませんでしたが、車はハッキリと見ました。日産のエルグランドです。最新の。」


 ⋯⋯え?


 びっくりした。俺と同じ車じゃないか。


「祥平の葬儀が終わったら、私も捜査に参加するつもりです。そしてこの手で犯人を⋯⋯」


 犯人を⋯⋯もちろん言わなくても分かる。


 そうだ! こんな話してる場合じゃない! 祥平君の幽霊の話をしないと!


 いやいや、信じてもらえるのか?


 信じてもらえるか不安だったが、昨日のことを全部話した。


「そうですか、祥平があなたの家に。」


 自分のことを幽霊じゃないと言っていたのも伝えた。


 伝えながら俺は思った。


 もしかしたら、自分が死んだことに気づいていなかったんじゃないか? だから自分のことを幽霊だと思っていなかった。これなら辻褄が合う。


 そしてもう一つ思った。


 幽霊だって嘘をつくかもしれない。俺を安心させるためにああ言ったのかもしれないし。安心ってなんの安心だろうか⋯⋯


 告別式が終わると、祥平君のお父さんが俺に話しかけてきた。


「今からお邪魔出来ないですかね」


「えっ? うちですか?」


「はい。もしかしたら息子に会えるかも、と思いまして」


「あっ、そういうことならもちろ」


 急に嫁に腕を引っ張られて隅っこのほうに連れて行かれた。


「おい! 今川谷さんと話してたんだぞ! 非常識だろ!?」


 嫁はなんともいえない表情をしていた。


「これは私の推理に過ぎないんだけど、聞いて欲しいの」


 嫁はいきなり推理を始めた。どういうことだ。


「昨日から今日にかけての話をまとめてみたら、ある真実が浮かんできたの」


 えっ、中二病ってやつ?


「轢き逃げ犯はもしかしたら、あなたかもしれないの」


 ⋯⋯は?


 え? 中二病?



 じゃないか、火曜サスペンスの見すぎか。


「俺が轢き逃げ犯だって!?」


「『えっ』」


「しっ!」


 しまった、声が大きくなってしまった。みんなをびっくりさせてしまった。


 嫁の推理の内容はこうだった。


酔っ払った俺が急に飛び出てきた祥平君を轢く→酔っ払ってるから気付かずそのまま帰宅→次の日の夜、自分が死んだこと気付いていない祥平君は、そのまま家出の続きをした(または、家出の続きをしたのではなく、何となく俺の車に来なければならないと思い、来たのかもしれない)


「いやいや、ただの仮説じゃん!」


「いいえ、川谷さんが見たって言ってた車その物だし、ボンネットの凹みだって⋯⋯」


 えっ。


 マジかー。


「だから、早く家に帰ってエルグランドを処分しましょ。今日私の車で来たのが幸運だったわね。」


 えっ?


「出頭しろって言わないの? 自白しろって言わないの?」


「逃げられるなら逃げた方がいいに決まってるわ!」


「でも俺がやったんだったら⋯⋯」


 くそ! 記憶が無いところで轢き逃げをしてたなんて⋯⋯!



 本当に俺がやったのかな。


 夢じゃないのかな、これって。


 死刑なのかな。怖いな。恐いな。こわいな。


 ドッキリじゃないのかな⋯⋯



 俺達は斎場を後にした。




 家に帰ると、なんと警察が来ていた。


「あなたの車と、川谷さんの証言が一致するんですよね。あとボンネットも凹んでるし。川谷さんがナンバー見てたら一発だったんですけどね」


 終わりだ。全てが終わった。


「ちょっと車調べさせてもらいますね」


「言いがかりはやめてください!」


 嫁が怒り出した。尋常じゃないほど怒ってた。


 警官もびっくりしたようで、こっちの話を長々と聞いてくれた。


「それって飲酒運転じゃないの?」


「いや⋯⋯分かんないです⋯⋯」


「記憶が無いだけで、多分轢いたんだよ」


 念のためと言って、警官はハンドルについている指紋を調べた。


「指紋少ないですね、こまめに掃除してるんですか?」


 こまめに掃除? してないな。


「先週買ったばかりなんです」


「ああ、なるほど」


 指紋採取の結果は明日出るらしい。俺以外乗ってないから、俺が犯人なんだろうなぁ。


 それにしても、祥平君が車に接触したんだったら、すぐにわかりそうなものだが⋯⋯


 その日の夜は眠れなかった。当たり前といえば当たり前だけども。


 妻や娘とも離れ離れになっちゃうのか⋯⋯いやいや、人を殺しておいて何が「離れ離れになっちゃうのか」だ! 俺はクソか!


 色々考えてたら結局眠れた。


 次の日は案の定朝から警察が来た。


「ハンドルからは2人の指紋が検出されました。」


 2人? 俺誰にも貸してないよな、誰か勝手に乗ったのか?


 嫁がボソッと呟いた。

「⋯⋯ここまでか」


 え? 何そのセリフ。それじゃあまるで⋯⋯


「奥様、何かおっしゃいましたか?」


「ふっふっふっふっふっふっははははぁああああああああぁぁぁああああゲホゲホッおぇぇぇいやぁぁあああぁぁぁんぬぁああ!!」


 え!? 嫁が壊れた!!! ぬぁああ!! っておい!


「奥様、何かおっしゃいましたか?」


 聞こえてないのかよ!! 耳遠いんか!!


「もはははははははは!! ぼぶばぼばびびばー!!!」バタッ!


 嫁が倒れた。そして救急車が来た。

すぐに嫁を乗せて病院へ行ってしまった。


 もう何が何だか。


 でも心配なので車で後を追おうとしたら、警官に止められた。


「私が送りますので」


 俺は美紀と一緒にパトカーで救急車についていった。その途中、美紀が話し始めた。


「この前ママに言われて祥平君に変装してパパを驚かせに行ったんだけど、全然見破られなくてショックだったよ」


 えっ。


「ごめん、酔ってて気付かなかったわ。20分も話してて分からないなんて、俺は最低だな」


「え? 私パパと喋ってないよ? 屋根に乗っただけだよ?」


 え?


「いやいや、お前おにぎり4つ食べたろ! テストの点が悪くて怒られたとか言ってたろ!」


「パパおかしいよ⋯⋯」


 パパおかしくないよぉ。


 だったらあれは一体何だったんだ⋯⋯


 あ、病院が見えてきた。そうだ、今は妻の体が最優先だ。急に倒れてびっくりしたぞ。


「ここ曲がったらすぐですからね~」


 タクシーの運転手か!


 曲がろうとしたその時、パトカーの前に見覚えのある少年が⋯⋯

お茶どうぞ〜( ・∀・)っ旦

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― 新着の感想 ―
[良い点] 構想がよく、読みやすいですね。 長すぎず、短すぎないいい長さです(*´ー`*) [気になる点] 主人公がおにぎりを食べすぎな気がしたよ ( ´_ゝ`)絶対太るよねアレ [一言] 姜維を強…
[良い点] なかなか予想外の展開でした(^〇^) [気になる点] 壊れた奥さんと事故との時系列がよく分からなかったので気になりますね。 [一言] 他の作品も読んでみます(笑)
[良い点] ちゃんとホラーになってました。 [気になる点] ただ、しょうへい君、何だってまた主人公のところに?病院でなんで待ってるの? 主人公の奥さんのところに出ないの? なにか主人公のほうに言いたい…
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