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総領緊急会議

 その頃、王宮では各地の総領達が集まってきていた。急な召集にも関わらず迅速な対応━━━王シェガールの人望もあるだろうが、宰相シャガルディーの無駄のない仕事裁きがあっての事であろう。


 年に一度開かれる各総領会合の場である大会議場にて、各総領達は集まっていた。皆、側近一名を従わせ席に着き王が来るのを今か今かと待っているのだ。



「━━━この度の緊急召集…お主はどう思う?ティーチェ公爵」


「……口を慎め。バフェル公爵」


 フロックコートにハット、左だけの丸メガネをかけたバフェルという男は詫びることなく話続ける。


「そう言うな。俺とお前との仲ではないか」


「…ふん。一緒にするな」


「ははっ、相変わらずだな。メリーナは元気か?」


「あぁ…元気過ぎるのも困ったものだ」


「またやんちゃしてるのか」


「やんちゃという可愛いものなら…いいんだがな」


「…あぁ、何となく分かるよ…っと、陛下がお出でだ」



 シェガールが現れると一斉に立ち上がり敬意の一礼をする。皆より一段高い場所に設けられた王の席に、シェガールが歩み寄り着座すると片手を挙げた。それが合図となり、総領達も着座する。


「各地域の総領達よ…急な召集にも関わらず集まってくれてありがとう。先ずは礼を言おう━━━それで早速本題なんだが…その前に、それぞれの側近達には退出願おう」


 シェガールの言葉に一同がざわめいた。それもそのはず…今までどんなに重要な案件であれ、側近達を退出になどした事がないのだ。一体どんな話だという声が聞こえ始めた…その時━━━


「…━━━承知致しました、シェガール王の…仰せのままに」


 静かだが透き通った芯のある声は、一瞬にして場を静寂へと変えてしまった。


「ニール…下がってなさい」


「━━…御意」


「流石はアルビデ様…では皆様も」


 シェガールの後ろから現れたシャガルディーに、これ以上は無駄だと感じたのか全ての側近達は部屋の外へと姿を消した。


「私は王より話を伺っております。王都代表として此処に居るものと思って頂いて結構です。では、シェガール様……」


「…うむ。改めて…皆も此度の事、ただ事ではないと…感じているだろう…━━先日、謁見の間にてリーコルーンに会ったんだが…」


 そこで一端言葉を区切るシェガールは、思い詰めたようにリーコルーンとの出来事を話始めた━━━…



 シェガールが話す間、皆が息をのみ…今、王が話している事は本当何だろうかと疑いすら感じられる。しかし、側近達まで退出させて話しているのだ。事実であり、これから起こりうる事なのだと考えずにはいられない。誰もが言葉を発しない中、一人挙手する者がいた…━━━



「━━━…一言、宜しいでしょうか」


「いいだろう…バフェル公爵」


「有り難きお言葉…災いとは具体的にどんな?」


「…それについて、一切言ってはないのだ…」


「起こらぬ可能性もある…と?」


「…━━━分からぬ。だが既に報告がいっているとは思うが、数日前に南東の空に光の柱が出現した。…それは恐らく女神セレーディアが現れたことを意味している━━━シャガルディーに調査隊を向かわせた…そこで、島民達の話を聞くと人外が現れたと言ったそうだ」


 手を組、静かに息を吐いた。リーコルーンと会って以来生きた心地がしなかった。━━━…何せ、数百年もの間現れなかった女神セレーディアが現れると言われたのだ。やっと居なくなってからの災いがおさまり、国が繁栄してきたというのにまた何か良からぬ事が起きるのではと、考えらずにはいられなかったのだ。


「何故…人外だと?」


「私から説明しましょう。話を聞いた老婆によると、空から舞い降りた時は美しき女神セレーディアだったそうです。女神の証である額の紋様もあったのだと他の島民達も言っていた、と…」


「じゃあセレーディア様なのでは?」


 総領の誰かがそう言った声が聞こえたが、シャガルディーの顔は何処か芳しくなかった。


「…それが、そうとも言えないようなのです」


 話の見えない内容に、この場にいる誰もが首を傾げるのだった。


「皆さんご存知の様に、我らの女神で在らせられるセレーディア様は額に紋様がある事で有名です。何よりもその紋様が証であり紋様に力を宿し、我々をお救いくださっていたと文献などにも記されてあります…━━しかし、現れた女神の紋様は突然消えたと言うのです」


 数百年前の出来事であるとはいえ、女神セレーディアについては重要機密として文献に残っている。そこに記されているのは、額の紋様は消えることなく女神の額にあると…文献上そう書かれてあるのだ。


「どういう、事だ…?」


「…分かりません。ですが、それを見た老婆達は額の紋様が消えたことで人外だと思ったようなのです」


「━━━…ふむ。その後はどうなったのじゃ?」


「ベナード公爵…はい、それが━━━」


 白髪で肩まで伸びた髪が特徴な初老…ベナードが険しい顔つきで聞いてきた。シャガルディーによって報告された内容に皆、唖然となった。消えた事に驚いたのではない。その者が何処へ消えたかが重要なのだ。もしも女神でなく災いを呼び寄せる人外だったのなら…早く見つけて対処しなければならないからだ━━━━



「━━…皆、思う事はあるだろう…しかし事態が事態である故、まずはその者が何者であるか確かめる必要がある。従って、己の領地にその様な者がいた場合、保護もしくは捕縛するよう命ずる…!!」


『━━━━ッ!』



 この場にいる誰もが息を呑んだことだろう。仮にも女神かもしれない方を保護するならまだしも…捕縛するなど━━━だが、人外であったなら捕縛というのが、国が出した結論なのだ。



 …あぁ、神よ。我らにどのような試練を与えんとするのだ。我が出した結論は間違っているのだろうか━━━自分の目で見ないことには、納得が出来ないこの性格が憎い…祖先が崇めていた女神を侮辱するような真似をして…何もなく済む筈がないのは承知の上だ。それでも民へ矛先が行かないか、我はそれだけが心配でならない。王獣リーコルーンよ━━…貴方は一体我にどうして欲しかったのだ。…いや、愚問だ。そんなことも分からないようなら王の資格すらないだろう━━━…そもそも見つけない事には…全て始まらない。 あの日、リーコルーンが伝えてきた「再び女神が降り立つ」というのはきっと……この状況を指している筈だ。ならば━━━孤島ルミナスに現れたのは女神セレーディアで間違いないんだ。あぁ…神よ。我の選択が間違わん事を……━━━━

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