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光輝く星の下で

僕達はあの夜空に浮かぶ満天の星の輝きを忘れない。

僕達には(まぶ)しいくらいに光っていたように見えた星が

願いを誓ったことで更に輝きを放っていたように見えたのだ。


「ねえ、ねえってば!」

とある女の子が声を掛けてきた事に僕は気が付かなかった。

「ん?」

僕は女の子のほうを振り向き、首を(かし)げた。


「今夜、あの場所で待ち合わせだよ!って話。聞いてなかったでしょ(わたる)何とか言ってやってよ。」

と女の子はもう一人の男の子に助言を求めるかのように頼んだ。

「いいか、よく聞け(よう)()。今夜あの場所で待ち合わせだからな。」

もう一人の男の子は僕に言い聞かせるように言った。

「あの場所…って。」

僕は聞いてなかった話を聞いても分からなかった。

「あの場所だよ!ほら、向日葵が咲いていて星がよく見える私達3人の秘密の場所!」

「あー。」

僕は星が見える秘密の場所という言葉でようやく理解した。

あそこには本当に向日葵が咲いていて星が綺麗に見える。

3人しか知らない場所。


僕達は、決まってあの場所に集う。


「...にしても、あっちぃ。早く夏が過ぎ去って欲しいぜ。」

男の子が言うように今は夏。

8月上旬、夏真っ盛りな時期。


今僕達3人

航くん、星夏ちゃん、僕は夏休みの宿題を少しでも終わらせる為に宿題の一部を航くんの家に集まり宿題をする事にしていた。

僕達は小学生6年生 高学年にもなっても宿題の量が減らなかったことに不満を感じずつも取り組んでいるのには矛盾していた。

それは、今さっき3人で『あの場所で待ち合わせの約束』を決めた事が理由の一つだった。


そして、

「…やっと終わった!」

と暫く沈黙だった部屋に男の子の第一声が聞こえた。

僕は部屋に掛けてあった時計を見上げると、短針が4を指していた。

僕達が宿題を始めたのは午後3時。

あれから、1時間が経っていた。

1時間!?

「えっ、(わたる)くん。もう終わったの!?1時間しか経ってないよ。」

僕は驚いた表情で言葉を発した。

その言葉につられて、その場にいた女の子が時計を見上げては

「本当だ。嘘でしょ?(わたる)がそんなに早く終わるわけない。」

と半信半疑だった。

「嘘じゃないぞ!ささっとやれば出来る。全ては夜の為。一抜け」

そう言って男の子は終わった自分の宿題を片付けて、部屋を出ていった。


航くんの宿題を進める早さに感心して僕はぼーとしてしまっていた。

「陽太!何、ぼっとしてるの?私達も早く終わらせるよ。」

我に返った僕は女の子 (せい)()ちゃんの言葉を耳にすると頷いた。

「うっ、うん。」

早く終わらせなければという気持ちだった。

僕は窓から見える夕焼けの景色を見た後、再び宿題をやる事にした。


数分後、

「やっと終わった!!」

宿題を終えた僕の第一声。

それを聞いた星夏ちゃんが

「お疲れ様〜。」

と安堵の溜息をつきながら言った。

すると、「これでようやくあの場所に行けるな。陽太、時間掛かりすぎ」

航くんは僕を見て、疲れ果てた様子を見せた。

「本当。夕飯の時間だよ。どうする?」

「そうだな。親に言ったらここで食べる事出来る。2人は親に連絡。そしたら、すぐあの場所に行こうぜ。」

「分かった。」

僕が宿題が終わった達成感でボーッとしていると2人はこの後する事を決めて、部屋を出て下の階のリビングへと行ってしまった。


2人が部屋から出て数秒すると、僕は我に返った。

「えっ…?」

僕は二人の会話に耳を疑った。

立ち上がり窓の外を伺った。

さっきまでの夕焼けは消えていて既に辺りは薄暗くなっていた。

部屋に掛かっていた時計を見あげると、6時…午後6時だった。

「えっ、もうこんな時間…航くんはいいとして星夏ちゃんまで終わってたんだ…」

僕はあっという間に時間が経った事に溜め息をつきながら、小さく呟いた。


「陽太、何してるの!下に降りて親に連絡して。」

いつの間にかさっき下のリビングに行ってしまった星夏ちゃんが部屋に戻ってきて僕にそう言った。

「うん、分かった。」

僕は頷いて星夏ちゃんと一緒に下のリビングへと向かった。


リビングに着くと、航くんと航くんの親お母さんがいた。

そして、僕にこう言ってくれた。

「陽太くん、遅くまでお疲れ様。夕飯いいなら、是非食べてってね。」

優しい言葉に僕は嬉しくなった。

その後、僕は家に連絡をした。


「どうだった?まあ、聞くまででもないけど」

星夏ちゃんが連絡が終わった僕のところに来て聞いた。

聞くまででもないということは、僕達3人以前からそれぞれに家に集まって夜遅くになってしまったら

夕飯はお世話になっている家で食べる事になっているのだ。

「もちろん、大丈夫だったよ。」

僕は当たり前に笑顔で答えた。

「よし、じゃあ食おう!いただきま…」

すぐそばの食卓には航くん、向かい側にお母さん、その隣には星夏ちゃんが既に座っていた。

航くんが目の前の食事に手を付けようとした時、向かい側に座っていたお母さんに止めさせられ

「何やってるの、みんなが食卓についてからでしょう!この馬鹿息子!」

そう怒鳴られ、頭を軽く叩かれていた。

「痛え…。へいへい、陽太、立ち止まってないで早く。」

航くんは軽々しく返事をし僕を呼んだ。

そうだった、僕が待たせてるんだった。

僕はすぐ食卓についた。

そして、声を揃えるかのように僕達3人は「いっただきます!」と言って食事を美味しく食べたのだった。

それから数分後、

僕達と航くんのお母さんは夕食を食べ終わると、満足していた。

「さあ、あの場所へ行くぞ!」

夕食が終わると直ぐに航くんは元気にそう切り出した。

しかし、

「まだ父さんが帰ってないでしょ。もう少し待ちな。」

航くんが言うことが分かっていたのか航くんのお母さんはすぐに答えるかのように言った。

「どうせ遅いじゃん。待てない」

「今日は早く帰ってくるから。皆が2人がいる時はいつもそうだったでしょ。」

「そうだった…。でも、待てない。先行こう」

「馬鹿息子。あそこは車を運転出来る父さんがいないと行けないでしょ。」

航くんと渉くんのお母さんの会話を僕と星夏ちゃんは黙ってみていた。

航くんのお父さんは(ほとん)ど毎日と言っていいほど、仕事で帰りが遅い事が多い。

けど、僕達 3人が集まる事が分かっていれば早めに仕事を終わらせて航くんのお母さん含めて

僕等を車に乗せて星が見える秘密の場所へ連れていってくれる。

小学生の僕達だけじゃ夜空を見にいくのにはダメだと言われてる事もあるのだけども…。


1時間もしないうちに航くんのお父さんは帰ってきて、僕達は少しすると車に仲良く乗って行く事にした。

秘密の場所に着くと、僕達は車を降り真っ先にあるベンチに向かって座った。

その近くでは向日葵が咲いている。

夜になると、分からないかもしれないけどちゃんとそこに咲いているって分かる。

そして、空を見上げる。

「うわ!やっぱりいつ見ても凄いな。」

「綺麗!」

航くんと星夏ちゃんは口々に言葉にする。

僕は空に浮かぶ星の輝きに感動しながら、黙って空を見上げていた。

「…陽太?」

黙っていた僕に星夏ちゃんは疑問形で呼びかけた。

「ねえ、初めてこの星に誓って3人の願い事しよう。」

僕は星夏ちゃんの疑問に答えるようには言わず2人に提案するように言った。

「いいよ!」

「おう!」

すると、拒否されることもなく返事をしてくれた。

「せーので言おう。」

僕が言うと、航くんと星夏ちゃんは頷いた。

「せーの。」

『3人が大人になってもこの場所で集まれるますように。』

僕の合図に僕達は目を丸くして驚いた。

まさか、3人の願いが同じ何て思っていなかった。

僕達はぽかんと口を開けたまま、交互に目を合わせた。


「何だ、一緒じゃん。」

「嘘でしょ」

「僕達の考えていることは同じだった何て…。」

そして、笑いだした。

きっと、向日葵も笑っているのかな。


僕達は大人になってもこの夜空の星の輝きを忘れないだろう。

そう信じ続けて。


光輝[ひまわり]

end

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