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第9話 武器を手に

 玲実にビンタされた利恵が言い返す。

「は? 朝っぱらから何? 寝ぼけてるの? 私が何をしたって? 説明しなさいよ!」

 それは校則を破った生徒を詰問するような口調だった。

 利恵の反応に玲実が一瞬、たじろぐ。が、その怒りは収まらない。

「とぼけないで! 夜中にガラス割ったでしょ! おかげで全然、眠れなかったじゃない!」

「ガラス?」と、利恵が怪訝な顔をする。

 玲実の後ろで望海が口を尖らせる。

「そうだよ。石で窓ガラスを割ったでしょ。しかも一時間おきに」

 玲実と望海は山海荘のガラスが夜中に破壊されたと訴える。

 身に覚えのない利恵が戸惑う。

「ちょ、ちょっと待ってよ。何で私がそんなことを……」

「はん! どうせ嫌がらせなんでしょ! アタシらが協力しないから気に入らないんじゃないの? アンタ、仕切りたがりだから」と、玲実は決めつける。

 そこまで言われて利恵が再びヒートアップする。

「どういう意味よ! 確かにあなたたちは最悪だけど」

「さ、最悪!? 酷っ!」と、望海が顔を顰める。

「ほら! それがアンタの本音でしょ! 罰を与えたつもり? 何様なの?」

 玲実の突っ込みに利恵が反論する。

「はあ? 言いがかりは止してよ! みんな松の間で寝てるのよ? 夜中に何度も出て行ったら誰か気付くわよ」

 利恵の言い分に玲実のトーンが下がる。

「な……じゃあ、アンタじゃなければ誰なのよ?」

 そこで望海が思い出す。

「もしかして大阪の子? そういや、あの子達どこ行ったの?」

「さあ? ボクらには分からないよ」と、桐子が首を竦める。

 愛衣が仲裁の為にそこで口を挟む。

「それくらいにしておいたら? 多分、ガラスを割った人間を特定するのは難しいと思うわ」

「そうだよ。ボクらは警察じゃないし」と、桐子も同意する。

 どうにも収まりがつかない玲実がまだ何か言いたそうな顔で南風荘の面々を睨みつける。しきりに眼鏡を触る利恵、冷静な愛衣、呆れ顔の桐子。それらの顔を見比べて玲実が「フン! 行くわよ!」と、踵を返す。

 望海がそれに続くが納得できないといった顔で玲実に尋ねる。

「いいの? みんなで口裏合わせてるのかも?」

「もういい。でもタダじゃおかないんだから。あの子達はみんな敵!」 

 南風荘の玄関を出て少し歩いたところで玲実が何かに気付いて足を止める。

「ね、見て!」

 玲実の目に留まったのはイリアのハルバードだった。ハルバードは屋外の洗い場で昨夜のうちにイリアが洗った後に干していたものだ。南風荘の洗い場には漁に使う道具や釣竿などが壁に立てかけられる形で日に干されている。その中にキラリと光るものがあったので玲実に発見されたのだ。玲実と望海が近くに寄って物珍しそうにそれを眺める。

 玲実が感心したようにハルバードの表面に触れてみる。

「うわあ……なにこれ。槍? 斧?」 

「すっごい、凶悪な形してるね。これって……」

 望海が手に取ろうとするが重すぎて持ち上がらない。挙句に倒してしまう。

『ガシャーン』という大きな音が響く。

「やば。倒しちゃった」と、望海が舌を出す。

「あらら。けど、これって誰のだろ?」

「さあ?」

「なんでこういうものを持ちたがるのかしら。物騒じゃん」

「だよね。気がしれないよ。まあ、一応、戻しとかないと。誰のものか知らないけど」

 望海はそう言いながら元通りにしようとハルバードを持ちあげる。

「重っ!」

 望海は両手を使って全力でそれを地面から引き離そうとする。だが殆ど持ち上がらない。

「ちょっと。なに遊んでるの? そんなに重いわけないじゃない」

「いや、ホントに超重いんだって!」

 望海が助けを求めるので玲実も手を貸す。が、2人がかりでもハルバードは容易に持ち上がらない。キャーキャー騒ぎながら2人が格闘していると「触らないで!」と、誰かの怒鳴り声がした。その拍子に玲実と望海が同時に手を放したのでハルバードが『ズン!』と、落下する。

 それを見てイリアが激怒する。

「何やってんのよ! バカ!」

 間抜けな格好でポカンとしていた玲実が罵声を浴びせられたことで我に返る。

「は? 何なの! いきなりバカとか……」

 イリアはツカツカと歩み寄ってくるとドンと玲実を突き飛ばした。そしてハルバードを拾い上げるように軽々と持つ。

「な、片手!? そんな重い物を!?」と、玲実が驚愕する。

 望海も何か言おうとするが言葉が出てこない。そして『持ち主しか使えない』という武器の特性を思い出す。話には聞いていたが実際に目の当たりにして望海は理解した。

「てことは……それはアナタの武器なワケね」

 イリアはハルバードを何度か握り直して手の平で乾き具合を確かめた。そして玲実達に一瞥をくれるとハルバードを持って玄関に向かった。

 玲実が「感じ悪っ」と、吐き捨てる。それは多分、イリアにも聞こえている。だが、イリアは振り返ることなくスタスタと歩いて行く。その後姿を見つめながら望海は考え事をした。それはまるで望海が好むミステリーの探偵役の思考タイムのような表情だった。


   *   *    *


「朝から温泉なんて最高だネ!」

 そういって野乃花はバタ足で湯を跳ね上げた。

「ちょっと! 止めなよ、野乃花」と、乙葉がお湯を被って苦笑いする。

 乙葉の左肩には南風荘を出発する時のイザコザで撃たれた傷が生々しく残っていた。赤黒いカサブタが痣のようになっている。一方、同じような傷がモエの右腕にもあった。モエの傷は2日目に湿地帯で狙撃された時のものだ。結局、犯人は分らなかったがモエはヘレンだと確信している。

 野乃花は小さい子供のように、はしゃいでいる。

「♪天国、天国~ 楽しいナ」

 岩に囲まれた露天風呂は、昨日ドラゴンに遭遇しながらも何とか辿り着くことが出来た小屋のすぐ隣にあった。どういう仕組みなのか分からなかったが天然の温泉に少し手を加えただけの風呂は秘境の温泉地にあってもおかしくない代物だ。おそらく、はじめにこの温泉があって、その隣に小屋を建てたのだと思われる。ただ、小屋の造りは明らかに和風ではない。まさしく南の島でひっそり暮らす自由人の持ち家という表現がぴったりだ。

 鼻歌混じりで上機嫌な野乃花は相変わらずの豊満で、放っておくとおっぱいが湯に浮いてきそうだ。乙葉はそんな野乃花の隣で考え事をしている。モエはじっと目を閉じて腕を擦っている。詩織はリラックスした表情で湯に身を委ねる。

 野乃花は無邪気に言う。

「ここで助けを待つのが正解だよネ」

 詩織が野乃花の言葉を受けて何度も頷く。

「そ、そうだよね。へ、変な生き物さえ気を付ければ安全よね」

 その言葉にモエが目を開ける。

「せやな。モンスターより人間の方が怖いわ」

 それは半ば冗談のような口ぶりだったがモエの本心でもあった。そしておそらく、この4人の誰もが敏美が何者かに殺されたことを思い出して不安になっている。

 しばらく沈黙した後でぽつりと乙葉が切り出す。

「実はね。みんなに隠してたことがあるの」

 乙葉の神妙な顔つきとは対照的に野乃花が「エ? なになに?」と、目をクリクリさせる。乙葉は湯の表面を見つめながら呟く。

「……あのね。あたし、見たんだ。あの見張り台のとこで」

 突然の告白にモエと詩織が顔を見合わせる。流石の野乃花も妙な空気に気付いて心配そうな顔つきになる。

 乙葉はうつむき加減で話を続ける。

「湿地帯のところ。2日目にあの見張り台を見つけた時、あたしだけ登ったでしょ。そんで中の様子をスマホで写したの」

「それが例の地図やろ?」

「うん。でもね。実は地図以外にも落書きがあったんだ」

「落書きやて? で、何が書いとったん?」

「それがね。『生き残る』とか『あと3人』とか『殺す』とか……」

 乙葉の言葉に3人が仰天する。

「ちょ、ちょっと、そ、それって、どういうこと?」と、詩織がキョどる。

「どういうこっちゃ……」と、モエが困惑する。

「そんな……ネ、嘘でしょ? 乙葉ちゃん」

 そう言って野乃花が乙葉の腕にしがみつく。それに対して乙葉は済まなさそうに首を振る。

「ううん。ホントなんだ……ゴメン。今まで黙ってて」

 4人は、しばらく言葉を失った。

「あ、あ、あの武器とお墓は、そ、そういうことだったんだ……」

 詩織の言葉にモエが頷く。

「なるほどな。ウチらに戦えっちゅうことなんか」

「ウソ!? 仲間同士で?」と、野乃花が過剰反応で仰け反る。

 モエが腕組みしながら尋ねる。

「あの子、名前なんやったっけ? 2日目の朝に殺された子」

「と、と、敏美さん。だったと思う」

「せや。確かそんな名前やったな。アレもそういうことやったんやろな」

 そこで詩織がギョっとする。

「じゃ、じゃあ、や、やっぱり敏美さんを殺したのは、わ、私たちの誰かってこと?」

「そうとしか考えられへんやろ」

 驚くべき事実に4人が押し黙る。そして乙葉が沈黙を破る。

「あの落書きは前に誰かが書いたものだと思う。それに神社にもあったよ。誰かが暴れたみたいな痕跡が。あれは多分、武器で戦ったときのもの……」

「ということはウチらの前に誰かが武器を持って殺し合った、てことかいな? 生き残るとかあと3人とかいうのはそういう意味やん……」

「だ、だ、誰が? き、消えた住人と関係あるのかな?」

 そう言って詩織はオロオロする。モエは考え込む。乙葉は深刻そうな顔つきで首を振る。そんな中で野乃花だけが話についていけない。ただ、なんとか自分も参加しようと焦った野乃花は唐突に「ハイッ!」と、右手を挙げた。

「アタシも武器を持ちたい! だから今日、探しに行くヨ」

 それを聞いてテンパった詩織も真似をして手を挙げる。

「わ、私も! ぶ、武器を見つけて、みんなの力になりたい」

 野乃花と詩織の言葉に乙葉が困った顔をする。

「でも、武器を探す為にここを動くのはリスクがあるんじゃない?」

 乙葉は昨日遭遇したドラゴンを思い出したのだ。

 詩織は涙目で訴える。

「も、もう足手まといにはなりたくないの! そ、それに万が一、モンスターに襲われた時、力を合わせて戦えるし」

「せやな。あのドラゴンはそうでもしないと対抗できへんな。倒す必要はないけれど、皆で協力したら追い払うぐらいは出来るかもしれへん」

 野乃花が『頑張るゾ』のポーズをとる。

「そうだヨ。地図がある分、効率はいいはず。それになぞの記号。なんか意味が気にならない? ★とか☆は何を意味しているのかナ?」

「よっしゃ。したら今日は探索してみよか」

 モエの提案に残りの3人が頷く。

 それを確認してモエが『ザブッ』と勢い良くお湯を押しのけて立ち上がった。

「熱っ! のぼせてしもうたわ」

 そこでモエの小ぶりな乳房が露わになる。しなやかな身体にくびれた腰つき。乙葉がそれを眺めながら目を細める。

「モエちゃん、良い体してるよね。アスリートみたいで」

「なんやねん。急に」

「羨ましいよ。ホント。運動神経もいいし」と、乙葉も湯から上がろうとする。

 そんな乙葉の乳房をチラリと見てモエがフンと鼻を鳴らす。

「乙葉の方がずっと、ええ体やんか。ウチなんかと比べてよっぽど胸があるやん」

「そんなことないって! あたし、ちょっと乳首、変だもん」

「別にそんなことないやろ」

 そう言ってモエが乙葉の胸に顔を寄せてくるので乙葉が手で胸を隠す。

 2人のやりとりを見て野乃花がクスクスと笑う。

「気にし過ぎだヨ。そんなに乳輪大きくないって」

 野乃花の冷やかしに乙葉が憤慨する。

「黙れ! ちょっと自分がグラマーだからと思って!」

「うええ、そういうつもりじゃないんだヨ~」と、野乃花がゴメンのポーズを見せる。

 野乃花と乙葉は仲がいい。そんな2人のやりとりをモエは羨ましそうに眺めて微笑んだ。


   *   *    *


 お昼近くまで寝ていたぽっちゃり和佳子が起きてきたところで南風荘の面々はロビーの待合スペースに集まって今後の事について話し合った。メンバーは利恵、桐子、愛衣、イリア、智世、和佳子の6人だ。そこにヘレンの姿は無い。

 はじめにイリアから昨日探索した雪の街についての報告がなされた。雪が降り積もった街はここと同様に人の姿が皆無であったこと、看板などの文字からロシアの街と思われることがイリアの口から語られ、一同を驚かせた。

 桐子が、やれやれといった風にツインテールを揺らせる。

「やっぱり異常だね。まるでゲームの世界みたいだ」

 利恵はスマホの画像を見ながら唸る。

「あの雪景色は本当だったんだ……」

 2日目に山登りをした時に見た雪景色。それは利恵の他に桐子と愛衣も目にしていた。

 愛衣が髪を掻き上げながらソファに深くもたれ掛る。

「こんな小さな島に四季が同居してるなんて……」

 愛衣の言葉を受けて桐子が推測する。

「ボクが思うに、ここは創られたモノというよりも別々に実在する場所を何らかの力でくっつけたモノなんじゃないかな」

 利恵が投げやりな口調で尋ねる。

「何らかの力? まさか魔法で?」

 桐子は真顔で頷く。

「うん。ありきたりの表現だけど。でも、そうとしか考えられないよ。だとしたら住人が消えているのも理解できる」

 利恵は絶望的な顔で頭を抱える。

「それが事実ならここから脱出しても無駄ってこと?」

 利恵は筏でこの島を脱出する計画を桐子に話していた。が、ここが異世界となると仮にこの島を出て海を渡ったとしても元の世界に戻れる保証は無い。

 姉御肌で冷静な愛衣も流石に参っている様子で呟く。

「帰れないのかしら……死ぬまで」

 皆の話をぼんやり聞いていた和佳子がハッとして口走る。

「食べ物! 食べ物が無くなったらどうしよう!」

 それを聞いてイリアが答える。

「掻き集めるしかないわ」

 雪の街には建物が多いことから、もしかしたら食料もあるかもしれない。だが、サーベルタイガーがうろついているので作戦を練らないと危険だということをイリアは説明した。そして、少し迷った後、もうひとつの懸念材料を口にした。

「それと悪い話がもうひとつ。病室で見たの。『死ね』の落書きを。それと誰かが戦ったような跡があったわ」

 それを聞いて桐子が神社の荒れた様子を思い出す。破壊された狛犬や血の手形、本堂の焦げた跡など……。

「それはボク達ではない誰かが殺し合ったんじゃないか?」

「私もそう思う。私達より先に誰もあの町には行っていない」

 イリアの冷静な顔つきに愛衣が疑問を持つ。

「イリアさんはなぜあの病院へ? どうして自分の武器があると分かったのかしら」

 愛衣の質問を受けてイリアは智世に目配せした。智世がその意図を理解してスケッチブックを開き、地図のページを披露する。

 イリアが説明する。

「バツ印が墓……つまり武器がある場所。雪の街の病院。ここにもバツがあった。自分のものという確信はなかったんだけど、たまたま私のだったみたい」

 智世の描いた地図を見つめていた桐子が首を捻る。

「これは……どこでこんなものを?」

 利恵が眼鏡の位置を直しながら凝視する。

「確かにここの地図みたいだけど……」

 智世に代わってイリアが2人の疑問に答える。

「彼女には瞬間記憶の能力があるの。覚えてる? 乙葉って子がスマホで撮った写真を見せてたのを」

「そういえば……」と、愛衣が2日目の晩の出来事を思い出した。

 桐子は瞬間記憶というワードに「そんな能力が実在するなんて! 凄いよ!」と、興奮気味に智世を褒め称えた。

 利恵がじっくりと地図を見て頷く。

「本物だわ。ここの地形と合ってる。私達が見つけたお墓の位置もピッタリ」

 これまで発見された事実との整合性から皆、それを信じた。

 そんな中でふと、桐子が険しい表情を見せる。

「なるほど。だからスマホを見せなくていいと……」

 桐子はモエが乙葉にスマホの情報を見せないように指示した時のことを思い出していた。そしてその行動に不信感を抱いた。

「こんな大事な情報を隠そうとするなんて……何を企んでるんだ?」

 桐子の言葉にイリアがコメントする。

「武器の位置を隠すことで優位に立とうとしたのかも」

「そういうことになるね」と、桐子は頷く。

 そこで利恵が口を挟む。

「ちょって待って! じゃあ、あの子達は戦うつもりなの?」

 桐子は利恵の目をじっと見つめながら答える。

「あの子達もどこかで見たんだと思う。過去に誰かが戦った痕跡を」

 桐子達が見た神社、イリアが訪れた病院、それ以外にも誰かが争った形跡が存在するのかもしれない。

 利恵が能面のような顔つきで呟く。

「許せない」

 利恵の表情が急変したのを目の当たりにして桐子が慌てる。

「いや、まあ、ボク達に敵意があったとは限らないよ。モンスター対策ってこともあるだろうし……」

 だが、桐子がフォローしても利恵の怒りは収まらない。

「許せない! ヘレンさんまで傷つけて!」

 何よりも協調性を重要視する利恵だからこそモエ達の行動に対して怒りが湧いてくるのだろう。利恵はしばらく考えてから提案した。

「私達も武器を探しに行きましょ!」

 その言葉に桐子が戸惑う。

「いや、ちょっと待てよ。それは止めた方が……」

 桐子は既にモエとヘレンが互いに武器を使って戦ってしまったこと、それがエスカレートすることを懸念している。

 しかし、利恵は頑として譲らない。

「ううん。武器は必要よ。モンスターからの自衛のため。そして抑止力。互いに武器を持っていたら変な真似はできないはずだから」

 愛衣はいつもの冷静さで賛成の意を示す。

「利恵さんの言うことに一理あると思う。敏美のこともあるし」

 愛衣が賛成なので和佳子もウンウン頷く。

「うん。私も武器を持ってくるわ」

 和佳子の武器はトライデントだ。それは既にビーチで発見されていた。

 イリアは軽く溜息をついて頷く。

「そうね。無いよりはあった方がいい。それに皆で協力すればあの街も探索できるかも」

 それを聞いて智世が不安げな表情で首を竦める。が、反対という訳でもなく、コクリと一回だけ首を縦に振った。

 皆の反応を受けて利恵が立ち上がる。

「決まりね。じゃあ、二手に別れて武器を探しに行きましょ!」

 武器の探索という方針でまとまった面々だが、そんな待合室の様子を盗み見している者の存在には誰も気づいていなかった。

 ロビーの柱の陰に隠れて一部始終を盗み聞きしていたのは双子の姉の望海だった。昼前にこっそり南風荘に潜入していた彼女は、利恵達が打ち合わせすることを目撃してスパイすることにしたのだ。そして地図の存在、モエ達に対抗して利恵達も武器を手にしようとしていることを聞いて不敵な笑みを浮かべた。

「そういうことね……」


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