ブラックホールとあか
ピンク色のベッドに座ってピンク色の手鏡を見ながら、ハート模様のブラシでうすむらさき色の髪を梳く。押さえていないと宙にふわふわと広がっていってしまうけれど。さらさらの髪が頬にあたると少しくすぐったくて気持ちがいいし、何より梳くのと梳かないのでは、眠るまでのもちべーしょんが全く違う。あかいリボンを髪に飾れば、今日もわたしの出来上がり。
うすむらさき色の宇宙空間には、大きなブラックホールがある。わたしのベッドはそれにゆっくりと吸い込まれていくけれど、大体五つ先の煌めきが消えた頃に逃げれば大丈夫。どういう原理なのかはわからないけれど、そのおかげでわたしはいつでも安心して夢を見られる。わたしが特別なのか、それともブラックホールがみのがしてくれているのか、それはわからない。
でも、それをくりかえしているうちに飲まれていった煌めきは、いったいどこに行くのだろう。ブラックホールの中には何があるのか、何もないのか、終わりなのか。そもそも、終わりとはなんなのだろう。
流れてきたイチゴチョコレートカップケーキを手づかみでたべる。レディとしてあるまじきこういなのかもしれないけれど、今回はなぜだかフォークもスプーンも流れてこなかったのだから仕方がない。ちぎって捨てたあかい包装紙はうすむらさき色の宙をしばらくただよったあと、煌めきにまじってブラックホールの中へと消えていった。