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ジュエル☆クイーン♡スクーリング  作者: 葉月 優奈
九話:兄と妹とフローライト
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湯神子はゲームをしなければ、物静かなどこにでもいる中学生だ。

ただ格闘ゲームが得意なだけで、それ以外特徴のない湯神子は落ち着いていた。

従弟同士で廊下を俺と手をつなぎながら歩いていた。

純花のようなうるさい奴と違って、大人しくなって扱いやすいが。


学校は相変わらず祭一色だ。一時間が経過しても人の往来が激しい。

食べ物屋の看板や、講堂でやる演奏系部活の演目。

他にはお化け屋敷や、イベント系の出し物まであった。


「すごいねー」

やはり感情が全くない湯神子。感受性のパラメーターはきっと一桁だろう。

ただ精神力のパラメーターは凄そうだ、90はあるかも。


「中学の文化祭より規模がデカいだろ」

「規模は当学校比五倍です。入場者数の計測結果は後日ファックスで送ってくれますか?」

「それを見てなんになるんだ」

「勉強です」

でも、湯神子はちょっとズレているところある。

そう考えると……純花とあまり変わらないのかもしれないい。


「さて、たこ焼き屋、イカ焼き屋、お好み焼き屋、ドテ焼き屋っていろいろあるけどどこに行く?」

「食べ物ばかり、焼くの好き?」

「そういえばそうだな。なぜか焼き系の店がここは集まっているな。

それとも意図的に集めたのか?」

「それより、ここがいい」

真っ直ぐ湯神子がさした看板は、湯神子にとって「なるほど」と思えた事だった。

俺と湯神子は、近くにあったその部活の部室にやってきた。

その部活の部室は、パソコン部から割と近くの空き教室を使っていた。


「ようこそ、『ゲーム研究会』へ」

それはゲーム研究会という同好会。テレビゲームをやるだけの楽しそうな同好会。

俺は入学当初に一番行きたかったが、残念ながら定員オーバーで入れなかった同好会だ。

同好会の方針で定員は五名までらしい、俺の部活と同じか。

そこに出てきたのが、ゲームキャラにコスプレした面々がゲームをしていた。

それを見るなり、少し目がキラキラと輝きだす湯神子。


「おおっ、これって『ジャンキー』のコスプレ?」

革ジャンの金髪男、ジャンキーは『パンチャファイター』のキャラクター。

だけど湯神子は、さらに奥にずんずんと進んで行って忍者のコスプレをした人間を見つけた。


「ふむ『影絵丸』のコスプレとは渋い」

「何っ、『影絵丸』を知っているのか」

その忍者の男は、湯神子に興味を持ってじっと見ていた。

黒頭巾から覗いた目は鋭い……一応ウチの学校の生徒だよな。


「部長、影絵丸はレアキャラですよ。それを知っているのは……」

「だが、所詮は雑魚だろう。隠しキャラが強いという幻想にしがみつく弱者だ」

「ほう、言ってくれるな。そうとも拙者は『影絵丸』使いだ。お主、名はなんという?」

「我が名は『東の魔術師(イースト・マジシャン)』と言おうか」

「なかなかかっこいいな。もちろんパンチャファイターを……」

「いいだろう」

格好をつけて話す湯神子は、少しだけゲーム同好会の部員と同テンションだ。

やはり湯神子も、また変わっているかもしれない。

さっきまでの大人しさはない、なんだよ『東の魔術師』って。

おまけにゲーム同好会の部員が、なんか湯神子見ながら変な噂しているし。


(誤解しないで、中学生の中二病だから)

などと俺はツッコミだけを入れておこう。


「ふむ……どこかで聞いたことがある名だがよかろう。

ではお主とは拳で語り合おうではないか、丁度対戦相手を探していたのだ」

「後悔するぞ、影絵丸」なぜか高笑いの湯神子。

まるで戦友と書いて『トモ』に出会えたかのようなテンションだ。


「勝負は……通常は五本制だが長いから三本制でよいな」

「構わぬ」

すぐさま湯神子は、いつも通りテレビの前に正座していた。

椅子はあるけど、なぜか椅子の上に正座だ。

そのままPZ3のコントローラーを持って、手際よく構えていた。


「言っておくが、私は強いぞ『影絵丸』だからな。

岩本学内最強の男だ……女子供と言えど容赦せん、戦いとはそういうものだ」

「学内とは随分狭いところで戦っておる。

世界は広いぞ、もっと広いところで戦う勇気はないのか?」

「言わせておけば」

中学生の挑発に乗った学内一強い(自称)のゲーム研究会部長。

少し嬉しそうな顔に変わった湯神子のパンチャファイターの戦いが始まった。

その時、一人の部員が叫んだ。


「もしかして『東の魔術師』って、パンチャ八傑の一人じゃ!」

その叫び声が、くしくも戦闘開始の合図になった。



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