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ジュエル☆クイーン♡スクーリング  作者: 葉月 優奈
九話:兄と妹とフローライト
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三時間後、校内放送で文化祭の開始が合図された。

俺たちパソコン音楽部の発表は体育館で行う。

先日の順番決め抽選会が行われて……結果は最悪な順番だが。

そんな今日は岩本祭、年に一度の祭りだ。

花火が打ちあがり、岩本祭の開催を宣言する校内放送が流れる頃、俺は部室で頭を下げていた。


「ありがとうございます、みんな」

パソコンを前に、みんなに深々と頭を下げていた。

中央にいた部長に感謝、部長は既に席を立っていた。

昨日、佳乃のことであれだけ怒っていた部長も俺に対して拍手していた。


「やっと終わったな、菅原」

「はい、みんなのおかげです」

「じゃあ、俺は何を奢ってもらおうかな?」

早速工藤先輩が、値踏みをすべく文化祭のパンフレットを見ていた。


「今日は祭りだ、仕事はしないで遊ぼうではないか」

「おお、その通りだな。後で奢りの方は考えとくよ」

工藤先輩はニタニタ笑っていた。工藤先輩ってかなり大食いだったな、大丈夫か俺の財布。

財布の心配をしつつ、俺たち部員は一度部室を出ることにした。


「じゃあ十二時半に部室集合ってことで」

部室前のドアで俺たち部員が分かれた。

一人になった俺は、すぐに廊下を歩くと廊下の飾りつけが終わっていた。

佳乃との夢で見たような祭りの雰囲気が、廊下にも伝わっていた。

生徒はもちろん、一般の大人の姿もちらほら見えた。


(さっすが文化祭だな)

俺はポケットに取り出した文化祭のパンフレットを、見ながらじっくりと考えていた。

こう見えても文化祭では念入りに計画を……練る時間がないではないか。

時間が三時間で回れるところは限られるから、一つ一つ吟味していく。


(楽しむか、少しだけ。とりあえず自分のクラスは最後にして……)

そんな雰囲気を楽しむために、部室前の廊下でパンフレットを見ること五分。

俺に声をかけてくる女がいた。


「あら、光輝。こんなところで何しているの?」

「あれ、母さん」

そこに出てきたのが母親と湯神子が来ていた。

ブラウスを着て、いかにも保護者って感じの母親。


「お兄様、来ていたんですね」

それから当り前のことを言ってきたのは、黒い長袖のセーラー服を着てじっと見てきた従弟の湯神子だ。

相変わらず感情を表に出さずに淡々としているな、湯神子は。


「湯神子も来たのか」

「はい、楽しみにしました」表情は全く変わらないで言う。

「ええ、ユノちゃんは光輝の活躍が見たいでしょ。そうよね?」

「はい、おばさん。私は岩本祭を見に、わざわざ富山まで来たようなものです」

湯神子が相変わらず抑揚なく言ってきた。

なんというか超しらじらしいんですけど。


「本当か?」

「はい、高校の文化祭が楽しそうですね。私は行くことはないでしょうけど」

「感情こもっていないんだけど」

「しょうがありません、こういう性格ですから」

「母さんもユノちゃんに誘われてね。光輝が何をやっているのか気になるわぁ~。

最近ずっと帰り遅いでしょ、部活だって言っているから」

「ああ……そうだけど」

ちらりと思いだされたのが『ボイカロイト』の『KUNI』というCG少女。

意外と母さんはオタク趣味に寛大だから、でも発表となるとなんか照れくさいかも。


「俺の部活は昼の二時半に部室集合だから、まだ時間はあるし」

「そうね、じゃあ光輝のなにかオススメがある?」

「えと……」

「あら、菅原さんじゃない」

そう言いながら廊下ですれ違ったのが、母親の知り合いに出くわした。

年齢的にも四十代の主婦グループで、母親はあっという間に取り込まれた。

母親の顔はかなり広い、社交性のパラメーターは全部高い。

純花の両親とも仲がいいのはもちろん、他のクラスメイトの母親同士も仲良かったりする。


逆に言えば、保護者の生徒と俺の仲がそんなによくなかったりするが。

社交辞令のあいさつの後、すぐにおしゃべりモードに入ったようだ。俺は母に気遣った。


「行ってきていいよ」

「えっ、ああ、ごめんね。ユノちゃんをお願いできる?」

「うん、そのつもり」

だから俺は自然と空気を呼んでいた。

あっという間に母親は主婦グループとの中に吸収されていく。


「いこか、湯神子」

「いいお母様だね……お兄様のお母様」

「えっ?ああ、八方美人なだけだよ」

俺はそう言いながら、湯神子の前に手を差し出した。


「手をつなぐぞ、迷子になるだろ」

「はい」

俺は従弟の湯神子と一緒に、学校を見て回ることになった。

掴んだ湯神子の手は少し冷たかった。


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