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ジュエル☆クイーン♡スクーリング  作者: 葉月 優奈
八話:地下のアイドルとフローライト
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~~エメラルド城・フローライトの部屋~~


これがジュエル☆クイーン♡スクーリング、そして三度目のゲーム開始だ。

三度目であっても、俺は自宅で始めるのにいつも緊張していた。

最初はあまり抵抗がなかった、純花も戸破もよく知っていた人間だから。

でも佳乃は違う、俺は佳乃のことをほとんど知らない。

何気なく指輪を渡しながら、後ろめたさや罪悪感があった。


それでも俺は、ジュエル☆クイーン♡スクーリングへ彼女を参加させた。

(ごめん……佳乃)

そう心の中で罪悪感にさいなまれながら。


最初に出てきた文字は『フローライト』、これが指輪だ。

関係ないけど佳乃は結構スタイルいいからな。

穏やかでかわいいし、足は細いし、胸も……って何を俺は期待しているんだ。

などといいながら最初の画面を見て、驚いてしまった。


見た目は青い部屋。壁、床、窓に天井までも青で統一された部屋だ。

その中に置かれた家具は、白や黒を基調としていた。

綺麗だけどどこかもの寂しさのあるそんな部屋。


「泣いて……いる?」

そこには裸だけど体育座りで泣いている佳乃がいた。

頭を下げて、嗚咽を上げて大声で泣いていた。

感情が爆発している彼女は、小さな体を震わせていた。


「私なんか……」

「佳乃?」

「えっ」

ふりかえった彼女の目は涙が見えた。目に涙をあふれさせながら。

慌てて涙を拭きながら、佳乃はいきなり俺から距離をとった。

それは純花や戸破と違う対応、警戒されていた。


「どうしたの?」

「来ないでください!」

「来ないでって……俺は一応大臣なんだけど」

「ご……ごめんなさい」

そう言いながらも、彼女は距離をしっかり開けて俺を見ていた。

まるでライオンに怯える小動物のようだ。


「君の本当の名前を聞いていないね」

「フロー……」最後まで発音したらしいが最後まで聞き取れない。

「フロー?」

彼女は明らかに怯えていた、警戒さえされていた。

俺はゲーム画面前で頭を掻いていた。

(困ったな、これは会話にならない)

半ばあきらめかけていた俺に、救いの手が差し伸べられた。


「フローライトじゃよ」

それは足元あたりから聞こえてきた。

見えた先には青い三角帽の小人、ドワ太だ。

そのドワ太も彼女同様、なんだか元気がない様子だ。

ドワ太を見るなり、佳乃と同じ姿のフローライトはさらに縮こまっていた。

体育座りをしたフローライトは、頭をつけてずっと泣いていた。


「まずは、やっとわしの担当する子を育ててくれたのじゃな。礼を言おう」

「はあ、担当……ねぇ」

誰が誰の担当か俺はよくわからないが。

それでも落ち込んでいるドワ太は、セクハラドワ太や襲い掛かるドワ太とは様子が違う。


「じゃが安心するのはまだ早い。フローライトはある問題を抱えている」

「ある問題?」

「フローライトには死亡フラッグが出ないのじゃ」

「出ないか……いい事じゃないか」

「そうじゃな……だが女王にするにはなかなか不憫なものじゃよ。

よく言うだろう、苦労は若いうちにしろってな」

「随分古臭い格言だ、俺はそれが正しいとは思わない」

俺は呆れた顔でドワ太を相手していた。

まあ小人と言えど、老人だから少し落ち着いていたが。


「という事は問題が彼女はないということ……じゃないのか?」

「それはない、むしろ彼女が大臣に心を開いていないのだろう」

痛いところをつかれて、俺は頭を抱えた。

確かに佳乃のことを俺はよく知らない。クラスメイトでも名前を知っていても話すことがない。

好感度ということを考えれば、顔見知り程度だ。


俺は佳乃と知り合ったのはつい最近だ。

クラスにずっといたのは知っていたが、佳乃はクラスではアイドルだ。

一方の俺は数字オタクで、しかも変り者の純花と恋人だ。


「ただ、佳乃は6が好きだならな。おおらかなのは間違いないさ」

「なんだそれは?」

「お前には永遠に分からないだろう」

俺の質問にドワ太がひいていた。

ドワ太の引きっぷりを見て、俺は両手を広げて首を横に振った。


「そんなことより佳乃を助けるには?」

「まずは近づく事が大事だろう」

「そうだけどな……近づくにはどうすればいい?」

俺が近づこうとすると、佳乃(フローライト)が座ったままで後ろに下がっていく。


もう一歩足を踏み出すと、佳乃が尻を動かしながら逃げていくように離れた。

明らかにこっちを警戒していた。

フェイントをかけても、佳乃は俺からどんどん離れていく。

全く距離が縮まらない、同じ距離感で泣いていた佳乃。


「ダメだ、距離が縮まらない」

「長い戦いになりそうじゃな。だが応援するぞ……きっとお主ならできる」

「なんと無責任な……お前は本当にヘルパーか」

「ヘルパーじゃ、だから助けん」

ドワ太は都合のいいことを言いながら、やはり佳乃と同じように俺から離れていく。

取り残されたのは水色の部屋に俺と佳乃。


「フローライト、俺は君についた新米大臣だから、こっち向いて……逃げないで」

そう語りながら近づいて行った。それだけしか俺には手段がなかったから。

困った顔で言う俺に対し、フローライトはやはりこちらを警戒していた。



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