75
ベンチに座らせた佳乃は、呼吸を乱して大きく息をしていた。
持っていた買い物袋を下ろして、熱くなった佳乃を見ていた。
脳裏に思い出されたのが部長のセリフ。
(佳乃は体が弱いんだ)
俺と佳乃はバスの停留所で一緒に座っていた。
顔が真っ青だ、呼吸は完全に激しい。まるで死んでしまうかのような佳乃の弱弱しさ。
(とりあえず横に)
俺は佳乃を横にした。呼吸は少し安定したが顔は青いままだ。
「大丈夫か?」
俺は持っていたハンカチで佳乃の顔を拭いていた。
急に流れ出る汗は、佳乃の明らかな異変を感じていた。
「はい……平気です」
「平気じゃないよ、佳乃って体が弱いんだろ。これをかけて休んで」
俺は着ていたコートを敷布団の様に佳乃にかけてあげた。
「ちょっと弱いところを……見せちゃいましたね」
気弱く笑顔を見せた、こんな状態でも笑顔を見せる佳乃はあくまでも健気だ。
それだからこそ、佳乃を何とかしたいと思えた。
そんな佳乃はビニールを探していた。
「買ったものを……持って帰らないと」
「ああ。これか」
俺は佳乃が落としたビニールを手にしていた。
結構重いな、これ。中を見るとトウモロコシがいっぱい入っていた。
「少し休んでいろ、クラスにこれを持っていけばいいのか?」
「……うん。みんなが待っているから」
佳乃は力なく頷いた。やはり呼吸が乱れて苦しそうだ。
「分かった、俺に任せろ」
「……ありがとう……」
だけど佳乃はそれを見たのが、しずかに目をつぶった。
バスの停留所で、佳乃は青い顔をしたまま横になっていた。
この時、俺は部長の言葉を思い出した。
(佳乃は見守らないといけない存在)
そんなことを考えながら、俺は佳乃のビニール袋を運んでいた。
そのまま自分の教室に帰って戻った時、俺はショックがあった。




