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ジュエル☆クイーン♡スクーリング  作者: 葉月 優奈
六話:無償の愛とアズライト
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純花の言うとおり、市街地から少し離れたところを歩いていた。

人気が無いこの場所、周りは畑が見えた。

田園地帯という風景が広がっていて、どこかの企業の倉庫があった。


薄暗い倉庫の中で、戸破と俺はすっかり不良連中に取り囲まれていた。

中央にいたのが榊。

榊を見つけるだけで、俺は自然と震えと高揚感があった。


「榊!」

「ああっ、何の用だ?」

周囲の不良たちは五人。俺をこの前ボコボコにした奴らだ。

そんな不良を束ねたリーダーの榊が、俺の方に振り返っていた。

まさに金髪に口ピアス、ジュエル☆クイーン♡スクーリングのサカキそのものだ。


「お前と決着をつけに来た」

「決着?お前か……まだゲームを続ける気か?」

「ああ……Jクイ、ジュエル☆クイーン♡スクーリングを取り返しに来た」

「やっと気づいたか。俺が本当のプレーヤーだという事」

そういいながら、榊はまっすぐ俺の方に歩いてきた。

金髪の髪がなびき、顔には迫力があった。


「戸破はおかしくなっていない、元に戻っただけだ」

「なんだよ、つまんねえ。もう少し遊ばせろよ、戸破はこっち側の人間だろ」

「榊、悪いけどあたいはもうそっちの人間になれない」

「はっ?おいおい、冗談はよしてくれよ。裏切りって俺、嫌いなんだよ」

「もう、戸破とは関わらないでくれ」

次の瞬間、俺は深々と頭を下げた。

頭を下げた俺を苦笑いしながら榊が見ていた。


「おい……馬鹿じゃねえの、俺たちと話し合いで解決すると思ってんの?」不良の一人が騒ぐ。

「思っていなくても戸破からは金輪際、手を引いてくれ」

「そうだな、いいぜ」

さっきのセリフをあっさりと撤回した榊。

そのまま、ゆっくりと俺のそばに歩いてきた。


「俺は馬鹿な女はいらねえ、そうだろ戸破」

「くっ……ああ。そうでいいさ」

グッとこらえて榊の挑発に乗らなかった戸破。

榊は素直すぎる言葉を言いながら俺の方に歩み寄ってきた。


「なあ、顔を上げなよ……兄さん」

俺が顔を上げた瞬間、躊躇なく俺の顔面を殴ってきた榊。

よけることなく、目をつぶってしまった俺は、そのまま無様に後ろに飛ばされた。

それを見るなり、不良たちの嘲笑が聞こえてきた。


「やべえ、パネぇよ。マジ切れてるぜ、榊さん」はやし立てる不良。

榊はそのまま倒れた俺の腹を蹴り飛ばした。

痛い……というか苦しい。

思わず口から吐き出しそうな、苦痛が俺を襲った。


「熱いねえ、そういうの」

「熱くて結構、だけど戸破にはこれ以上……近づくな!」

「戸破には手を出さねえでやるよ、が条件つきでな」

「条件?」

「兄さんよ、お前はジュエル☆クイーン♡スクーリングでアズライトを殺せ」

「なんだよ……それ」

おののいた俺はその意味をはっきり知っていた。

その言葉を聞いて、戸破が不思議そうな顔を見せた。


「『死亡フラッグ』が立っているだろ、殺せばいいんだ。

今の俺にはできないが、お前にはできる。どうやらあのじじいが妨害しているみたいだ」

「それは……できない」

榊の挑発に、戸破が俺と榊を交互に見返した。


「兄貴……それは?」

「ゲームだよ、DSPのゲーム」

「ふーん、兄貴がいつもやっているヤツか」

「そう、ただのゲームだよ。ただの。だから殺せるだろ」

「できるわけない!」

「そうか……そうだよな」

やはり小ばかにしたような反応の榊。

俺はじっと榊を見ながら立ち上がった。だけど俺の目の前に榊が立ちふさがる。


「安心しろ、お前を殺したら戸破もあちらに送り込んでやる」

不敵な笑みを浮かべて、榊は俺の腹を踏みつけた。

すると戸破が榊に拳を向けた。


「やらせねえよ!」

戸破は榊に対して拳を向けて殴る。が、榊に戸破の拳があっさり止められた。

「なあ、戸破。お前は俺が喧嘩の天才だってことを知っているだろ」

それは勝ち誇った嘲笑。榊は戸破に笑みを浮かべていた。

その笑みは背筋を凍らせるほどの恐怖を与えていた。

それと同時に榊は後ろの不良たちに指示を出していた。

不良たちも空気を読んで戸破をすっかり取り囲んでいた。



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