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俺は翌日学校に行く。
徹夜だから昼間はかなり眠かった、俺の精神力では授業を聞くことがやっとだ。
頭がぼーっとするのが、完全な寝不足だ。こんなに夜遅くまで起きたのは高校受験以来だ。
いつの間にか放課後、夕方になって俺はなぜかファミレスに来ていた。
チェーン店のファミレスの夕方は思った以上に人が少ない。
客は学生がほとんどで、ジュースで俺は粘っていた。
そんな俺のテーブルには、一人のウェイトレスが出てきた。
「まだ粘る気?」
早速客である俺に文句を言うのはファミレスでバイト中の純花だ。
「ああ、純花。おまえに会いに来た」
「そう、嬉しいわ」
純花はまんざらでもなさそうだ。
リア充を強要する彼女の純花は、上機嫌に変わった。
「さて、お前に頼みがある」
「何?告白?」
「違う、そこまでまだ深く俺たちつき合っていないだろ」
「そっか、それもそうねぇ」
純花はやっぱり単純だ。
そんな俺は、前に純花が言っていいたことを確かめようとした。
「純花、調査の方はどうだ?」
「なかなか苦労したわ、メールで送ったでしょ」
「そうだな、写真に写っているのがそうか」
「ええ、彼よ。間違いない……来る時間は、大体あたしが上がる三十分前、だから九時ごろかな。
バイト上がってからあたしも尾行していたのよ」
「ごくろうさん」
「はい、バイト代」
純花は俺の目の前に掌を突き出してきた。
何かをねだるような目で、俺をじっと見てきた。
「何、これ?」
「バイト代、あたしのよ」
「はぁ……それが大好きな彼に対する頼みか?」
「何言っているの、彼氏だろうが、彼女だろうがお金の管理は大事よ」
「わかったよ、いくらだ?」
「へへん、三時間でここのバイト時給が890円だから」
「2670円か、がっちりしてら」
そう言いながら俺はファミレスで余計な出費をしていた。
それと同時に俺の財布からお金が消えた。
「じゃあ、早速メール送るわね」
純花はすぐさまウェイトレスのポケットからスマホを取り出した。
スマホを使って、メールを送ってきた純花。
それから俺の方にもメールが届いた。
「なるほど……画像つきか。結構近くまで寄ったんだな」
そこには夜道、五人の人間がこそこそと歩いていた。
近くの酔っ払いを見つけてはカツアゲ。その中に戸破の姿も見えた。
戸破が心なしか笑っているのが俺にとってはショックだった。
「ちょっとショックだったけどヒバリン、不良さんなんだね」
「ああ……髪型は初めて会った時からそんなに変わっていなかったけどな」
「で、こいつがボスよ」
純花がいつの間にか俺の背後からスマホを覗き込んできた。
中央にいたのは紛れもなく榊だ。
俺は榊をじっと見ていた。何より彼は、DSPを持ったまま一人だけ後ろを歩いていた。
「DSPを持っているな」
「本当ね、何か……あれ?」
そう言いながら俺は戸破の指が白く光ったのが見えた。
戸破の人差し指……まさか指輪。
そんな榊たちはサラリーマンからカツアゲしたのち、町はずれの方に歩いていく。
そして、彼等は倉庫らしきところに入っていった。
「ここって?」
「市街地の少し先にある場所だけど、彼等の根城みたい。さすがに中には入らなかったけど」
「地図が分かるか?」
「う~ん、ちょっと待ってね」
そう言いながらウェイトレス純花は、急いで俺のテーブルから離れていった。
戻ってきたときは、彼女は地図を持ってきていた。
そんな純花に俺はもう一つ甘えることにした。




