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ジュエル☆クイーン♡スクーリング  作者: 葉月 優奈
六話:無償の愛とアズライト
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リビングの時計は時を刻む。

真夜中のリビングで俺と戸破は難しい顔で向き合っていた。

真剣な顔を見せている俺と逆に反笑いの戸破。


俺には一応押しかけ彼女がいる、リア充を強要するとんでもない女だ。

そんな女がよく言う言葉が『愛』という単語だ。言うだけでかなり恥ずかしいが。

だけどそれでも戸破の興味をひければ十分だ。半笑いで戸破が俺を見ていた。


「馬鹿じゃねえの、『愛』だって、何言っているんだよ。

彼女でもできて頭でもおかしくなったんじゃねえか?」

「ああ、出来たさ。前に家に連れてきただろう」

「あいつか……お似合いだな。てっきりゲームの中の恋人かと思った」

「ゲームに恋人はいない、パラメーター要因だ」

「そういえば兄貴はそうだな」

と戸破の目尻が少し緩んだ気がした。リビングの空気が和らいでいた。


「戸破こそ、恋人はいるのか?」

「いるわけ……ねえよ」

「濁したってことは55%の確率で怪しいな。

戸破は昔みたいに髪を元に戻せば、かわいいところもあるし」

「かわいかねえよ、あたいはむしろクールでかっこいいんだ」

「ま、そういうところもある」

ちょっと見た目のことを言われて、戸破は照れていた。

戸破も女の子だ、好きな人の話になると自然と頬が緩む。


「で、愛ってなんだよ?」

「俺もお前も同時に同じだけの愛を受けて生きてきた」

「は?誰に」

「親だ」

「親?馬鹿なこと言っているんじゃ……」

「親はな……無償の愛を与える存在なんだ!」

俺はそれでも戸破の言葉にかぶせて言った。

戸破はその言葉を聞くなり、首を傾げて急に不満そうな顔を見せていた。


「無償の愛だと……馬鹿にするな!」

「俺は大まじめだ!親もそうだ!」

「兄貴は何もわかっちゃいない、あたいと兄貴は全然違う。

頭の良さも、料理も、水泳さえも。全部あたいは劣っている」

「水泳負けたのは悔しいのか?」

「あたりめえだろ!」

そう言いながら、俺に持っていた包帯をブン投げてきた。

俺はその包帯をしっかりと右手で受け取った。


「ああ、当り前だ。でもそれは体格差だと俺は思う」

「それでも負けた事には変わらない……」

「男と女、中二と中三、負ける要素は充分にある。

この時期の体は成長期だ、クロールのタイムだって変わることがある。

それにあの一戦負けて、お前の全てが否定されたというのか?」

「ああ、そうだよ!そのおかげで周りが全て変わった」

戸破は堂々と怒鳴った。それと同時にリビングの空気がピリピリしたものに変わる。


「何がお前の全てだ?水泳か?」

「あたいは頭もよくない、陸上も苦手だ、友達も少ない。

そんなあたいが、兄貴に勝つには水泳しかなかった。あたいはずっとそう思っていた」

戸破は悔しそうな顔で歯をギリギリさせていた。

だけど俺はそんな戸破に優しいまなざしで見ていた。


「でもそこで俺に水泳で負けて親は見捨てたか?」

「ああ……あたいは劣等生だと思って見下したさ。

結局人間は比べるのが好きなんだよ、あたいの全てが兄貴に何一つ及ばないんだ。

こんなあたいは、何のためにここにいるんだ?なぜここで生きているんだ?」

「さあな、お前が何のためにいるのかは関係ない」

「なんだと、あたいの居場所はどうなってもいいのか!」

「それでもお前の居場所はここだ」

俺は静かなリビングを見回した。

言った後に静かになるリビング、俺と戸破しかいないリビング。

ソファーにテレビ、カーテンが閉まったどこにでもある家庭のリビング。

それでも親子喧嘩の傷跡がソファーや家具にいたるところにあった。

薄暗いリビングで、俺と戸破はじっと見つめていた。

戸破は俺から目を逸らして、気まずそうな顔を見せていた。


「あたいの居場所が、ここなわけ……」

「無償の愛だからな。それが俺たちはここにいられる理由だ」

「無償の愛って……なんなのさ?」

「親が子を愛することだ。親は子が生まれた時に愛情が生まれている。

それが無償の愛、何の見返りも求めない、何の要求もしないが愛し続けるんだ」

「無償の愛……あたいも愛されているのか?」

「当然だろう、俺たちの親は平等に愛しているからな」

俺はやっぱりそれを言い張った。

それと同時に、戸破は力がぬけたようにその場にしゃがみこんだ。

胸に手を当てて何度も『愛』をうわごとのように呟く。


「あたいにもある……無償の……愛」

それは戸破が今までのことを思い出して、愛を感じた瞬間だった。

そんな小さくもかわいい妹に、俺は何年振りかに頭を撫でてあげた。



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