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リビング中央には、ガラスが欠けた時計がコチコチと時を刻む。
静かな夜、俺と戸破はずっとアルバムを見ながら話していた。
戸破は自分の感情を混ぜて話していた。
それからだろう、戸破は突然水泳をやらなくなったのは。
母親も戸破のことを心配していたが、ジュニアチャンピオンだった戸破は水泳部をやめた。
何気ない俺の練習で戸破は変わってしまった。
「戸破、あの時は……」
「うぜえ!あたいは水泳なんか二度とやらない!」
戸破は俺にめがけてアルバムを投げ出した。
睨んだ目は、俺に対するいらだちかをぶつけていた。
リビングの前で、立ち止まった戸破の体が震えていた。
「あたいは全部負けた、何一つ勝てなかった」
「勝つって、俺にはそんなつもりは毛頭ない」
「兄貴に勝たないといけないんだ!何か一つでもいい、勝ちたいんだ」
「なんでそんなことを言うんだ?」
「うるさい!」
険しそうに言う戸破を俺は立ち上がって背中に立つ。
戸破は怒るわけでもなく、ただ悔しがっていた。
「戸破、謝っても無駄だと思うが……」
「謝るなよ、兄貴はなんでも持っているスゴイ奴だってことは分かっているから」
「俺は何も持っていない」
「嘘だ!」
きっぱり言い放った戸破。振り返って俺を突き飛ばした。
体を起こして俺はじっと戸破を見ていた。
「頭もよくて、大人しくて、器用にできて、その上にあたいの唯一の武器……水泳までできて。
全部あたいより上ならあたいは、何のために生きていけばいい?
あたいの価値は一体なんなんだよ!」
最後にそう叫んで戸破はリビングを出て行った。
俺の前に残されたのは、床に散らかったアルバムだけだった。




