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あれから三時間ほどして、俺は自宅に帰っていた。
三階建の自宅で、俺は二階の子供部屋にこもっていた。
俺の部屋はごく普通の部屋だ。
ベッドとこたつ兼テーブル(夏場はこたつをつかわないが)が置かれた機能的な部屋。
本棚はきれいに読んだ本が置かれ、両親の教育方針で子供部屋にはテレビはない。
後は学習机、そこにはいまだに九九表が貼ってあった。
九九表それは、俺にとって数字を好きになったきっかけのシロモノだ。
この数字の並びがたまらない。
十年以上年季の入った小さな学習机の椅子に座った俺は、いつも通りDSPのスイッチを入れた。
ドワ太が言う『ジュエル☆クイーン♡スクーリング』、このソフトを入れた。
(リアルがシュミレーションゲームになるって、そんな漫画のような話が……)
半信半疑でゲーム画面を見つめていた。
画面を見るとオープニングが『ジュエル☆プリンセス♡スクール』と同じ画面が出た。
オープニングは使いまわしか……数秒見てスタートボタンでスキップ。
そのあと、入学させるってアイコンが見えた。すかさずタッチペンを動かす。
~~オープニング・エメラルド城・庭園~~
(さて、入学……どうなるか?)
ちょっとだけ期待してオープニングを見ると、そこには純花の姿が見えた。
眠っていた様で目をつぶっていた。
ショートカットの純花は両腕で胸を抑えていた。
「純花だ」
顔から下に下っていくと……何もつけていない。
下半身にいく頃には俺は思わず目をそむけた。
「てか、裸じゃねえか!」
興奮して叫んでしまった俺。艶やかな肌の純花がそこにいた。
すると目をつぶっていた純花が目を覚ます。
「あれ……どうしましたか?あなたが新しい教育大臣さんですか?」
ジュエル☆プリンセス♡スクールで演じる声優の声じゃない、完璧に純花の声だ。
だけど少し丸みが帯びた穏やかな声だった。
「えと……服を……あれ?俺の声が届いている?」
「はい、届いていますよ。あたしは『セレスタイト』。
そっか、この子は純花ちゃんっていうんだ。あたしの指輪をつけてくれたの」
『セレスタイト』と名乗った純花と姿が全く同じ少女は、自分の裸体をきょろきょろと見回していた。
「あたしの指輪?」
「そう、あたしは指輪の妖精みたいなものかな……
指輪をつけてくれた人の姿、形、能力や記憶を映す鏡になるんです。
それがこのゲーム画面に出てくる、そういう仕組みなんですよ」
「へえ……なるほど」
聞けば聞くほど、見れば見るほど純花に顔がそっくりだ。
純花の声だと聞いても納得できたが、口調はかなり違うけど。
「それより、教育大臣さん……あなたの名前は……『菅原 光輝』大臣ですね」
「おう、俺は光輝だ」
「では大臣……あたしを世界一のクイーンに育ててください」
「ああ……って世界一のクイーン?」
俺は少し気になるフレーズを言い返した。
俺が知っている『ジュエル☆プリンセス♡スクール』とは違う。
ジュエルプリンセスを、ただ育てるわけではないのかもしれない。
なるほど、『Jクイ』(勝手に略称化したが)は世界一のクイーンが目的なのか。
だけどそれを見た瞬間、俺は思わず頬を赤らめてしまう。
裸の純花が画面越しとはいえ、そこにはいたのだから。
「そんなことより、何か服を着て!」
「はい、わかりました。じゃあ服をください!
バックの中から、あたしの服を取り出してください」
「あっ、アイコンからか」
言われてタッチペンでアイコンを表示させた。
操作は『ジュエル☆プリンセス♡スクール』と一緒か……ならば楽勝だ。
あまり迷うことなく、純花……じゃなくてこの世界の『セレスタイト』に服を着せた。
「似合いますか?」
セレスタイトが着たのは、ピンクのシャツに白フリルのついたスカート。
いつもの純花があまり着そうもない、かわいらしい服を着せてゲームの前で俺は頷いた。
「うん、リアルよりずっとかわいいよ」
「ありがとうございます」
セレスタイトは頬を赤く染めた、やっぱりかわいいな。
純花の顔ってそういえばこんなにアップで見たことないけど、まじまじと見るとこんなにかわいいのか。
リアルの女は嫌いだけど、このセレスタイトはかなり愛せる気がするぞ。
「それじゃあ、教育をお願いします」
「おう、任せろ」
俺は思わず返事をしてしまった、が次の瞬間ドスンと強い音が聞こえた。
強制的に俺はリアルに戻された。




