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ジュエル☆クイーン♡スクーリング  作者: 葉月 優奈
四話:不良な戸破とアズライト
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二日後、俺は学校でいつも通り数学の授業だ。

学生としての本分がある、制服姿の俺は授業に普通に参加していた。

これでも俺は真面目に学校には参加しているからな。

一限目に小テストを受けた。

小テストを終えたのち、休み時間を迎えた。


俺の通う岩本高校は、これでも富山有数の進学校だ。

偏差値の高い生徒が県内でもトップクラス。

中でも俺のいるA組は、エリートの集まるクラスであった。

将来はこの中から官僚や弁護士も出てくるだろう。


でも、俺は一介の銀行員で十分だ。

上司にたてつかない銀行員で、永遠に数字を見る日々が俺のささやかな将来の夢だ。


そんな岩本高校の校則は、偏差値が高いことからか意外と自由(フリーダム)だ。

私立の進学校の割には、校則はゆるくバイトも認められていた。

実際のところ、純花もファミレスでバイトをしているしな。

授業中でなければ、休み時間にゲームをしていても問題ない。

人によっては成人向け雑誌なんかを持ってくる者もいるが、ごく少数だ。


もちろん俺の休み時間の日課は、DSPだ。

最近は『ジュエル☆クイーン♡スクーリング』をつけ、アズライトのパラメーターを確認していた。


(水泳はさすがに92か、陸上も90とやはり高い。

まあ、勉強系は基本的に30以下だから、社交も低いがダンスは高い。

パラメーターにかなりばらつきあるな、昔から戸破はスポーツ万能だからな。

それ以上に気になるのが格闘73か……純花の方がやはり高いな)


休み時間にDSPのゲーム画面を凝視していると、いきなり俺の背後に人の気配。

殺気を感じて俺が振り返ると、そこには制服姿の純花がいた。

一瞬首関節をとろうと手を構えたが、俺が警戒して純花は構えをやめた。


「ミツノマル、またゲーム?」

「ああ、純花か」

「へへっ、ミツノマルになんだか会いたくなった」

「隣のクラスだろ、純花のクラス」

「ねえ、一時限目数学だった?」

「ああ数学、抜き打ち小テストだったぞ」

俺の言葉を聞いて、純花は少し嫌そうな顔を見せた。

そう言えば、純花(セレスタイト)は理系知識のパラメーターが43だっけ。


「純花は文系だからな、数学は苦手なのは分かる」

「でしょ、なんで数学だけ抜き打ちテスト多いのよ」

「知らん、教師の趣味じゃないのか」

「ううっ、とんだ悪趣味ね」

純花と最近は、たわいない会話ができるようになった。

元々そうなのだけど、純花の言葉をよく聞くようになった。

そんな純花は阿弥野ケ原で見せた涙も、震えも、怯えさえも今の彼女には微塵もない。

学校で見せる彼女の素顔はただ明るかった。

裏を返せばやかましいともいえるが。


「両親とはうまくいっているのか?」

「もちろんよ、今まで以上に分かりあえた気がするの……それに」

「それに?」

純花は俺に一生懸命顔を見せてきた。

何かに気づいてほしそうな目で俺を見ていた。

だけど俺は純花の変化も分からないし、空気を読むパラメーターは低い自負があった。


「なんだよ?」

「バカ!なんでわかんないのよ、髪!」

「ああ、髪切ったのか」

「切っていないわ、鈍感ミツノマル!」

やっぱり急にふてくされた純花。

純花の顔はあっという間に怒り顔だ。感受性の高さがそうさせた。

マズいな、怒らせるとまたヘッドロックが来そうだ。


「じゃあなんだよ?悪いけど俺は空気を読むのが苦手だ」

「もういい、せっかくヘアピンを貰ったのに」

「ああ、ヘアピンか」

言われて純花はヘアピンを見せてきた、ピンクの金具に花をあしらったヘアピンだ。

少し古い型のヘアピンで、金具のメッキが取れているように見えた。


「それは?」

「よくぞ聞いてくれました」胸を張った純花。

(強引だな)と心の中で思いつつ「で?」と相槌を打つ。

「これはね、ママ……といっても産みのママよ。

ママがあたしの頃の年齢にしていたヘアピン。あたしにプレゼントしてくれたんだ」

「産みのママって……高校生と大学生でやってお前を産んだ大学生の方だな」

「えと……そうなるわね」

なんだか純花の顔が急に赤くなった。

それと同時に俺も口にしては恥ずかしくなっていた。


「でも親って本当に裏切らないものね、森本さんもあたしのことを覚えてくれていたから」

「ああ、そのようだな」

「ちゃんと聞いている?」

「聞いているよ」

純花の殺気が消えたので、俺は片手間でゲーム画面を見ていた。

そんな純花はなぜか目の前で顔をずっと赤くしていたようだ。


「ねえ、あたしたちも子供欲しくない?」

いきなり大声で言う純花の言葉に、クラスの視線がすぐに俺らの方に注がれていた。

賑やかな休み時間が一瞬にして静まり返った。

まるでそれは俺の言葉を待つかのように。


純花は俺に対して、DSPを閉じた俺もいつのまにか赤い顔になっていた。

困った顔で、一番言葉を待っている純花に俺が言った一言は、

「そういう話は……こんな人前でするなよ」

純花にだけ聞こえる小さな声で諭した。



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