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ジュエル☆クイーン♡スクーリング  作者: 葉月 優奈
四話:不良な戸破とアズライト
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俺の目の前にいたのはアズライト。

セレスタイトと同じだとすると、アズライトは戸破を写す鏡だ。

着替えたアズライトは、美少年に見えるほどのかわいらしさと凛々しさがあった。

だけど白いシャツから膨らむ胸は、女性らしく見えるが。

それにしても戸破の顔立ちと同じなのに、目が曇っていないように見えた。

戸破の素直そうなこの顔は、やっぱり昔の顔だ。


そんなアズライトは、いきなり俺の方に剣先を向けてきた。

いきなりショートソードを抜いて、俺に剣先を見せていた。

剣先は刃こぼれしていて、ところどころがいたんでいた。


「それは?」

「ああ、それはボクの兄さんの形見だよ」

「形見?」

俺は一瞬嫌な予感がした。

戸破に似たアズライトに兄の形見とか言われると、「俺死んだのか」と錯覚してしまう。

もちろん死んではいない、ゲーム内での設定なのだろうが複雑な気分だ。

それとも今回のゲームでは俺が死ぬのか。


「うん、ボクの家は代々騎士団長の家系さ。

常に前線で戦う義務を有している。だからボクたちは強くなければならない」

「強くなるって騎士の家系は大変だな」

「中でも兄ちゃんは最強の騎士だった。ボクの憧れの人なんだよ」

「その兄さんは?」

「かつてセクルガングという蛮族の集落を滅ぼしたのが兄ちゃんだ。

騎士団長として戦い、勝利を収めた。ボクの兄ちゃんはセルクガングの英雄だよ」

「すごいなそりゃ」

セルクガングとは、ジュエル☆プリンセス♡スクールでも出てきた蛮族の集団。

エメラルド王国に敵対して、戦争を仕掛けてくる、言ってしまえば敵だ。

戦争イベントもあったり、蛮族の仲間がスパイでエメラルド王国に侵入したりしてくる。


結構面倒なイベントだった。

なにかといいところでよく邪魔をするセルクガングだけど、まさかこの世界では滅んでいるとは。

ジュエル☆クイーン♡スクーリングは、ジュエル☆プリンセス♡スクールより何年か経過した時代設定だな。

センチネル将軍もそうだったし。


「だけどリッチ山での戦いで……ライチョウ軍の包囲にあって……そのまま連絡が取れない」

「アズライト……ごめん」

設定であっても、アズライトの辛い過去を聞くのは気がひけた。

それにしてもリッチ山は知っているが、『ライチョウ軍』か。

こっちの名前は初耳だ、ジュエル☆プリンセス♡スクールでもその名前はない。


リッチ山は地図を広げてみると、エメラルド王国の北にある気高い山だ。

もちろんジュエル☆プリンセス♡スクールにも出てくる山で、修行とかしたなぁ。

それにも気になるのがライチョウ軍、一体なんだろう。初耳だ。


「当然のことだけど、ボクは兄さんを探しに行きたい。

だけど今のボクにはまだその力が足りない、大ちゃんボクを教育……」

「ちょっと待った!」

遠くから太い声が聞こえた。そのあと、どこからともなくスタスタと足音。

すぐさま、アズライトが険しい顔で剣の柄に手を添えた。


険しい顔のアズライトは、目を鋭くさせて周囲を見回す。

「そこかっ!」

静かに剣を抜いて、右から襲ってくる何者かと刃を交えた。

ガギッと鈍い音が部屋に響く。


「曲者!」

「いや違うぞ、わしは……」アズライトと剣を交えているのは小さな姿だ。

まるで一寸法師のようなその人物は、


「ドワ太か、変な登場するな」

そう、アズライトが剣を交えている相手は小さいヘルパーのドワ太だった。

白い帽子と白いローブ、何より白いひげで、ほぼ真っ白ドワタが、アズライトと剣を交えたのちに後ろに退く。

彫の濃い顔で、じっとアズライトを睨む。だけど真剣な顔をやめて剣の構えを解いた。


アズライトも、敵意がないのを感じるとドワ太相手にしゃがみこんだ。

そのまま、白いドワ太はアズライトとなぜか握手をした。


「ふむ、なかなかよかろう、わしの立ち回り」

「なんでいきなり切りかかるんだ?」

「それはだな、アズライトの強さを確認するためだ。それより大臣」

「お……おう」

ドワ太が俺の方を見て、深々と頭を下げた。


「アズライトの教育を頼まれてくれてありがとう、まずは礼を言う」

「礼というより、戸破が……」

「そうだな、彼女はきっとこの指輪に惹かれたのだろう」

「惹かれた?」

「そうだ、『菅原 戸破』は迷わずこの指輪を選んだ。

指輪が彼女を選んだのかもしれない……それよりいいものを見せてやろう」

そう言いながらドワ太が、取り出したのが一冊の本だ。

その本を開くと、『!』マークが現れた。だけどすぐにマークが変わる、髑髏の(フラッグ)に。


「イベント?……てか死亡フラッグ?やはりそうか」

俺は思わず唇をかみしめた。


「当然、彼女にも運命がある。その運命は、ゲームに参加した時点で変わらない」

「これって、イベントを見なければ……」

「運命は変らない、これは所詮警戒のサインに過ぎない」

ドワ太の言う言葉に、俺はこれを見ない選択肢はないだろう。


「全くヒドイ運命だ、リアル女と同じじゃないか」

そう言いながらも俺は髑髏の旗をタッチしていた。

そしてタッチするときに見つけた、クリスタルゲージのそばにすでに髑髏の旗が揚がっていたのを。



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