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学校帰りに俺が向かったのは駅前の交番だ。
警察に俺自身が厄介になることはない。
両親に変わって向かった俺は、市街地で人が多く目立つ駅交番に来ていた。
駅前の交番には二人組の警察官が待っていた。
「ああ、保護者ですか」
「いえ、保護者代理です。兄の光輝です。
菅原 戸破はここでしょうか?」
丁寧な敬語と低い姿勢で、俺は警察官に話しかけた。
俺がここに来た理由は、母親から受けた電話から。交番に行くように言われた。
交番の入口で事情聴取は、今回で二回目。
一人の警察官に付き添われて出てきたのが、赤いジャージに金髪に染めたソバージュの髪。
目つきが鋭く、厚い化粧された若い不良風の女。
それもそのはず、彼女の名は『菅原 戸破』俺の妹だ。
戸破は俺を見つけるとやっぱり睨んでいた。
「残念ですが彼女は、駅近くのロータリーで暴行を働きました。
八月三十日、深夜に会社員への暴行を働いたということで容疑者として逮捕しました」
「ああ」ちらりと戸破を見て、うつむいた俺。
戸破はけだるそうにそっぽを向いていた。
髪をいじりながら、不機嫌な顔の戸破だ。
「目撃者は近くの通行人がいる。
被害者も酒で酔っ払っていて、あまり記憶がない様子で……唯一分かっていたのが彼女の姿だけです。
でも複数犯の犯行もあって……警察では現在調査しています。
お兄さん、何か心当たり……」
「だからあたい一人やったんだ!」
警察官の言葉を遮るように戸破が喚き叫んだ。
戸破に不満な声も、すぐに隣の警察官に制されたが。
もう一人の警察官に対して、俺は「よくわからないです」と答えるしかなかった。
「……本人はそう言いますが、実際は何人かで暴行したと目撃例があって証言と食い違っています。
現在調査中です、捜査に協力をお願いします」
「本当に……すいません」
俺は頭を下げた、だけど戸破は腕を組んではふてくされた。
「戸破も謝って」
「悪かったよ」
どうやら全く反省している様子はない、頭もほとんど下げないし。
腕ばかり組んで高圧的だ。
「兄としてきつく言っておきますから」
「ええ、よろしくおねがいします。
今日はこれで釈放しますが、今後もし事件を起こすようならば少女院も……」
「すいませんでした、本当にすいませんでした!」
警察官に追及されて、打ち切るように俺は丁寧に何度も謝っていた。
だけど戸破はずっと不機嫌そうに俺のやり取りを見ていた。
警察官は俺の真摯な姿を見ながら、書類を書いていた。
俺は何度も警察官に謝り、戸破の頭も無理矢理下げさせた。
「戸破も謝れ!」
「……なんで頭まで下げるんだ」
「いいから謝れ!」
頭を強引に下げさせて、戸破は不機嫌そのものに変わっていた。
それでも謝るしかなかった、戸破は嫌がりながら俺が頭を下げさせていた。




