表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ジュエル☆クイーン♡スクーリング  作者: 葉月 優奈
三話:白馬の王子様とセレスタイト
30/137

30

俺と純花の二人で岩山の狭いエリア。

山々に沈んだ太陽は、徐々に周りを暗くしていく。

あの一言の後、純花と俺はずっと見ていた。

これほど緊迫した空気が、純花と俺の間に流れたことはない。

純花と俺の間に流れた空気は、夏でもひんやりと冷たかった。


「あたしはあたし?」

「そうだよ。なんでお前は、今まで当り前のことに気づかなかったんだ。

いつも無茶苦茶で、わがままで、でも両親が好きな純花。

俺にいつもプロレス技をかけくる純花。

学校で変り者と言われながらも、常に前を向いてポジティブな純花。

それが養子であろうがなかろうが変わるものか!」

「もう、気持ちはないわ!あたしに対する気持ちが」

「それでも純花の家族は純平荘の一家だよ!

だって、お前のことをあの両親は愛していたんだぞ!」

「……うん」


後ろめたい表情で、純花はじっと何かを考えているようだった。

俺は純花の方に歩み寄った。

すぐ目の前に純花、しかも両手で純花に触れていた。


「近いよ……」

「純花は感情の起伏が激しい。感受性のパラメーター94も納得だ」

「なにそれ、またパラメーター?」

「パラメーターで人間は成り立っている、人に対する絶対評価だ」

「こんな時に、ミツノマルはロマンが足りないわよ」

「そうだな、だけど変わらないものがある。

何度でも言うよ……純花、お前はお前だ!」

俺の二度目の言葉に、前にいた純花の目には涙があふれていた。

大きくはない純花の体が、これほどまでにか弱くさえ感じられた。


「あたしは……光輝……」

「純花……ごめんな」

「なんで謝るのよ、バカ!」

「お前のことをちゃんと見ていなかったんだ」

「だったら……」

だけど俺が純花を抱き寄せようとしたとき、純花の足が滑った。

いや、純花の体が下に引っ張られていくのを感じた。


「えっ」岩場に足を滑らせた純花の体が下がった。

純花の足場がちょうど俺と純花の間んも岩場にひびが入っていた。


「純花っ!」

手から零れ落ちる純花を、俺はかろうじてつかんだ。

だけど純花はなんというか……重い。

右手では確実に下の方に引っ張られた。

だから両手でかろうじて純花の手を握っていた。


「クソッ、俺の腕力じゃ」

「ミツノマル、ダメ!離して!」

「馬鹿なこと言うな、離せるわけ……」

だけど両腕は明らかに痛みがあった。

ここで純花を落としたら、何のために立ち直ったのかわからない。

額から噴き出す汗、腕にかかる痛み、だけど純花の手は離さない。絶対に帰るんだ。


「ミツノマル……離すよ」

純花は手を放そうとしていた。俺の足場も危ないのが見えた。

足場が悪いうえに、二人の体重がかかっているからだ。

突き出す崖から落ちたら……下は暗くて見えない。まさに奈落の底だ。


「あきら……」

だけど次の瞬間、純花は俺の手を離した。

下に落ちる純花は、そのまま落ちていった。

しかし俺もまたピンチだった、足場の崖がビキッと嫌な音を立てていた。


「クソッ!」俺は崩れそうな岩場から横に飛んで離れようとしたが、かすかに足りない。

俺は一瞬にして自然落下を覚悟したが、俺の前の方から手が見てきて俺を引き上げた。

そして反射的に、俺はその手を掴んだ。

指が長いその手は……


「も、森本さん」

そこにいたのは長袖の森本さんが驚いた顔で俺の手を引いていた。

「大丈夫?」と一言声をかけてきた。そこにいた森本さんは安堵の表情を浮かべた。


「純花が、純花が……」

俺は森本さんに助かったと思ったら急に、純花のことを心配していた。

純花は奈落の下、崖から落ちたのだ。

でも、森本さんは落ち着いていた。


「大丈夫、下には白馬の王子様がいるから……いやちがうな。白髪のおじさま……かな」

そんな森本さんは笑顔を見せていた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ