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奈月温泉郷はもちろん温泉が有名だ。
当然のことながら、奈月温泉郷にある純平荘にも専用の露天風呂があった。
この民宿一番の目玉と言ってもいい。
裸になった俺は、タオルもって脱衣所から露天風呂へ歩いていく。
露天風呂でも木造の屋根がついているだけで、外が丸見え。
夜になると空には月や星がきれいに輝いていた。
(天然温泉か……半年ぶりだな)
いろいろ温泉の効能があるらしいが、俺は詳しいことを知らない。
ただ何となく家の風呂とは違うなぁ、という感覚があった。
風呂自体が広いのもあるけど。
沐浴して風呂にザブン。
湯に体をつかると、あっという間にバイトの疲れが吹き飛んでいく。
疲労度が70%まで下がっただろう。
「はあ~、気持ちいい」
自然と声が出てしまった。
そんな時、俺は脱衣所の方から物音がゴソゴソする音が聞こえた。
「お客さんかな?あっ、純花パパかも。さっき裸のつきあいしたいって言っていたから」
俺はそう思いながら、風呂で待つことにしていた。
そんな俺の期待をよそに、浴場に入ってきたのは……
「あ~、今日も疲れた~」
声がした、女の声だ。なにより直感で分かった。
(まさか……純花)
年齢的にもほかに考えられる人物がいない。
そのまま体を洗っているようだ、俺は露天風呂の隅で身構えた。
脳裏によぎったのは純花のプロレス技フルセットだ。
下手したら腕の骨の一本持っていかれるぞ。温泉に入っているのに背筋が凍る思いだ。
(この場合は、どう対処したらいい?)
思慮をめぐらせて、ジュエル☆プリンセス♡スクールで似たようなイベントがあったのを思い出した。
それは湯船の中でひたすら我慢だ。耐えるのが男の仕事。
(潜ろう……今はそれしかない)
覚悟を決めて湯船に潜った。俺は純花が出るまでその場をしのごうとした。
やがて体を洗い終えた純花が、鼻歌まじりで露天風呂の方へ近づいてくる。
何も知らないのか純花は、露天風呂の湯船につかった。
俺の目の前には、健康的な生足から下半身が見えた。
湯船にゆらゆら見えたのは、もちろん純花のだ。
(あ……あや……)純花の体から離れようと呼吸を止めながら静かに移動しようとした。
だけど息が続かない、純花が出るまで持つのか。すでに息が苦しいぞ。
とにかく隅に少しずつ移動だ。
俺は体を腹ばいにしながら、息を我慢してじっくり離れていく。
そのまま純花は風呂に入ろうとしたが……なかなか入らない。
(早く入ってくれ……)
心の中でそう思いながら離れていくが、純花はゆっくり足を湯船につけて入って来た。
何かを見回している様子で、
「ミツノマル、いるんでしょ……」
いきなり純花が湯船に向かって叫んできた。
その声は、潜水していても俺の耳にはっきりと聞こえた。
「あやっ!」
俺はそのまま思わず立ち上がってしまった。
呼吸も苦しかったので激しく呼吸をする俺。
だけど、立ち上がった見るなり、純花はいきなり顔を真っ赤にした。
「きゃーっ!何で出てくるのよ、隠しなさいよ!」
そのまま純花は顔を真っ赤にして近くの桶を手に取って俺に投げつけた。
「えっ?」
俺は失敗をしていた、だけどその瞬間にすでに取り返しなつかなかった。
俺は純花の前で隠すものを隠していなかったのだから。




