第1話 琴音さんはブラコンでした。
一ノ瀬 琴音。それがわたしの名前だ。
「琴音、おはよう!」
教室で席についてぼんやりと外を眺めていると、自分の名前が呼ばれた。
「陽菜おはよう」
振り返ってみればそこには陽菜がいた。遠藤 陽菜、私の後ろの席の女の子。髪はショートカットで制服姿だった。学校なのだし当たり前なのだが。
「陽菜、琴音、おはよっ!」
急に挨拶してきたのはクラスメートの沢口 司、陽菜の片思いの相手らしいがあれはどうみても両片思いにしか見えない。
「沢口くん、おはよう」
わたしはいつも通りに挨拶をするが、陽菜はふいっと横を向いた。
「陽菜?」
司は驚いたように陽菜を見つめている。
無自覚バカップルは心臓に悪い。
「あちゃー」
突然ドアが音を立てて開いたのでそちらを見れば予想通り遥がいた。
「遥!遅いよ!もう遅刻ギリギリだってば!」
「だってしょうがないじゃん、琴音のお兄ちゃんに捕まったんだよ!」
琴音の兄、真は風紀委員長だ。朝は校門で制服の指導、と言う名のチェックのためなかなか一緒に居られない。
「何それ羨ましい!(もう、ダメじゃない)」
「琴音、心の声ダダ漏れだよ」
「おっと!」
「琴音はほんと、お兄ちゃん大好きだ「そうだけど何か?」
ようやくこのとき、陽菜は遥が、いることに気がついた。
「遥、おはよう」
「陽菜!おはよう」
「何、逃げ回ってんの?」陽菜をからかう遥と。
「…!」
かぁっと顔を真っ赤にする陽菜。
「無自覚か…」
「無自覚だなぁ…」
ほのぼのするなぁと和んでいればチャイム
も鳴り先生が朝のHRを終えた。