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嵐の喫茶店L-U

ずぅっと前に作るだけ作って放置しておいた小説です。

後半、「名無しの物語」の登場人物が出てきます。


「喫茶店に決定しました!」

どっと沸き上がる女子と一部の男子。

「さっすが南〜わかってるなぁ〜」

何ていいながら背中を叩く。

バシバシ。

バシバシバシ

いてて…。手加減ないのな…。

ゴス!

「っ!はぁ!」

―なんだ!? 今のはグーだったぞ!?

一気に肺から空気が抜けて、むせこむ。

「さっすが南〜女子の味方だなぁ―」

叩いたのは相川 樹。

「やかまし」

ごすっと音がして崩れ落ちる樹。

とたんに

「うぉぉぉぉ!」

と歓声が上がる。

「見たか今の!?」

「見た見た!すげぇアッパーだった」

「ばっかフックだろ?」

「いや、フリッカーだった」

いきなり雰囲気が変わった…気がした。




そうこうして文化祭が始まった。

俺たちの出店は

「喫茶店L-U」

学校公認の食い逃げ店で、逃げ切ればただ。

しかし逃げるまでに俺たちに捕まったら二倍払うという店だ。

武器の使用は禁止。

取り押さえればこちらの勝ち。

そして、支払いにきた人数=立ち寄った人数とカウントされ、来客が一番多かったクラスは自分のクラスの売り上げをそのままもらうことができる。

そのためみんな必死だ。

手にバンテージを巻き、人によっては肘とかにテーピングを巻いたりしている。



開店時間は10時。

俺たちは控え室で客の様子を確認する。

「去年はレスラーみたいな奴が一人で全員のして行っちまったんだよな」

しみじみと語る。

「あぁ、あったあった!その後がら空きになった隙にたくさん食ったなぁ」

どこか遠い目をして呟く生徒。

モクモクモク…女子が落として型崩れしたイチゴショートを咀嚼する。

「ところでさぁ、なんでL-Uなんだ?」


―ウム、型は崩れても味はいいな

サク、サクサクサク…

クッキー生地のケーキをかじる。

「あー、それな、何でもロング・アッパーて意味らしいぞ」

頭をぽりぽり掻きながら答える。

「誰だ?そんな物騒な名前にしたのは…?」

「あいつ」

と今だに違う世界に旅立っている人物を指差した。

「…やりかねないな」

コクコク…差し入れのレモンティーで喉を潤す。

―ウム、なかなか美味かった。

「だろ?…?」

名付け親らしい相川は、今だに頭の上でお星さまが飛んでいる模様。

―あちゃあ、ちょっと強くやりすぎたか…

少し後悔。



十時になり、開店と同時に客がちらほらと。

のんびりと食べているのみで食い逃げしようという気配は皆無。



特に何事もなく午前は終了。



午後三時…

「…来た。」

一瞬で控え室に緊張が走る。

来店したのは二人組の男。

年は高校生ぐらいだろうか?

片っ端からケーキを頼んでいる。

「すっげぇな…」

誰かがつぶやく。

それもそのはず、一つ食べたら一つ頼んでを繰り返し、回転寿司のように食べている。

「あ…俺、あの人パス…」

と、急に一人の男子が顔色を変えた。

「あ…俺も…」

また一人。

「ん?どうした?なんかあるのか?」

いぶかしげに野村が客をチェックする。

「…………スマン、俺もパスだ」

さぁっと顔色が青くなる野村。

――?いったいなんだって言うんだ?

一部の人間を除いて皆その男二人組みに関わりたがらないようだ。



そのころ当の本人たちは……

「…よく食うなお前も…」

片方の男は二皿目のモンブランを突付きながら目の前の男の旺盛な食欲にため息をついた。

「おう。何せタダだからな」

「何もまだ決まったわけじゃないだろうに。つかまったら倍額支払うんだぞ」

頬張りながら「大丈夫だって」とジェスチャーをしている。

「ほえほりふぉふぃふぃのふぁ?くふぁなくふぇ?」

「飲み込んでから喋れ飲み込んでから」

口いっぱいに頬張ったケーキを紅茶で一気に押し込める。

「それよりもいいのか?食わなくて」

「あぁ・・・さすがにお前の食いっぷり見てたら胸焼けがしてきたよ…」

このときの二人の戦績。

合計30皿

内訳…28対2

「食いすぎ…」

「そうか?」

ことも無げに次のケーキを注文している。

「まだ食うのか」

「いや、これはお土産だな」

「ほう?」

「今日野乃香ちゃん来れなかっただろ?だから持っていってやれ」

「悪いな」

「いいっていいって」と手を動かしながら紅茶を啜る。

しばらくして、ウェイターが箱に入ったケーキを持ってきた。

「ホレ、持ってけ」

そういって押し付けながら席を立った。





そのころの控え室…

「お!立ったぞ!」

「おぉ!?今行くか!?」

「バカ、まだ食い逃げして無いだろ!教室を出たらだよ」

「マジで行くのかお前ら…」

「おうよ!!あんなひょろそうなのの一人や二人!!」

いつの間にか復活した相川がガッツポーズをして答えた。

…うわぁ、頼もしい。

『ありがとうございましたー!』

えらくきれいにハモった声に驚くとウェイターとウェイトレスが一列に並んで彼らを見送っている。

「Vipですか?」

一瞬ぼぉっとその光景を見てしまった。

「鴨だぁーーーーーカモネギだーーーーーーー!!」

脱兎の如く飛び出して行く相川。

神速で二人の前に行き行方をふさぐ。

「カモネギィィィィィィッィ!!!ゲットダゼェェェェェェェ!!!!」


「んー?」

出口から出ようとした二人のうち一人が胸ポケットから何かを取り出しながら相川の顔を見た。

「ふむ…『相川 樹…一年生』か…」

ピタ…

相川の動きが止まった。

胸から出したのは黒い手帳。

「出席番号一番…なるほど…家族は母親と父親と妹の四人暮らし」

ピク…止まっていた相川の肩が震える。

「趣味は…???が???で????をすることか…」

「わぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」

突然奇声を上げる相川。

「な・・・・・なんでそれを…」

「さぁ?何でだろうね?もうちょっとお話しようか…」

そう言って相川を柱の影に連れて行った。






数分後…

「燃えたよ…燃えつきたぁ…まっしろだぁ…」

どこかのボクサーの用に灰になって帰ってきました。

「おい、こいつのところだけ何で背景白いんだ」

「背景どころか全部白いぞ」

ぐったりと控室の椅子にもたれかかり、力無くうなだれている。

その姿を見て、誰かが「立て!立つんだぁぁぁぁぁ!!」と絶叫している。


「まぁ、あの人に挑んだんだから当然といえば当然だよね」

即座に飛び出すのをためらった生徒の一人がしみじみという。

「誰だったんだ今の?」

「知らないのか?今の人は葉山−」

途端「うぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!いうなぁぁぁ!!助けてぇぇぇぇぇ!!」と真っ白な背景から悲鳴が聞こえるが、無視した。

「葉山・巧っていってまぁ、人の弱みとかいろいろ握ってる人」

「一瞬金髪でピアスして銃火器乱射している『ファッキン』が口癖の人を思い出してしまいましたが?」

「ん。たぶんその人であってる。実際ポケットに手帳忍ばせてるしね」

チラッと相川の方をみる。

いまだに頭を抱えて激しくのたうち回ってる様子を見るとかなりとんでもないような内容の秘密がばれていたんだろう。

南無。

「だから大抵はみんなすぐに逆らうことができなくなるってワケ」

「なるほどねぇ」

「ゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイ」

−ほんとにこいつはどんな秘密をばらされたんだ・・・


そんなこんなで、相川が再起不能のまま文化祭は終わりを迎えた。

そして、運命の集計。





「今回の売り上げは…」

ゴクリと誰かがつばを飲んだ。

「ひぃ、ふぅ、みぃ…」

「今から数えるんかい!」

「あははは、冗談冗談実際は56万とんで25円」

「エラく飛んでるなおい」

結局どうなんだろう。売り上げは一位だったんだろうか?

「結果はすぐにはわからないみたいだね、全クラス出し物が違うわけだし、そこら辺考慮して後日教えてくれるみたいだよ」

みんな緊張していたのだろうか、その一言で幾分か空気が和らいだ気がする。

「結局一位をとったとして、このお金はどうやって使うんだ?」

まぁ、このぐらいは当然の質問だと思う。

『それは当然』

クラスが全員ハモった。

『口止め料だ』

先生までが声をそろえている。

「…まじっすか」

なんか、どっと、疲れた。

もう、かえって寝るとしよう。


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