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愛してる、俺と一緒に死んでくれ――前世で私を殺した夫がなぜかぐいぐい迫ってきます  作者: マチバリ


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(城を出る条件?)

 どういうことだろうと首をひねっていると、扉がノックされワゴンを押したメリーが入ってきた。

「お茶をどうぞ」

「ありがとうございます!」

 とても香りのよい紅茶が運ばれてきた。

 添えられているお菓子も、母国では見たことのないきれいな細工菓子で思わず見蕩れてしまう。

 どうやって作っているのか立体的な花の形をしている。

 口に含むとほろりとほどけて甘さもしつこくなくてとても美味しい。

「もっと早くにネロ様がお知らせしてくれば、もっとよいお菓子を用意できたんですが……」

「とんでもない! このお菓子、とっても素敵ですし美味しいです!」

「それはようございました。この近くに新しくできた店の品で、最近とても評判なんです」

「すごいですね!」

 これは確か人気になるだろうと感心していると、ネロが身を乗り出してきた。

「気に入ったのかい? なら毎日これを取り寄せよう。いっそ店ごと買い取ろうか? 職人を専属で雇えばいいし」

「駄目ですよ」

「どうして?」

「そんなことをしたら他の人が買えなくなります。私はそんなことは望んでいません」

「……わかった。君がそう望むなら」

 さらりととんでもないことを口にするネロを諫めていると、メリーがなぜか両手で口元を覆って再び瞳を潤ませた。

「あのネロ様が……!」

 感動しているらしいメリーだけではなく、執事や他の使用人たちも同じような反応だ。

「あ、あの……?」

「ああ、すみません……こんな素敵なお嬢様をネロ様がお連れになったのか嬉しくて」

「そうだろう? ビアンカはとても素晴らしい女性なんだよ」

「やめてください」

 肩を抱いてこようとするネロをやんわり押しのける。

「ネロ様はこれまでどんな女性にも興味を示さず、お年頃になられても婚約者の一人も作らず……メリーは、ネロ様のお子を抱けないまま生涯を終えるのかと思っておりました」

「ええと……」

「それが隣国でこんな可愛らしい素敵なお嬢様を見つけてくるなんて……! ビアンカ様、どうぞネロ様をよろしくお願いしますね!」

 困惑しているとネロが耳打ちしてきた。

「メリーは俺の乳母でもあるんだ。俺が結婚する気がないのをずっと気にしていてね」

「そうなんですか?」

「俺は君以外を妻にする気はなくてね。君に出会わなければ、生涯独り身だったさ」

「……!」

 驚いてネロを見れば、悪戯っぽい笑みがこちらに向けられた。

(なるほど……)

 なぜこんなに歓迎ムードなのかは理解できた。

 女性に興味を持つ気配のなかったネロがようやく女性を連れてきたことが、彼らは本当に嬉しいのだろう。

(でも複雑)

 ネロが女性に興味を持たなかったのは前世の記憶があったから。つまりビアンカのせいなのだ。

 それなのにこんなに喜ばれているのは、居心地が悪い。

「ネロ様、ビアンカ様のお支度はどうしますか? お荷物は運びましたが、お茶会や社交などに着ていくこの国の衣装などは……」

「仕立てなくていい」

「は?」

「ビアンカはこの屋敷からは出ない。そういったものは必要ない」

 部屋の中がしんと静まりかえる。

「ネロ様? 今、なんと」

「言ったとおりだ。ビアンカは外に出さない。部屋からもだ。他の男に見せるための服など仕立てなくていい」

 冷たい口調で言い捨てるネロの姿に、前世の冷たい夫が重なった。

 アルルを人とは思わず冷徹に命令する姿に心が冷えていくのがわかる。

(やっぱり前世と同じなのね)

 守るだといっていたくせに、やはり同じように扱われるだけではないか。

 復讐ではないと言っていたのに。

「彼女の部屋には外から鍵をつけるように。窓もだ。扉の外には必ずメイドを待機させておくように。食事は俺が運ぼう」

 淡々とした口調でつらつらと語ったネロはそこで言葉を途切れさせるとビアンカを見つめ、にこりときれいな顔で微笑んだ。

「一緒に食べようね、ビアンカ」

(なんなの)

 テリウスのような顔をして喋っていたかと思えば、紳士的な王子様の顔をして。

 ネロという人間がわからずビアンカはひどく混乱する。

「何をおっしゃるんですか!!」

 メリーの声が室内に響いた。

「せっかく我が国にいらっしゃってくださったビアンカ様を閉じ込めるなんて! 失礼にもほどがあります!」

 完璧な正論にビアンカは我に返りこくこくと頷く。

 うっかり前世の記憶に引きずられて同意しかけたが、どう考えてもおかしい。

「彼女を守るためだ」

 ネロはメリーの言葉をしれっと交わそうとするが、メリーはますます目を釣り上げる。

「皆!」

 言うが早いかメリーの指示でメイドたちが動いてビアンカを守るように取り囲む。

「ネロ様。安全のためにしばらく外出を控えられるというのであれば理解しますが、お部屋に閉じ込めるなどこのメリーが許しません!」

「メリーさん……!」

 頼もしい言葉に感動していると、ネロはむっとした顔をしつつも「わかったよ」と渋々返事をした。

「その代わり、彼女から決して離れないように」

「承知しました」

(よ、よかった……!)

 どうやら監禁生活は回避できたらしい。

(でもなんだか不思議。前世のあの人とは全然違う)

 ネロの前世であるテリウスはこのような表情をする人でもなかったし、他人から叱られるような姿を見たこともなかった。

 ビアンカは自分が前世であるアルルと違うように、ネロもまたテリウスとは違う部分をもつ別の人間あるのだろう。

 出会ってからが怒涛過ぎて冷静に考える暇がなかったが、ネロがネロとして育った場所にきたことでそれをしみじみと感じていた。


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