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47 学生の本分は大変

(寝不足ではないと思うけど……)


 急に眠ってしまう現象が起き始めたのはチーム戦の後のこと。最初の頃は本当に一瞬ボーっとしてしまう程度のことだったが、この前は講義中に意識が遠くなり、そのまま三時間ほど眠ってしまったことがあった。

 その時は先生から叱られるのではなく、むしろ身体の心配をされ、保健室で休むよう勧められたくらいだった。


(保健の先生からは健康体だって言われたけど……)


 学園の保健の先生は現代医学に明るい。ただ魔法による異常はわからない、非魔法師だ。


(やっぱり可能性としては魔法による何らかの原因)


 魔法による異常は魔法師が解決しなければならない。


 予測はできるがあまりにも抽象的だ。そもそも普段身体に異常を感じない。本当に時々気を失ってしまうというだけだった。


 しかもSランクとAランクの魔法師が揃っているアイリスのチームメンバーからも特に何も魔法による異常は感じられないらしい。その為正直なところお手上げで、自分のことなのに怪奇現象扱いだ。


「分からないことをずっと考えていてもしょうがないよね……周りに迷惑をかけないようにしながら原因を調べて普通に生活するしかない。そもそも任務もまだなんだから。頑張れ私!」


 アイリスは自分を鼓舞してドアを開ける。今は出来ることをやるしかない。そう考えて前に進むしかないのだった。



「アイリスちゃんおはよう!」

「おはようございます、エレナさん!」


 教室に入るとすぐアイリスに気がついたのか明るい笑顔で駆け寄ってくる友人、エレナ。

 アイリスにとってこのクラスで一番仲がいいと言っても過言ではなかった。同性ということもあるが、何より初めてたくさんの人に囲まれる生活を始める中で友好的に接してくれる彼女の存在は、アイリスにとって救いなのだった。


「それでどう? 具合は」

「はい……大丈夫だと思うのですが……」

「その様子じゃあまりよくなってはいないみたいね」

「…………」


 エレナに沈黙で返答をする。今朝フリードの前で倒れてしまったことがあった為、よくなっているとは断言できないのだった。


「苦しいとか痛いとかはない?」

「はい、それは全然……早めに寝るようにもしていますし……」

「そう……困るわね……もうすぐ中間テストもあるっていうのにね」

「……………………? 中間テスト?」

「そうよ。嫌になっちゃうわよね! 罰則がある上にチームの予算も関わるし」

「中間テストってなんですか?」


 アイリスにとっては初めての学園生活。中間テストのことなんて知らないのだ。


「中間テストっていうのは「ホームルームを始めますよ」あ、先生来ちゃったわね」


 ランスロットが教室に入ってきたので各々席に座るのだった。

 いつも通りホームルームが進むと思ったが、今日は違っていた。


「皆さん、もうすぐ中間テストです」


 険しい顔をするランスロット。先ほどエレナと話した話題だったこともあり、アイリスは熱心に話を聞く。

 

 どうやら学期の中間に行われる学力及び魔法実技両方のテストのことで、成績次第では罰則やチーム予算の中の補助金に関わる。

 チームの予算とはチームに割り当てられる活動資金……つまりは生活費のことである。

 この学園の寮生徒は保護者の援助なく生活することを義務付けられている。その為生活費も自分たちで請け負った仕事の報酬や、少額だが学園から支給される補助金から捻出することになっている。


「頑張らなきゃ……」


 ランスロットの話を聞きながらきっと寮に帰ったら鬼の形相をしているチームの母をアイリスは思い出すのだった。

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