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29 緊張するとすべての感覚が消えます

 編入初日ということで、クラスへ行く前に職員室へ連れて行ってもらい、その場で別れたアイリス。


「おはようございます。アイリスさん」

「ランスロット先生、おはようございます」


 職員室で待っていたのはアイリスを学園に誘ったランスロットだった。


「緊張しないで大丈夫ですよ? それと僕は君の担任になりましたので改めてよろしくお願いしますね」


 初日と言うこともあり緊張していたが、ランスロットの穏やかな雰囲気に安堵し、笑顔で「よろしくお願いします」と返事をすることとなった。



 教室へ向かっている間、ランスロットはアイリスに学園の説明をしていた。


「この学園には一定以上の魔力保持者、つまり魔法発現者が在籍しています。アイリスさんは『属性』についてご存知ですか?」

「はい。多くの人が無属性。そして四大元素の火、水、風、土。そして高位属性魔法の光と闇があるんですよね」

「その通りです。その四大元素と光、闇以外の属性の魔法は無属性と判別されております。一方四大元素と光、闇の属性を使える魔法師はかなり希少です。しかしこの学園では四大元素魔法や光、闇属性の魔法をも使える生徒たちもいますよ」

「それはすごいですね」


 属性については生まれながらに持っている魔力により扱える属性が決まっており、無属性の魔法師が多いとされている。そして四大元素や高位属性を扱える魔法師は魔法能力に長けている人が多いと言われている。


「無属性の子たちも素晴らしい能力を持っており、とても個性的で強力な魔法を使います。四大元素や光、闇以上に強力な魔法を持っている生徒も多くいますよ。そしてこの学園では一般的な座学の他にも各々の魔法能力をスキルをアップさせることや、簡単な基礎魔法の取得に励んでもらいます」

「なるほど……」


 ちょうど教室の前に着いたようだ。ランスロットは教室のドアに手をかける。

 

「では、呼ぶまでこちらで待っていてくださいね」


 ランスロットは一人クラスに入っていき、呼ばれるまでアイリスはドアの前に立っていた。


(顔に出していなかったよね……大丈夫だったよね)


 アイリスは自分の少し固まってしまった頬を触る。


(起きたら私を殺す人が目の前にいて、同じ学園で同じ寮だなんて)


 朝起きて目の前にフリードがいたからだ。もう会わないと思っていたが、同じチームメイトでもあり、これから一緒に生活することに何か因果のようなものを感じてしまい、アイリスはひどく困惑していた。それでも不自然な態度をとらないように考えないようにしていたのだ。


(私は本当にあの人に殺されるの……?)


 アイリスは剣で貫かれるであろう胸に手を当てる。


(これが私の運命なのかな……でも夢の中の人は私が罪を犯したって言ってた。なら罪を犯さなければ殺されずに済む……?)


 悪いことをしなければそれを理由に殺されることはないとアイリスは考える。


(こうなったからには仕方ないよね! なるべく行動には気を付けよう。それにフリードにはあまり関わらないようにしよう)


 アイリスが決意する中、ランスロットの「入ってきてください」という声が聞こえ、慌てて教室に一歩踏み出す。

 両足をガクガクさせたまま、まるで生まれたての小鹿のように足を動かす。そして顔は真っ青だ。


(人が……人がたくさん……こっち見てる…………!)


 その場から立ち去りたいと強く思いながらも何とかランスロットの隣に立つ。今まで人と会わない生活をしていたのだ。こんなに一斉に視線を浴びることなどまずない。

 そしてクラスメイトになる人たちからは好奇な視線を浴びせられる。


「あの子めっちゃ顔青いぞ……大丈夫か??」

「両手両足が一緒に動いてる……」


 クラスメイトから様々な声が聞こえたが、アイリス自身緊張のせいで周りの話し声の『音』は認識できたが、何を話しているのか言葉の中身までは認識することができなかった。

 

「では自己紹介をお願いします」


 ランスロットの声で我に返り、なんとか喉から言葉をひねり出す。


「アイリス・セレスティアです……!今日からよろしくお願いします……!!」


 カールに騙されたスリーサイズは言わずに勢いよく頭をさげるとクラスの人たちは拍手する。

 どうやらとても明るく、和やかなクラスのようでアイリスは少し胸を撫でおろす。

 ランスロットが手をパンパンと叩くとクラスの空気が変わる。


「早速ですけどアイリスさんはどんな魔法を使うのですか?」

「魔法は…………無属性で魔法強化が得意です。具体的には魔法や魔力そのものを強化します」


 魔法強化の属性は無属性で初歩中の初歩の魔法とされており、特に珍しく魔法でもない。

 

「なるほど」

「戦闘時は体内にある魔力を強化して身体能力を向上させて接近戦等を行います。回復魔法も少々……」


 回復魔法を口にするとクラスメイトが驚いたようにアイリスを見る。突然ざわついた様子にアイリスは困惑し、ランスロットが補足を入れる。


「回復魔法は四大元素や高位魔法と同じように発動できる人が限られているんですよ」


 同じ話を魔法の師であるカールからされたことを思い出す。回復魔法は無属性だが希少な存在とされているらしい。


「それではアイリスさんの席は…………」


 ランスロットが周りを見渡す。


「エレナさん。お隣でもよろしいですか?」

「勿論です」


 返事をして立ち上がる女の子がどうやらエレナという名前らしい。


「それでは席はエレナさんの隣にしましょう。ではアイリスさん、席へ」

「はっ、はい!」

「っとその前に!!」

「?」


 いきなりランスロットから声がかけられ、驚きながらアイリスは止まる。


「ごめんね、アイリスさん。ランク分けまだでしたね」

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